妹のキスシーンを直視できない兄に「毎回キレてます」 女優が語る家族のカタチ

    母親を亡くした父子家庭の10年間を描いた映画『ステップ』(山田孝之主演、飯塚健監督)。保育士役で出演し、自身も母子家庭で育ったという伊藤沙莉が、家族の絆について語った。

    「設計図なんてものは何度でも描き直せばいいんだよ。家族だってリフォームすればいい」

    母親を亡くした父子家庭の10年間の軌跡を描いた映画『ステップ』(7月17日公開)のセリフだ。

    家族の数だけ、家族の形がある。保育士役で同作に出演し、自身も母子家庭で育ったという伊藤沙莉が「一生の宝」だという家族について語った。

    「ぶりっこ」だった少女時代

    ――伊藤さん演じる保育士のケロ先生は、再生へと踏み出す父娘を優しく見守る役どころです。

    保育士さんは優しさと厳しさの間で、子どもたちの成長を間近で見ている方々。とにかく愛にあふれた人間として、そこにいられたらいいなと。そういう理想を持ってやりました。

    ――伊藤さん自身はどんな子どもでしたか?

    ぶりっこでしたよ。今じゃ考えられないぐらい。写真撮る時、全部これ(両手で頬杖をつくポーズ)。

    ちっちゃい頃のほうが、目立ちたがり屋だったかもしれないですね。承認欲求がエグかった(笑) この仕事に収まったのは、それもあるのかなって。

    とにかく「認められたい」とか。お母さんの愛を「もっとください、もっとください」っていう、子どもだったと思います。

    母とおばが育ててくれた

    ――子どもながらに寂しさを抱えていたのでしょうか。

    もともとの性格もありますし、ウチは母子家庭だったので。お父さんは、気づいた時にはいなくて。母とおばが一緒に、私たち3きょうだいを育ててくれたんです。

    母もおばも朝から晩まで働いていたし、私も鍵っ子だったりして。だから、一緒にいる時間はすごく大事でしたし、それは多分、今でも変わらないですね。

    なるべく長い時間、一緒にいたいなって思ってます。

    ――映画はシングルファーザーの物語ですが、重なる部分もあった?

    そうですね。すごく思い出すっていうか、振り返るきっかけにはなりましたね。

    家族には何でも話す

    ――過去のインタビューでは、精神的に追い込まれると「すぐ実家に帰っちゃう」と発言されていましたが。

    そうですね。1日にあったことを全部、家族に話すっていう。それこそ幼稚園ぐらいから、ずっとそうやって生活してきちゃったので。

    「なんで私、わざわざ怒られるようなこと言ってんだろう」みたいな時もありますね。いいことがあったら共有したいし、自分がダメなことしちゃって反省してる時も、家族にめちゃくちゃ怒られることで、リセットできる。

    そういう家族との時間が、私が私でいるためには必要なんです。

    ――仕事のことでも恋愛のことでも、何でもしゃべっちゃうんですか。

    何でもしゃべります。

    基本的に母とおばが2人で聞いてくれて。あとは結婚した姉がちょくちょく実家に帰って来るので一緒に。家族でご飯を食べてる時とかに、わーってしゃべる感じですかね。

    兄はお笑い芸人

    ――あれ、兄でお笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介さんは?

    お兄ちゃんは、ぼーっとした人なんで。でも彼の感性はすごく好きなんです。妹が言うのはキモいかもしれないですけど。

    だからお芝居、お仕事に関しては結構、聞いたりします。自分が出ている作品の感想は、一番聞きたい人ではありますね。

    ――妹のキスシーンが無理で、チャンネルを変えてしまったこともあるとか。

    そう。そこも毎回キレてますけどね。「作品として見れないんだったら、もういいよ!」って言ってます(笑)

    ――ともあれ、伊藤さんにとって家族はとても大切な存在なんですね。

    もう本当に一生の宝ですね。『ステップ』には、家族の絆に対するヒントが本当にたくさん入ってます。

    家族だからって、みんながみんな、すごくうまくいっているとは限らない。いろんな家庭がある中で、様々なヒントをくれる作品だと思います。

    〈伊藤沙莉〉 1994年5月4日生まれ、千葉県出身。2003年に『14ヶ月~妻が子供に還っていく~』で俳優デビュー。映画『全員、片想い』『獣道』、ドラマ『ひよっこ』『獣になれない私たち』『これは経費で落ちません!』などに出演。『榎田貿易堂』『寝ても覚めても』などでTAMA映画賞 最優秀新進女優賞受賞、ヨコハマ映画祭 助演女優賞を受賞。アニメ『映像研には手を出すな!』での声の演技も注目を集めている。