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m-floの☆Takuが上智大で授業 「come againは大間違い。でも…」

不完全性が生んだ名曲の輝き

来年で活動20周年を迎える音楽ユニットのm-flo。オリジナルメンバーのLISAが15年ぶりに復帰を果たすなど、各所で話題をふりまいている。BuzzFeed Newsは、メンバーでDJの☆Taku Takahashiさんが、12月に上智大学で行った講義に密着した。

上智大の学生たちを前に語る☆Taku Takahashiさん
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

上智大の学生たちを前に語る☆Taku Takahashiさん

「been so long」の試行錯誤

授業は日本国際放送と上智大が連携する「グローバル・メディア実践プログラム」の一環。

☆Takuさんは、NHKワールドの音楽番組「J-MELO」のチーフ・プロデューサーを務める原田悦志さんの講義に、ゲスト講師として登壇した。

冒頭、初期の楽曲「been so long」(1998年)を流すと、当時をこう振り返った。

「アメリカのヒップホップとかR&Bテイストの曲がJ-POPになかったから、そういう要素を入れたかった。どうやったら日本の大勢の人たちに理解してもらえるか、試行錯誤していました」

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youtube.com / Via youtu.be

m-flo / been so long

ソロ活動で味わった「悪夢」

翌年にメジャーデビュー。m-floでの活動の一方、ソロのDJとしても自らパーティーを主催した。「いま考えるとm-floへの反動もあった」と述懐する。

「DJのイベントをやると、ファンの方々が来てくれる。むちゃくちゃありがたい話なんですけど、僕にとっては悪夢で。自分がかけたい曲とお客さんがかけてほしい曲にすごい差があったんですよ」

「『m-floかけて』って言われても、かけたくねーし!みたいな(笑)。正しいんですよ、お客さんは。でもその時はかけたくなかった。なんか、あるじゃないですか、そういうの」

アンダーグラウンドとオーバーグラウンド。オルタナティブとポップ――。境界線を軽々と乗り越え、幅広い層から支持を集めるm-floを「J-POPの幕の内弁当」と評する。

上智大で授業をする☆Taku Takahashiさん(右)と原田悦志さん
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

上智大で授業をする☆Taku Takahashiさん(右)と原田悦志さん

一斉に「石原さとみ」目指す音楽業界

日本の音楽シーンの状況は苦しい。CDの売り上げは低迷し、気になる曲があってもYouTubeで流して終わりという人が少なくない。ミュージシャンにとっては厳しい環境だ。

「不景気や違法コピーで、業界がどんどんダメになっていった。そういうなかで、良し悪しは別にして、知恵を使って握手券をつけたりとかしてるわけですよね」

「たとえばの話、石原さとみさんは人気がありますけど、すべての女性が石原さんを目指しても仕方がない。それよりは、自分を好きになってくれる人を探した方がいいと思うんです」

「でも、日本のレコード業界はみんなして石原さとみを目指している。それは失敗が許されないからですよね。で、アルバム1枚出して、売れなかったらおしまい、みたいな」

講義に聴き入る学生ら
Ryosuke Kamba / BuzzFeed

講義に聴き入る学生ら

とはいえ、悲観はしていない。

LISAのm-flo復帰にあたって音楽ストリーミングサービスのSpotifyで謎めいた予告メッセージを出したり、150曲入りアルバムを配信限定でリリースしたりと、新たな手法に貪欲に挑戦している。

ダンスミュージックの総合情報サイトblock.fmの代表取締役としても、音楽文化のすそ野を広げるべく力を尽くす。

「ピーク時に比べれば収入は減りました。けど、いまが一番楽しいです」

☆Taku Takahashiさん

☆Taku Takahashiさん

「あの曲は好きじゃない」率直な米国ファン

☆Takuさんはここ数年、アメリカで頻繁にDJをしている。アニメのコンベンションなどを中心に、今年だけで9回渡米した。

「向こうにもコミケやニコニコ超会議のようなイベントがあって、夜はレイヴ・パーティーをやるんですよ。そこに日本のアニメやファッション、音楽を好きな人たちが集まってくる」

「僕の場合、何で呼ばれるかっていうと、アニメのサウンドトラックをやっているから。それと『been so long』が『ビートマニア』というゲームに収録されていた関係で、ビーマニのファンから知られているんです」

イベントの際は、現地のファンと気軽に交流する。反応は驚くほど率直だ。

「お前の作品は好きだけど、あの曲は好きじゃねえ」

「途中からEDMとかアメリカっぽいサウンドになっちゃって、俺ら的にはつまらないんだよね」

そんな忌憚のない意見にも、真摯に耳を傾ける。

☆Taku Takahashiさん

☆Taku Takahashiさん

汝の不完全さを愛せよ

日本の音楽シーンに、新しい風を吹き込みたい。☆Takuさんの思いは一貫している。ところが米国では、デビュー初期の楽曲が評価され、最近のものは今ひとつウケが悪い。なぜか。

「理由は何かっていうと、うまくなりすぎちゃったんです。彼らが評価してくれていたのは、僕の不完全な部分だったということに気づかされたんですよね」

「当時の僕は『こうしたい』という思いはあるのにやり切れていない。自分のダメな部分だから見たくないんだけど、アメリカのファンは実はそこをすごく評価しているんです」

名曲「come again」の誕生秘話

代表曲の「come again」(2001年)も、当時ヨーロッパで流行していた「2ステップ」と呼ばれるサウンドを目指していたが、「実際には2ステップになりきれなかった」と明かす。

本来であればベース音にはローランドのTR-909というシンセサイザーを使うべきところ、苦肉の策で生楽器のウッドベースで代用したのだという。

YouTubeでこの動画を見る

mflo10yrs / Via youtu.be

m-flo / come again

「『come again』は大間違い、間違いのカタマリなんです。でも、それがよかったんでしょうね」。講義後の取材にこう語った。

試行錯誤の末に生まれた不完全性がオリジナリティーへと飛躍し、絶妙なズレがリスナーの胸を揺さぶる。

「いまは、いかに不完全をシミュレートするかにハマってます。レコーディングや曲づくりもあえて不規則にして、『事故』が起こりやすい音楽環境をつくってますね」

☆Taku Takahashiさん

☆Taku Takahashiさん

☆Taku Takahashi(タク・タカハシ) 音楽家、DJ。1974年生まれ、横浜出身。1998年、ラッパーのVERBAL、ボーカルのLISAとともにm-floを結成。2002年のLISA脱退後は、様々なアーティストとコラボする「loves」シリーズが話題を呼んだ。今年12月にLISAの復帰を発表。150曲入りアルバム「UNIVERSE」も配信リリースした。新曲「never」は、来年3月公開の映画 「去年の冬、きみと別れ」の主題歌に決まっている。個人としては加藤ミリヤ、MINMI、NEWSらをプロデュースし、ドラマや映画、アニメのサウンドトラックを監修。日本初のダンスミュージック専門ネットラジオblock.fmの代表も務めている。

BuzzFeed JapanNews


Ryosuke Kambaに連絡する メールアドレス:ryosuke.kamba@buzzfeed.com.

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