女体盛り超えた「NYOTAIMORI」 女性代表が仕掛ける「違和感」の美

    「非現実空間がないと、面白くないじゃないですか」

    「女体盛り」と聞いて、あなたは何を想像するだろうか。昭和のエロ親父? いかがわしい宴会芸? そんな卑猥なイメージを一新する、「NYOTAIMORI TOKYO」の美しいパフォーマンスが注目を集めている。BuzzFeed Newsは、代表のMyuさんと広報でモデルのzaqiさんに活動の狙いを聞いた。

    興味津々な女性客

    昨年11月、ある結婚パーティーでNYOTAIMORI TOKYOのパフォーマンスを見た。

    幻想的な音楽が流れるなか、魔女が女性の体を花や真珠で装飾し、聖水を振りかけ、ケーキを盛り付ける。さながら「儀式」の趣で、気品に満ちた妖艶さこそあれ、下世話な印象は皆無だ。

    花嫁が女体盛りケーキへの入刀を終えると、好奇心にかられた女性客が集まり、次々にスマホで撮影し始めた。男性客の方が、むしろどぎまぎと気後れしているように見えた。

    「男性より女性がノリノリなことは結構ありますね。女性に喜んでいただけると、『あ、勝ったな』と思います」(Myuさん)

    「男の人は、どうやって見たらいいのか少し戸惑うみたい。でもそこは、戸惑わせたいですね(笑)」(zaqiさん)

    誕生日パーティーで「女体盛りケーキ」

    Myuさんが初めて女体盛りを企画したのは、22歳の誕生日パーティーだった。「女体盛りケーキがほしい」というMyuさんの突拍子もない要望に応え、友人がモデルを務めてくれた。

    「撮影やヘアメイクといったビジュアルづくりもカチッと決めて…。それがすごく面白かったんです。これを突き詰めて仕事にできたらいいなって」

    その後もプライベートのパーティーで女体盛りをする機会があり、評判が評判を呼んで、依頼が舞い込むようになったという。

    利用客の9割は外国人

    もともと現代アートに関心があり、アルバイトや飲食店経営をしながら創作活動に打ち込んできたMyuさんにとって、女体盛りは作品づくりの延長だ。音楽や照明、メイク、衣装からモデル、食材選びに至るまで、細部にこだわり抜く。

    寿司、中華、フレンチ、スイーツなど、料理のメニューは多彩。リクエストに応じてショーの演出も変える。食材がモデルの肌に直接触れないよう、衛生面にも気を配っている。

    利用客の9割を、外国人の観光客やビジネスマンが占める。友人同士の4、5人の会合から、出席者が100人を超える大規模なパーティーまで、幅広く手がける。

    ポップに換骨奪胎

    昔からある女体盛りについてはどう考えているのか。Myuさんは言う。

    「人に食べ物を乗せるとか、女性の体を使って遊ぶとか、やっちゃいけないことやタブーに対して、エロスと背徳感を見出していたんでしょうね。ポルノのファンタジーというか、想像力が屈折してるなと思います」

    屈折した妄想の面白さは生かしつつ、嫌悪感を抱かせる要素を一つひとつ潰していく――。旧来の女体盛りを大胆に換骨奪胎し、ポップでスタイリッシュな表現へと昇華させた。

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    NYOTAIMORI TOKYO / Via youtu.be

    NYOTAIMORI TOKYO -ShangHai Rouge-

    「女体盛りって、オジサンたちが夜に隠れてお寿司をつまむ、みたいなダークなイメージがあった。完全に逆張りしてやろうと思って、昨年出した写真集では朝食で目玉焼きとトーストを使った作品を撮りました」

    「目玉焼きをビキニみたいにおっぱいに置いたらギャグになっちゃう。女性器だとか、胸だとか、わかりやすく性的な部分に意識がいかないように、配置にはすっごい気をつかってます」

    匂い立つ微かな官能性

    だからと言って、官能性を完全に消し去ってしまうわけではない。

    「あからさまに隠すとダサくなる。『隠れているけど、あえて隠してはいないよ』っていう感じに仕上げてます」(Myuさん)

    「セクシーだけど、ポルノにはならないラインですね」(zaqiさん)

    取材中、Myuさんがしきりに口にしたのが「グラデーション」という言葉だった。猥褻かアートか、きれいな二分法で片付けることはできない。両者は絶えず混ざり合っている。ただ、濃淡があるだけなのだ。

    「100%の人が『エロいよね』というグラビアがあったとして、そこからアダルトな要素をどんどん抜いていく。残った1%で作品をつくると、不思議とカッコイイものになるんです」

    身体がそこにある以上、消しても消しても匂い立つものが残る。その微かな成分が違和感を惹起し、見る者を誘引する。

    「視点をずらす。規則性のあるもののなかに、変なものがひとつ混じる。そういう違和感、フックを大事にしています

    モデルを「お皿」と呼ぶ理由

    NYOTAIMORI TOKYOでは、女体盛りのモデルを「お皿」と呼んでいる。だが、それは「女性をぞんざいに、モノ扱いしている」という意味ではまったくない。

    Myuさんは「自分と同じ身体というより、彫刻のような造形物として捉えてますね。精神性が人間じゃない部分にいく、『皿モード』に入る瞬間があるみたいです」と解説する。

    なすすべなく横たわり、装飾や食材を盛り付けられる。皿になる瞬間は、どんな心境なのだろう。

    モデルのzaqiさんは「いつ割れてもいいお茶碗ではなくて、床の間に飾られた大切な壺やお皿になったような感覚。『御神体』に近いかもしれません」と語る。

    「神人共食」と儀式性

    女体盛りと御神体。ミスマッチを感じるかもしれないが、実際、NYOTAIMORI TOKYOのショーには、神秘性や儀式性を伴ったものが多い。

    食物の神様オオゲツヒメから材を取ることもあれば、茶室を模したセットで玉藻前の妖狐伝説をテーマにパフォーマンスをしたこともある。

    「食べ物と身体があって、人間が人間じゃないものになる。それってすごい儀式性ですよね」(zaqiさん)

    「『神人共食』という言葉があるように、日本には食べるという行為を通じて、神様と交信する文化があります。お餅を一口ずつ食べて、神様と食事をともにする、というような」

    「同じ空間にいる人たちに、なるべく近しいイマジネーションを喚起しようと思ったら、何かしらの制限を設けて儀式的な要素を入れるのが一番いいなって思うんですよね」(Myuさん)

    非現実空間を見せたい

    昨年は香港のギャラリーで1ヶ月にわたって写真展を開いた。今後も海外での活動には力を入れていくつもりだ。

    依頼を受けてのパフォーマンスばかりでなく、NYOTAIMORI TOKYO主催の自主企画も増やしていきたいという。

    最後に抱負を尋ねると、Myuさんが目を輝かせた。

    「湖とか川に小舟を浮かべてガチ舟盛りとか、やってみたいシチュエーションは本当にたくさんあって」

    「現実的じゃないものを見せたい。なんかおかしなものを見ちゃったな、という感覚というか。非現実空間がないと、面白くないじゃないですか」

    BuzzFeed JapanNews