ラッパー「母校」に帰る Zeebraが慶応で語ったこと

    中学は慶応普通部、9月から大学の特別講師に

    ラッパーのZeebraさんが9月から、慶応義塾大学の特別講師としてヒップホップについて教えている。BuzzFeed Newsは12月、三田キャンパスで行われた「白熱教室」を取材した。小中学校と慶応に通っていたZeebraさんの、授業へかける思いとは。

    「白熱教室」に密着

    「この時代からラッパーを使ったCMが一気に増えます。韻を踏むということは、CMで言葉を刷り込むうえで威力がある。ヒップホップがメジャーな商品のプロモーションに使われるようになっていったんです」

    12月13日の2時限目、大教室に詰めかけた約50人の学生たちが、Zeebraさんの言葉に聴き入っていた。

    この日のテーマは1990年代の米国のヒップホップの歴史。東海岸と西海岸のスタイルの違いや、ラップが広く浸透し、経済と結びつきながら市民権を得ていく様子を解説した。

    当時のミュージックビデオを紹介しつつ、要所要所でZeebraさん自身の実体験も披露。その一方で

    「『Nothin' But a G Thang』のミュージックビデオでスヌープ・ドッグの帽子にモザイクがかかっているのは、大麻のマークが入っているから」

    「2パックはニューヨーク出身。はじめは『MCニューヨーク』という超ダサい名前だった」

    といったトリビアも織り交ぜ、学生を飽きさせない工夫が感じられた。

    ヒップホッパーの育成めざす

    授業の正式名称は「現代芸術2 ヒップホップ文化とラップの構造」。来年1月中旬まで、15回かけてラップのやり方や国内外の歴史などを教える予定だ。

    ヒップホップ=ラップと思われがちだが、ヒップホップはラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティの4大要素からなる。

    「ラッパー養成講座ではなく、ヒップホッパー育成のための授業にしたい」という思いから、DJ OASISさんやダンサーのHORIEさん、グラフィティ・アーティストのTOMI-Eさんらもゲストに呼んでいる。

    中2まで慶応、大学で「リベンジ」

    Zeebraさんは慶応義塾幼稚舎(小学校)と慶応義塾普通部(中学校)に通っていたが、中学2年の時に留年。転校した。

    「高校も出てないのに、大学で授業をやらせてもらえるなんて、これだけドラマチックなこともあんまりない。冗談でリベンジと言ってるんですけど(笑)」

    「まあ自分としては、福沢(諭吉)先生の『独立自尊』の教えを全うした結果、こうなっただけなので」

    授業を企画し、Zeebraさんを講師に招いた文学部の粂川麻里生教授(独文学)はこう語る。

    「昨年、一度ゲスト講師をお願いした際に、ヒップホップやクラブカルチャーについて非常に熱心に話していただいた。慶応の後輩たちに教えることを喜んでくださり、大変ありがたい」

    「ヒップは知識、ホップは運動」

    米国ではパブリック・エネミーのチャックDやKRS・ワンらのラッパーが、以前から大学で講義を行ってきた。Zeebraさんは言う。

    「日本でもようやく、ヒップホップが文化・芸術として認められるようになってきた。20年以上前からそういう思いで活動してきたので、大学で教えることができて、こんなに嬉しいことはありません」

    授業を通して、学生たちに一番伝えたいことは何なのか。

    「ラッパーのKRS・ワンは『ヒップ』は知識、ホップは『運動』だと言いました。つまりヒップホップって自分で考えて、自分で動くこと。ヒップホップ的なものの見方を伝えていけたらいいですね」

    Zeebra(ジブラ) 1971年、東京生まれ。ヒップホップ・アクティビスト。3人組グループ「キングギドラ」の一員として活躍し、97年にソロデビュー。テレビ朝日系「フリースタイルダンジョン」のオーガナイザーを務める。ラッパーやDJらでつくる「クラブとクラブカルチャーを守る会」の会長として、クラブの深夜営業を規制する風俗営業法の改正運動に尽力。2016年には渋谷区観光大使ナイトアンバサダーに就任した。

    BuzzFeed JapanNews