ボクシングWBO世界スーパーフライ級のチャンピオン、井岡一翔選手のタトゥーをめぐり、日本ボクシングコミッション(JBC)が処分を検討していると報じられている。
タトゥーの彫り師らでつくる業界団体「日本タトゥーイスト協会」は、JBCのルールが不合理だとして処分に反対する声明をウェブサイトに発表した。
「不快の念を与える風体」は出場禁止
井岡選手は、2020年大晦日の防衛戦に身体のタトゥーが見えている状態で出場したことが問題視されている。
JBCのルール第86条で、長髪やヒゲ、感染症の罹患者に加え、「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」らの出場を禁止しているためだ。
今年1月5日付の「デイリー新潮」は、「彼だから特別許可したということは一切ありません。ルール違反は明らかで、現在、対応を検討中です」とするJBCの見解を報じた。
また、翌日公開された「THE PAGE」の《どうなる?井岡一翔の大晦日タトゥー問題…意図的ではなかったがJBCは週明けにも処分決定》という記事でも、JBC側の次のような主張が紹介されている。
「入れ墨とファッションとしてのタトゥーの線引きは難しく、反社会的勢力の象徴としてのイメージは今なお消えておらず、ボクシングという競技の特性上、暴力行為とも結びつけられやすい」
彫り師団体「不合理なダブルスタンダード」
JBCの方針を伝える報道を受け、日本タトゥーイスト協会は1月8日にサイトを更新。反対声明を発表した。
《「入れ墨」を欠格事由とするJBCのルールは、外国人に適用されないとされており、これは不合理なダブルスタンダードというほかありません。そもそも、井岡選手をはじめとするボクサーたちは、それぞれ、個人としてその力量を高めるべく努力し、個人として自らの戦いに臨んでいます。にもかかわらず、国籍が日本か否かによって、試合中に入れ墨を露出してもよい/悪いが決められるというのは、ボクサーの個人としての尊厳をあまりに軽んじるものです》
《報道によれば、井岡選手は、1年5か月ぶりの再起戦を戦う際に、決意と覚悟を示す証としてタトゥーを入れ始め、さらに、家族とともに戦う意味も込めて長男の名前も入れたとされています》
《個人が自らの「信条ないし情念」に従って入れたタトゥーについて、対外的な場での露出を禁じる(それも国籍が日本である場合のみ)ことには、何らの合理性も認められません》
《以上より、本協会は、JBCが、試合中のタトゥー露出を理由として井岡選手に対して処分を下すことに反対の意を表明します》
協会の顧問を務める吉田泉弁護士は、BuzzFeed Newsの取材に「『不快の念』という主観的な基準で処分を決めるのは、不合理でおかしい」と話した。
井岡がYouTubeで語っていた思い
井岡選手は今回の処分方針に関して沈黙を貫いているが、昨年8月に公開された「【井岡一翔ぶっちゃけトーク】世界チャンピオンにボクシングの闇・タトゥーについて質問してみた」というYouTube動画でこんな風に語っている。
「それ(タトゥー)で就職できないとか、表舞台に立てないというのは、世界とのギャップがありすぎる。(略)僕もこの年になって入れて、いまも現役の世界チャンピオンやし。そういった意味で印象を変えていけたらいいな」
「ボクシングの場合、『出てもいいけどリング上がる時は消してほしい』とか、僕がやっちゃうと『ほかの選手に示しがつかん』とか。そういうのを徐々に崩していけたらいい」
「どうでもいいことじゃないですか。見てる人が求めてるのってパフォーマンスであって。試合を見てるのに刺青がどうとか、じゃあ和彫りはダメで洋彫りはいいのか、とか。そんな細かいことはどうでもいいし」
「(日本のジムに所属していても)海外の選手だと普通にタトゥー入れてるんですよ。でも消さなくていいんですよ。外国人やからって。それも矛盾してるし」
「そこもおかしいんで、徐々に打ち砕いていって。こいつに言っても通用せえへんな、めんどくさいなと思わすぐらい、突き抜ければいいかなって」
「もともと僕も復帰して、日本でやる気じゃなく海外を拠点としてやりたいと思ってたんで。だから、日本で万が一、入れてダメって言われたら海外でやるっていうアタマなんで」