「音楽は魔法」MCに大森靖子が怒り Yogee New Wavesが謝罪文

    消されたブログ、ツイッターに綴られた思い

    シンガーソングライターの大森靖子が、同じ音楽フェスに出演したバンド「Yogee New Waves」のMCの内容などをめぐり、ツイッターやブログで怒りをあらわにした。

    Yogee側は14日、「大変申し訳ありませんでした。心から反省しております」とする謝罪文を公式サイトにアップした。

    双方のファンを巻き込んだ混乱の拡大を受け、大森はツイッターアカウントや、この件に関するブログ記事を削除。

    12日付のブログでは「ただの、歌詞です」と断りつつも「アカウントを消して仮想的に自殺する」と書くなど、波紋が広がっていた。

    強い憤りの理由は

    大森の強い憤りの理由はどこにあったのか。ことの発端は、9月9日に川崎で開催された音楽フェス「BAYCAMP」。Yogeeのボーカル、角舘健悟がMCで「音楽は魔法だよ!」と呼びかけたことだった。

    大森は直前のステージで「音楽は魔法ではない」という歌詞が含まれる「音楽を捨てよ、そして音楽へ」という持ち歌を披露しており、角舘のMCは大森の感情を逆撫でするものだったようだ。

    大森は同日夜にツイッターを更新し、《これの何がロックなの?「音楽は魔法ではないでも音楽は」に何が続くのか、どんな気持ちで曲をつくってライブをしているか、それを平気で踏みにじる人間…》などと激しい言葉で批判した。

    「音楽を捨てよ、そして音楽へ」は確かに「音楽は魔法ではない」という言葉が繰り返し登場するが、歌詞の最後は「でも音楽は」という逆説で締めくくられている。

    タイトルにも「そして音楽へ」とうたわれている通り、単純に音楽の力を全否定した曲ではない。

    大森はツイッターで《音楽そのものは魔法じゃない、音楽が魔法的な可能性を秘めているだけ。あとは自分とそこにいる人次第》とも綴っている。

    YouTubeでこの動画を見る

    大森靖子 Youtube Channel

    大森靖子「音楽を捨てよ、そして音楽へ」at ARABAKI ROCK FEST.16

    「ステージにかける気持ち、踏みにじられた」

    それだけに、「魔法ではない」という言葉を額面通りに捉えたかのようなYogeeのMCに対して、苛立ちを覚えたのかもしれない。

    翌10日には「魔法」と題したブログ記事を投稿。「音楽を捨てよ、そして音楽へ」の歌詞を引用したうえで、改めてYogee側の対応をこう非難した。

    《ろくに見ても聞いてもないステージに関して、「音楽は魔法だよ」と、ちょっと聞こえたこと利用したその場の思いつきの軽快な煽りMCで、私のステージの意味や込めたものを無化しようとするというのは、私のひとつのステージにかける気持ち全部、無駄ですって踏みにじられたことなので、とてもつらくなりました

    一方の角舘は同日のツイッターで《弁明したいっすねー! 悪意のない行動に色々付随して噂になってるのが悔しいなー! 音楽が曲がって聞こえちゃうでしょう。くぅー! それだけは避けたい!》と発信。その後は沈黙を守っていた。

    弁明したいっすねー! 悪意のない行動に色々付随して噂になってるのが悔しいなー! 音楽が曲がって聞こえちゃうでしょう。くぅー!それだけは避けたい!

    Yogee New Wavesのボーカル角舘健悟のツイッター

    「大森さんの作品を否定する意図、全くない」

    謝罪文によれば、Yogeeのメンバーは10日に大森のもとを直接謝罪に訪れたが、「配慮の至らない点があり」大森はこれを受け入れなかった。

    その後、大森サイドの確認も経て、14日の謝罪文公表に至ったという。

    YogeeはMC での発言について、謝罪文で《「音楽」と「魔法」に関する主義主張は、様々なアーティストが様々な哲学と思想を持った上で発言、歌唱、表現していることは理解しているつもりです》と説明。

    《他意はなく、ましてや大森靖子さんの作品や表現を否定する意図は全くありませんでしたが、表現の仕方が間違ってしまった》と述べ、大森本人やバンドメンバー、スタッフ、また双方のファンに対して謝罪した。

    楽器貸し出しめぐる経緯

    事態をより一層複雑にしたのが、Yogeeの演奏中にベースの弦が切れ、大森のバンドメンバーのベースが貸し出されたことだった。

    大森は10日付のブログで《私のステージへの気持ち全部かけた曲を否定したのだから、弦が切れて困ったからって、本人の許可無くうちのメンバーの楽器を使って欲しくなかった》と訴えていた。

    ただ、この点はYogee側にも同情の余地がある。

    「本人の許可無く」というと無断でベースを持ち去ったようにも読めるが、実際にはYogeeのベーシスト上野恒星がもともと知り合いだった大森バンドのギタリスト畠山健嗣に声を掛け、えらめぐみのベースを借りたのだという。

    畠山はその場でえらに許可を得ようと電話をしたが繋がらず、緊急事態であることを考慮してベースを貸した。結果、えらや大森の預かり知らぬところで、Yogeeのステージでベースが使われることになった、という経緯だ。

    上野は謝罪文で、えらや畠山らへの感謝を表明。予備のベースを持参しなかった準備不足への反省を述べつつ、《ご厚意で協力していただいた方々に、大変複雑な思いをさせてしまって、非常に心苦しく思っています》と記した。

    いくつものボタンの掛け違いが重なり、炎上が拡大した今回の騒動。謝罪文の発表で事態が収束へ向かうことを祈りたい。


    BuzzFeed JapanNews