さくらももこが「何者でもなかった」新人ミュージシャンに送った手紙

    原稿用紙に几帳面な文字で綴られた思いとは


    さくらももこさんの早すぎる死は、音楽界にも大きな衝撃を与えました。

    親交があったという元たまの石川浩司さんをはじめ、ゴールデンボンバーのメンバーや木村カエラさんら、ミュージシャンも次々に追悼コメントを発表しています。

    シンガーソングライター、まつきあゆむさんもその一人です。

    駆け出し時代に渡したCD

    さくらさんの訃報が流れた8月27日夜、まつきさんはTwitterで以下のようにツイートしました。

    《「ももこ」という曲を書きCDを出した頃、今よりもっと何者でもなかった2007年。取材の担当者を通じてさくら先生にCDを渡してもらった。数日後突然自宅にさくらプロダクションから小包が届いた。400字詰めの原稿用紙2枚に鉛筆で書かれた手紙と色紙》

    《手紙には何度か文章を直した後があり、色紙には下書きの線が残っていた。単純に一人のアーティストとして対峙してもらえて嬉しかった。 まだまだ半人前の自分に合格の判子をもらった気分だった。自分にもしそういうことがあったなら同じように振る舞いたいと思った》

    「ビートルズのように」

    原稿用紙には、さくらさんの几帳面な文字でこんな風に綴られていました。

    《私の作品を深く楽しんで頂き、うれしいです。読んで頂く方々にそれぞれの受け取り方があると思うのですが、まつき君のように強く何かを感じて味わって頂ける事は、作者として、描いて良かったと思い、感謝の気持ちでいっぱいです。(ももこっていう曲は私としてはかなり照れますが…)》

    《まつき君の曲はとても良いと思います。ビートルズが大好きなのもよくわかります。ビートルズはすばらしいと私も思いますが、ビートルズがバディやスペクターやその他いろんな曲を吸収し昇華させてビートルズサウンドを作ったように、まつき君もビートルズやその他たくさんのサウンドを昇華して、すてきなまつきワールドを幅広く展開していって下さい。とっても楽しみにしてます》

    ビートルズとバディ・ホリーやフィル・スペクターとの関係を引き合いに、まつきさんを激励するさくらさん。その文面からは、通り一編の感想にとどまらない、深い音楽愛と該博な知識が伺えます。

    「いつかどこかで会えると」

    国民的な大ヒット作家でありながら、まだ駆け出しのミュージシャンに対して、これだけ心のこもった対応をしていた事実には驚くばかりです。

    色紙と手紙を紹介したまつきさんは、一連のツイートをこう結んでいます。

    《いつかどこかで会えると勝手に信じていた。何も返せなかった。心から、ご冥福をお祈りします》

    まつきさんの「ももこ」はこちらで聴くことができます。

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    youtube.com

    まつきあゆむ/ももこ(デモ音源)