椎名林檎とエレカシ宮本浩次が相見えた「奇跡の夜」

    椎名のライブに宮本がサプライズ参戦

    デビュー20周年を迎えた椎名林檎のアリーナツアー「椎名林檎 (生)林檎博'18 -不惑の余裕-」。11月24、25日のさいたまスーパーアリーナ公演では、エレファントカシマシの宮本浩次がサプライズで登場し、聴衆を沸かせた。

    太田好治

    椎名林檎

    不惑の余裕

    筆者が見たのは24日の公演。アンコール含め29曲、新旧の楽曲を織り交ぜた集大成的な内容で、ツアータイトル通りの堂々たる「余裕」と貫禄を感じさせた。

    RHYMESTERのMummy-Dをゲストに迎えた「本能」や、2016年のリオパラリンピック閉会式で話題をさらった浮雲による「東京は夜の七時」など、客演も多数。

    なかでも観客を驚かせたのが、新曲「獣ゆく細道」で共演する宮本の登場だった。

    太田好治

    椎名林檎とMummy-D

    太田好治

    浮雲が客演した「東京は夜の七時」

    Mステの奇跡再び

    「この世は無情♪」

    宮本の歌声が響くや、ざわつく客席。「ミヤジ!」「宮本さん…!」――。歓声とため息が入り混じる。

    11月9日の「ミュージックステーション」での2人のコラボレーションは、大反響を巻き起こした。YouTubeでのMVの再生回数も、すでに760万回を超えている。

    「アレ」を生で目撃できるのだ。いやがうえにも血が騒ぐ。

    今日のMステの「獣ゆく細道」の椎名林檎とミヤジ

    今日の椎名林檎さんと宮本浩次さんの記憶

    Mステつけたら、一瞬理解出来ない構図でした。 #椎名林檎 #宮本浩次

    獣と猛獣使い

    髪をわしゃわしゃとかきむしり、獣のように暴れまわる宮本と、猛獣使いがごとく泰然自若の椎名。動と静の激しいコントラストにめまいがする。

    「おかしみ」と「恰好良さ」は両立し得ないものだとばかり思っていたが、確かに両者が同居している。ニヤニヤしながら鳥肌が立つというのは、初めての体験かもしれない。

    太田好治

    「獣ゆく細道」を歌う椎名林檎と宮本浩次

    曲の最後に、背中合わせでポーズをとる2人。口を尖らせピースサインを繰り出す宮本に、椎名は笑いをこらえきれないといった風情で顔をほころばせている。

    絶えずファンの予想を裏切り、翻弄し、惑わせてきた椎名が、宮本に振り回されて、少しばかり困った表情をしている。なかなか貴重なシーンだ。

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    椎名林檎 / Via youtu.be

    椎名林檎と宮本浩次-獣ゆく細道

    「張り切りすぎてスミマセン」

    その後、本編ラストの「ジユーダム」を挟み、アンコールの1曲目に再び、宮本が姿を現した。

    「20周年おめでとうございます」とあいさつする宮本に、椎名がすかさず「30周年おめでとうございます」と返す。

    「今日は張り切りすぎちゃってスミマセン」という言葉通り、宮本は2日前の同会場の公演をいち観客として鑑賞し、気持ちを高めてきたという。

    侍から武士へ

    太田好治

    「昔の侍」を歌う宮本浩次と椎名林檎

    ここでデュエットしたのが、エレカシの名曲「昔の侍」(1997年)。

    同曲のストリングス・アレンジの一翼を担った斎藤ネコは、椎名の長年の盟友であり、本ライブでも指揮を務めている。「縁」と必然性が折り重なった、絶妙な選曲にうなる。

    椎名は鮮やかな赤の着物に黒い羽織という出で立ち。「侍」にぴったりの和の装いで、華を添えた。

    さすがにサプライズも打ち止めかと思いきや、そこからさらにレキシが登場。椎名をフィーチャリングしたレキシのコラボ曲「きらきら武士」を披露し、会場全体で大合唱となった。

    計算なのか、偶然なのか。「侍」から「武士」へのリレーと考えると趣き深いものがある。

    「不確定性」の時限爆弾

    太田好治

    会場全体で「きらきら武士」を大合唱

    椎名の艶やかで絢爛なステージは「ライブ」というより「レビュー」。もっと言えば「作品」という言葉がふさわしい。

    終演後はいつも、上質な舞台を見終えた後のような、確かな余韻が胸に残る。

    そんな一分の隙もない構築度の高いステージにあって、今回ただ一つの「波乱要因」が宮本だったのかもしれない。

    完全性のなかにあえて仕掛けられた、「不確定性」の時限爆弾。その炸裂した火花を見届けることができた、奇跡の一夜に感謝したい。

    年末のNHK紅白歌合戦では、椎名と宮本の特別出演が予定されている。どんな化学変化を巻き起こしてくれるのか。いまから期待は高まるばかりだ。