
アンチ:[接頭]名詞に付いて、反対・対抗・排斥などの意を表す。(小学館『デジタル大辞泉』)
昨年アルバム『ANTI』を発売し、7月29日にライブ映像作品『HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL』をリリースするHYDEに、「いいアンチ」「悪いアンチ」をテーマに話を聞いた。
破壊と再生

――HYDEさんが考える「いいアンチ」を教えてください。
時代がどんどん変わっていくなかで、それまでの固定観念で年を重ねて、時代をまたいでいくと矛盾ができてくると思うんですけど。
それをぶっ壊していくのがロック。
「いや、君たちの考えはもう古いんだよ」と言って、ぶっ壊して、新しいものへと再生していく。それがやっぱり、アンチ=反抗であるべきかなと思います。
でも、文句だけ言うのはカッコ悪い。未来をちゃんと訴えるべきだと思うんですよね。
人として、モラルとして

――逆に「悪いアンチ」は?
ネットの誹謗中傷は本当によくない。匿名掲示板とか昔からあるけど、要は無法地帯だから、ああなっちゃうんですよね。
たとえば、盗っ人が当たり前の国に生まれたら、犯罪も当たり前なんですよ。ゲームみたいなもんで、そこに罪悪の感情は無い。
だからこそ、ネットにも法律や厳罰は必要だし。じゃないと、普通の人でさえ周りに影響されて悪に染まっちゃう。難しいと思うけど、そこから変えないとエスカレートするよね。
見ていて本当に耐えられない。人として、モラルとして。ニュースの書き込みとかでも、ひどいこと書いてる人、いっぱいいるじゃないですか?
汚い言葉はカッコ悪い

――ありますね。ニュースサイトのコメント欄とか。
いまこの部屋でみんな仕事してるけど、この人たちがもし家に帰ってそういうことをやってたらと思うと恐ろしい。人間性を疑っちゃう。
誰かを非難してる人がいたとして。非難されてる人も悪いのかもしれないけど、それを汚い言葉で罵っていたりすると、かなりカッコ悪いヤツだと思う。
心が荒むから普段は見ないようにしてるけど、反応を知りたいときに見ると本当に嫌な気持ちになります。
極端な話、僕は車とかで煽られても文句言わないんですよ。誰に対しても平等でありたいから。
人を選びたくない

――窓を開けて怒鳴ったりはしないと。
必要でなければ、クラクションも鳴らさないです。たとえば相手がヤクザであっても怒鳴ってやるってレベルならやりますけど。人を選びたくないんですよね。
怒鳴る相手を選ぶのってカッコ悪いと思うんです。ヤクザにはビビってできないのに、「こいつは大丈夫だな」と見計らってから怒鳴るのってカッコ悪い。
だったら、全員に同じ態度でありたいと決めてます。その方が潔いと思うんですよ。
「そんな一言、言わんでええやん」

――誰に対しても平等というHYDEさんルール、いいですね。芸能人をフルボッコにして誹謗中傷を書き散らかしている人も、たぶん道ゆく人全員に「バカ」とか「死ね」とか言ってるわけじゃないでしょうし。
ネットが意見しやすい環境なのはいいと思うんだけど、「バカ」とか「死ね」とか相手の目の前で言えないような言葉が入ってくると、論点がズレて必要以上にムカっとくるでしょ。
「そんな一言、言わんでええやん」と思う。熱くなるにも相手と向かい合って言えるか、自問してから投稿してほしいよね。
僕は名前を伏せて誹謗中傷するのは、人として本当に気持ち悪いと思う。
どうせ捕まらないと思ってるんだろうけど、今の時代はネット上での誹謗中傷も犯罪として罪に問われる可能性は大いにあるからね。
靴紐をギュッと

――最後に今後の抱負、展望をお願いします。
ウイルスで大変な時代を迎えてるけど、人生を考え直すいい期間だと思います。仕事を考え直したり、新しく何かを始めたり。
僕はコロナでライブができなくても、この1年も無駄にしたくないので曲づくりとか棚上げしていたやるべきことをやってます。
そのうち解除になった時にすぐ走れるように、靴紐をギュッと締めておきたいなと思います。
楽しみにしていてください!

〈HYDE〉 L’Arc~en~Ciel/VAMPSのボーカリストであり、ソロアーティスト
1994年のメジャーデビュー以降、数々のヒット曲を発表。ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンや国立競技場で大規模なライブを成功させるなど、ワールドワイドに活躍している。
2001年からソロ活動をスタート。2019年、ソロ名義としては13年ぶりとなるオリジナル・アルバム『ANTI』を発売。同作を掲げた全国ツアーを敢行した。
2020年7月29日(水)に、ツアー最終日の幕張メッセ公演(2019 年 12 月 8 日)を収めたライブDVD / Blu-ray『HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL』をリリースする。