「この場で空中浮遊してみせろ!」 田原総一朗は麻原彰晃に迫った

    「麻原は『最後の神通力』で自分自身を壊したんだと思う」

    オウム真理教の元代表、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚ら7人に死刑が執行された。

    BuzzFeed Newsは、討論番組「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)などで麻原死刑囚と対峙した経験を持つ、ジャーナリストの田原総一朗さんに話を聞いた。

    「神通力で遺体の場所を言え」

    ――麻原死刑囚をはじめとする7人に死刑が執行されました。

    地下鉄サリン事件の真相を究明しないといけないと思っていたが、何も語られないまま執行されてしまった。

    ――麻原死刑囚の人物像は。

    非常にまじめな男だね。

    麻原とは2回会って、最初は雑誌の取材で道場に行った。道場に空中浮遊している写真が飾ってあったから、「この場でやってみせろ」と言ったんだけど、「こんな場所じゃできない」と言う。

    「そんなの屁理屈だろう。やれるならやってみせろ! やれないなら、やれないで謝罪しろ」と言ったよ。

    「ほかに何ができるんだ?」と聞くと、麻原は「神通力がある」と答えた。

    坂本堤弁護士一家殺害事件(1989年11月)で、当時オウムがやったという確たる証拠はなかった。

    だから「神通力でご遺体がどこにあるかわかるはずだ、言ってみろ。それもできないならインチキだ!」と迫ったんだ。麻原は困りきっていたね。

    朝生での激論、西部邁さんの言葉

    ――2回目に会ったのは。

    1991年9月に「朝まで生テレビ!」で、オウムと幸福の科学を対決させた。オウムからは麻原、幸福の科学からは大川隆法は出てこなかったけど、幹部が出てきて。

    その時、僕は麻原と大論争したの。

    オウムでは「ポア」といって、「悪い人間は殺してやれば成仏できるから、殺すことは悪じゃない」と教えている。それはおかしいだろう、と。

    麻原が怒って帰ろうとしたから、「戦線離脱して、逃亡するのか!」と言ったら席に戻って、そこから論争になった。

    この間、亡くなった西部邁さんも出演してたんだけど、「幸福の科学に比べるとオウムの方が真剣だ。だから怖いね」と言っていた。

    大きかった仮谷さん事件

    ――地下鉄サリン事件の原因をどのように考えていますか。

    朝生の後、1995年3月に地下鉄サリン事件が起きた。

    きょう死刑になった井上嘉浩や、元幹部の上祐史浩に取材した時に言っていたのは、(目黒公証役場事務長だった)仮谷清志さん拉致監禁致死事件(1995年2月)が大きかったと。

    弁護士一家殺害事件や松本サリン事件(1994年6月)では、警察は動かなかった。でも仮谷さんの事件では、オウムとしては「失敗」して、警察の捜査が迫りつつあった。

    阪神大震災(1995年1月)の時の混乱も踏まえ、「大きなパニックを起こせば、警察の強制捜査から逃れられるのではないか」と考えたわけだ。

    そんな馬鹿馬鹿しい理由で地下鉄サリン事件を起こしたんだよ。

    「最後の神通力」

    ――麻原死刑囚は精神に異常をきたし、昏迷状態にあったとも伝えられています。

    麻原は取り調べで真相を語らなかった。捕まった後、「最後の神通力」で自分自身を壊したんだと思う。

    BuzzFeed JapanNews