余命わずかな少年が果たした悟空との約束。「泣きましたよ、スタジオで…」野沢雅子が語るアニメの力【2022年回顧】

    映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』で孫悟空・悟飯・悟天の3役の声を演じる声優の野沢雅子が、「アニメの力」を実感したエピソードを語った。

    2022年にBuzzFeedで反響の大きかったインタビュー記事をご紹介しています。データは記事公開時点のもの。作品はブルーレイ・DVD化され、各種プラットフォームでも配信中です。(初出:5月7日)

    映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が観客動員94万人、興行収入12億円を超える大ヒットを記録。6月11日の公開週の土日には、話題作『トップガン マーヴェリック』をおさえ、ランキング1位にも輝いた。

    BuzzFeedは、孫悟空・悟飯・悟天の3役の声を演じる野沢雅子に、ドラゴンボールにちなんで7つの質問をぶつけた。野沢が語った悟飯とピッコロの絆、納得すぎるストレス解消法、そして余命宣告を受けた少年と「悟空との約束」とは?

    悟飯とピッコロの絆

    ドラゴンボール超 スーパーヒーロー

    🐉① 映画では、悟飯とピッコロの関係に焦点が当てられています。長年続く『ドラゴンボール』シリーズのなかでも、特に2人の絆を感じたシーンは?

    ピッコロさんとの最初の出会いの時は、もうどうなっちゃうのか……。ピッコロさん、最初は悪かったでしょ?

    悟飯君、まだ小さいし。ピッコロさんの厳しい修業で、もうヘトヘトじゃないですか。それでグッタリしてるところに、リンゴを置いていってくれるんですよ。私これが一番好きなんですけどね。

    野沢雅子

    ――なんだかんだ優しいっていう。

    ねえ? リンゴひとつに優しさがポッと出るじゃないですか。なんだこの人、本当は優しい人なんだと。

    今回の作品でも、ピッコロさんはもう悟飯君にベッタリ。悟飯に何かあったら大変って。自分の息子以上に――息子いないけど――かわいいんだと思います。

    ――悟飯からしても、第二のお父さんみたいな感じですよね。

    そう、そうなんですよ。出たての第一印象は非常に悪かったけど、「なんだ、いい人じゃない」みたいな。

    意外な一面も?

    ピッコロ

    🐉② 今作では悟飯とピッコロの共闘シーンもあるということですが、収録はいかがでしたか。

    すごくいいですよ! もう最高ですよ、悟飯君とピッコロさんは親子以上の絆、チームワークがあって。

    ピッコロさんは悟飯のためだったら、自分の身を投げ出してもやると思います。

    ――ピッコロさんの家も出てくるそうですね。一体どんな家に住んでるのか……。

    楽しみにしておいてください。「えっ!?」って意外な感じですよ。

    逆襲のレッドリボン軍

    ガンマ1号、ガンマ2号

    🐉③ 野沢さんは以前、ドラゴンボールの一番好きなシーンとして、悟空がスノの家でレッドリボン軍に襲われるシーンを挙げたこともあります。今回の映画では、レッドリボン軍との久々のバトルが繰り広げられるんですよね?

    はい。レッドリボン軍って「まあ、何てやつら!」なんて思ったんだけど、意外とちょっと三枚目なところもあるじゃないですか。

    ――そうですね(笑)

    ちょっと抜けてるな。こういうところが人間らしくていいな、なんて。だから割と好みだし、レッドリボン軍のことは毛嫌いはしてないんです。

    ――レッドリボン軍の人造人間、ガンマ1号とガンマ2号はやはり手強いのでしょうか。

    強いんですよ。ドラゴンボールに出てくる敵って、なぜか強いですよね。

    「この間より強いの?」なんて思うんだけど、どんなに強くても大丈夫です。悟飯君は冷静なので。

    孫悟飯

    優等生だし、本当はずっとお勉強やりたいんだけど、いざ戦わなきゃならない、守らなきゃならないっていう時は率先して出てきますからね。そういうところ、すごく好きです。

    ――今回は優等生の悟飯君じゃなくて、一味違う悟飯が見られますか。

    見られます!

    真のスーパーヒーローとは

    孫悟空、ベジータ

    🐉④ 映画のキーワードのひとつが「ヒーロー」だと思いますが、野沢さんが考える「真のスーパーヒーロー」の条件とは?

    条件は、自分の身を捨てても平和を守ること。そういう意志が見られると、とってもいいですよね

    ――自己犠牲の精神。

    そうです、そうです。(自分の)身を守り過ぎるのはダメ。

    嫌なことがあると…

    孫悟飯

    🐉⑤ 傷ついて倒れて、そこから復活するとさらに強くなるのがサイヤ人です。野沢さんご自身の歩みを振り返って、挫折から立ち直ったご経験はありますか?

    多分その時は傷ついていることも、たくさんあると思うんですよ。だけどそれが吹っ切れると、ケロッと忘れるタイプ。私、それがとっても自分のなかでいいと思ってるんです。

    ずっと引きずっちゃうのは嫌いなんですよ。明るく、上を向いていく。下は向きたくないですね。

    ――心の仙豆を食べて、上を向いて。

    そうそうそう、仙豆あるといいですよね! 皆さんにも分けてあげたい。

    嫌なことがあるとね、お風呂で「か・め・は・め・波〜!」ってお湯をバーンってやるの。これがまた、いい気分でスッとするんです。嫌な気持ちも飛んでいっちゃう。

    ――お風呂でかめはめ波! いいですね。

    やってみてください(笑)

    「オッス、オラ悟空!」少年との約束

    孫悟空

    🐉⑥ 野沢さんの声優人生のなかで「アニメの力」を感じた出来事があれば、教えてください。

    すごく昔の話ですけど、少年のお父さんからお手紙がきたんですよ。「サイン色紙がほしい」とあって。もちろん!と思って読んでいったら、こんなことが書かれていました。

    「病気で2月いっぱいもたないと、お医者様から言われている。ドラゴンボールの映画を見せてあげたいけど間に合わない。せめてサインだけでも……」

    という話でした。で、私は(スタッフに)「申し訳ないんだけど、テープ録ってくれる?」と頼んだんですよ。

    手紙にはその子の名前も書いてあったの。だから名前を呼んで、「オッス、オラ悟空! オラ、劇場で待ってっからな。ぜってぇ来んだぞ! 劇場で会おうな」と入れて送ったら、すごく喜んでくれた。

    そうしたら、映画を見られたんですよ!

    ――すごいですね。映画の公開はいつだったんですか?

    それが、7月とか8月なんですよ。

    医師からの手紙

    野沢雅子

    ――2月いっぱいと言われていたのに、悟空との約束を守るために頑張ったんですね。

    そう、生き延びて。もう寝たきりで、とてもじゃないけど痛くて、座って見られるような状態じゃなかったんですね。

    だから、看護師さんたちも一緒に行って、ベッドから映画を見られるようにしてあげて。だけどその子は「座って見る!」と言って、座って見たそうです。

    それで映画を見て帰ってきてから、パンフレットを抱いて息を引き取ったって……。もうね、泣きましたよ、スタジオで。

    お医者様もビックリしてたんです。どうして座って見られたのか不思議だって。亡くなった後にお手紙をいただいて。

    「僕たちは延命とか人の命を助けるために勉強してきたけど、僕たちの力ではどうにもならなかった。力のなさを感じて情けなかった。アニメっていうのは、どんな力を持ってるんでしょうね」と書かれていましたね。

    すごいでしょ、アニメの力って。

    ――そんな奇跡のようなことが起こるなんて……。

    信じられないでしょ? あんまりにもドラマチックで。でも、事実ですからね。目に見えない力があるんですよ。

    ドラゴンボールがあったなら

    野沢雅子

    🐉⑦ 最後の質問です。もし野沢さんがドラゴンボールを7つ集めることができたら、どんな願いを叶えたいですか。

    すごく当たり前のことで、誰しも言うと思うんだけど、私はやっぱり「平和」です。

    争いごとも何もない、穏やかな世の中であってほしい。みんなで明るく生きていけるような。

    どこの世にもいるんですよね、ちょっとダメな人が。しょうがないことなのかもしれないけど、それがない世の中にしたいですね。

    思う時ありますよ、ドラゴンボールがあったらいいなって。

    『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』

    ドラゴンボール超 スーパーヒーロー