ディズニー/ピクサーの新作アニメ映画「インクレディブル・ファミリー」(8月1日公開)で、スーパーヒーロー一家の父親ボブの声を演じている三浦友和。
シンガー・ソングライターの三浦祐太朗と俳優の三浦貴大の父でもある三浦が、自らの家事・育児の経験をもとに、独自の家族観や山口百恵との夫婦関係について語った。

育児は苦にならなかった
――ボブは自身スーパーヒーローでありながら、悪と戦う妻ヘレンの留守を預かり、慣れない家事と育児に悪戦苦闘する役どころです。三浦さんもかつて「ハウス・ハズバンド(主夫)」として、積極的に育児に取り組んでいたそうですね。
ボブと状況は違いますが、ああそうだよな、大変だったなと同じように感じました。
ジャック・ジャックみたいなスーパーパワーはないですけど(赤ん坊のジャック・ジャックは様々な超能力を持ち、ボブの手を焼かせる)、子どもはやっぱり予測のつかない行動が多いので。
なんで泣いているのかわからないとか。でもそのぶん楽しかったですけどね、僕は。

「手伝っている」ではなく
――オムツを替えたり、離乳食をつくったり、お風呂に入れたり。
高校の同級生の忌野清志郎と一緒にRCサクセションをやっていた、破廉ケンチと家族ぐるみの付き合いをしていて。
そこの子どもがウチより何年か早く生まれて、お風呂に入れたりしていたんです。その時、幸せだなと思ったけど、自分の子どもの時はもっと幸せを感じました。
「手伝っている」という感じではなくて、楽しくやってました。本当に苦にならなかったですよ。

「家族サービス」言葉に抵抗感
――「家族サービス」という言葉があまり好きではないとか。
「家族サービス」っていう言葉は昔から抵抗がありましたね。サービスする相手じゃなくて、自分も一緒に楽しむ相手なわけで。
そういう言い方をすると、どうしても義務でやってる感じになるでしょう。
休みの時は、家族や子どもが望んでいることをしてあげたい。そういう気持ちから発するものですから。
――お子さんたちが小さいころは、よくピクニックやキャンプにも行っていたと聞きました。俳優業も忙しかったのでは。
28歳で結婚して、32歳で長男が生まれて。そのころは仕事がそんなになくて、暇だったんですよ。子ども相手に何かできる時間が思い切りあった。
だから(仕事の)不安を何も感じずに生きられたのかもしれない。この子たちのためにがんばらなきゃいけないな、という思いも強くなりましたし。
そういう経験が後々の仕事にも生きている気がします。

子育てに「正解」はない
――映画では、長女ヴァイオレットが父親に反発する様子など、思春期の心の動きもリアルに描かれていました。祐太朗さんや貴大さんは、反抗期ってありましたか?
それが何もないんですよ。僕は若いころ父親が嫌いな時期もありましたが、そういうことが一切なくて。
違うところで爆発するんじゃないかとか、ちょっと不安だった時期もありますけど(笑)
――子育てが良かったからこそ、素直にまっすぐ成長して。
いやいや、それは違うんですよね。子育てに正しい方法なんてない。だから僕は、子育て本も信じていません。
偶然そういう状況になっただけで、子どもが賢かっただけかもしれないし、周りで助けてくれた人が良かったのかもしれない。
「子育てが良かったのだ」みたいな考え方は、押し付けがましくて嫌いだな。立派に育ってるとも思ってないですもん。
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「インクレディブル・ファミリー」本予告(吹替え版)
夫婦ゲンカはムダ
――映画の序盤でボブとヘレンが夫婦ゲンカするシーンが出てきますが、三浦さんは夫婦ゲンカをまったくしたことがないというのは本当ですか。
本当ですよ。「ケンカするほど仲がいい」というけど、僕は言い訳だと思う(笑) ケンカはしない方がいいに決まってるんだから。
戦争するほど国と国が仲良くなるってありえないでしょ。それの規模の小さい版ですからね。
――ケンカになる前に呑み込む、ということでしょうか。
そういうこともあるでしょうね。もうひとこと言ったらダメだなっていうのを、お互いにわかってるというのがあるかもしれない。
ウチの両親が年中ケンカしてたタイプなんですよ。
ケンカの原因ってめちゃくちゃつまらないことじゃないですか。夫婦生活に何ら影響のない、くだらないことでケンカが始まって、1週間も2週間も引きずって。
本当にエネルギーを使うでしょ。ちょっとした思い違いとか勘違いとか、始まりは些細なことなのに。
そういうのをずっと見ていて、ムダだと思ったんです。時間のムダだし、嫌な思いをするだけ。だから、夫婦ゲンカはやめよう、キッカケをつくるのもよそうと。ふたりとも、そういう思いなんでしょうね。

トイレ掃除も掃除機がけも
――三浦さんは掃除機がけやトイレ掃除もされると。最近はやたらと「イクメン」アピールばかりしたがる人もいますが。
やってますよ。自慢するってことは「やってやってる」と思っているからでしょう。押し付けてますよね。
奥さんが家事をやっても、いちいち自慢しないでしょう。「きょう洗濯してやったぞ」とか「畳んでやったぞ」なんて。そういうのはお互い様ですから。
家族ってこういうことか
――「インクレディブル・ファミリー」は、ピンチの時に結集して助け合います。東日本大震災の時は、祐太朗さんと貴大さんが家に駆けつけたそうですね。
普段は盆と正月ぐらいしか戻ってこないんです。自分のことを振り返っても、デビューしてから2、3年、家に帰らなかったなかったことがありますから。
だけれども、震災の時はその日のうちに家に集まってきた。僕はちょうど富山で撮影があってどうしても動けなかったので、ちょっと感動しました。
ああ家族ってこういうことか、と再確認する瞬間でしたね。

――祐太朗さんと貴大さんには、いずれ結婚してほしいと考えているとか。
結婚するかしないかは個人の自由。願わくば、ですけどね。
歌い手や俳優という仕事を考えると、そういう経験はプラスにはなるかなと。もちろん人間的にも。僕自身も仕事には相当、影響してますよ。

絶対、相性なんですよね
――著書『相性』によると、「夫婦円満の秘訣」みたいなものは特になくて、百恵さんとはとにかく「相性」が合っていたと。
絶対、相性なんですよね。
結婚してからじゃないと、わからないことが多すぎて。そこが合うっていうのは相性しかないでしょう。
努力でも何でもなくて、この人と一緒になって良かったなと思う。それしかないですよね。

――結婚20周年から10年ごとに指輪をつくっている、というエピソードが素敵だなと思いました。
最初の10年の記念はペアウォッチにしました。20年目に指輪をつくり替えて。サイズも変わりますからね。
普段は指輪をしてないからとっておくだけなのですが、まあ記念として。「20年、30年一緒だったね」と、ふたりで相談してつくるんですよ。
今年で結婚38年目。40年はもうちょっと先だけど、またつくりますよ。
