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性に奔放な女性弁護士と翻弄される主夫作家のファンキーすぎる日常

妻が夫のパンツを履く理由

主夫として家事・育児に追われる日々を『おっぱいがほしい! 男の子育て日記』(新潮社)につづった、作家の樋口毅宏さん。妻で弁護士の三輪記子さんと対談し、ぶっ飛んだ夫婦生活の実情を明かした。暴走するキケンな対談の行方は…。

あれ誰?「セフレ」

――『おっぱいがほしい!』で書かれた三輪さんのキャラクターに衝撃を受けました。2人で京都の街を歩いている時に男性に遭遇して、樋口さんが三輪さんに尋ねたら「セフレ」「大丈夫、2、3回ヤッただけだから。愛はないし」とおっしゃったと。これ、盛ってますよね?

樋口:一切、盛ってないです。ふさちゃんの地元の京都に2年半ほど住んだのですが、京都って思ったより狭い世界で。ふさちゃんと肉体関係を持った男に4、5人出くわしました。もう出てくる、出てくる。

三輪:3人じゃない?

樋口:ヒモの消防士でしょ。それからトッポ・ジージョみたいなヤツ、その前にもほら、〇〇で働いているっていう…。

三輪:(さえぎって)それはバレるとマズイ。3人はそうだけど、あと2人はちゃんと付き合った人だと思うよ。合わせて5人ね。

樋口:男性の場合、奥様が横にいる時に過去に経験した女性と会ったりしたら、目を合わせないで素知らぬふりをしますよね? この人は、遠くにいるのにわざわざ手を振って、声を掛けに行くんですよ。しかも照れ笑いで。

三輪:「あ、久しぶり〜!」みたいな。そうしたら、樋口さんが「誰なの?」って。こういう会社にお勤めの方だよと言うと、「ヤッたの?」って聞いてくるから。聞かれなければ答えないですよ。

樋口:でも、聞きますよね?

三輪:いや、聞かないでしょ。

◯◯◯◯は尊称

樋口:読んでいただけばわかりますが、この本は育児日記とは名ばかりの、妻の男性遍歴暴露日記ですから。

三輪:私は別に何を言われても全然平気なのですが、男の人が同じことをやったら「武勇伝」で、女がそれをやると「ヤリマン」と蔑まれることに対するおかしさはずっと感じてますね。

私は武勇伝のつもりはまったくないし、自慢するつもりもまったくないんですけど、男女の扱いの違いは本当に納得がいかない。

ヤリマンが尊称にならないとおかしいと思ってます。ヤリマン尊称化プロジェクト、略してYSP実行中ですよ!

樋口:ふぅ。気は済んだ?

妻の元婚約者と飲みに

樋口:ちゃんと付き合った2人っていうのは初体験の相手と、大学時代の1回目の婚約者のことですね。ふさちゃんの浮気で破談になった人(※三輪さんは東大在学中に1回、卒業後に1回の婚約破棄の経験がある)。

で、最初の元婚約者の方と飲んだんですよ。東京と京都で2回。とてもお会いしたかったから。赤ん坊の一文も交えて写真を撮ったり。すっごくいい人。

三輪:本当にいい人です。

樋口:その方が交際中に「記子、お願いだから俺の友達とだけはヤラんでくれ」って、泣いてお願いしたというんですよ。

三輪:確かにそれは言われたけど。

樋口:あんないい人を泣かせるなんて俺が許せない。何が「ヤリマンは尊称」だよ。蔑称だよ、やっぱり。

三輪:そういう話を、わざわざ本人に確認するんですよ。

樋口:妻の元婚約者と飲んだという話をしたら、あの倉田真由美に「アンタたちと比べたら、私は凡人に思える」と言われましたね。

『だめんず・うぉ~か~』でさんざんダメ男を見て学習しておきながら、バツ3の叶井俊太郎と再婚したアンタに言われたくないよ!

夫のパンツを履く理由

――三輪さんは「わたし自身の浮気防止のため、最近はオットのボクサーブリーフを毎日履いてるよ」ってツイートしてましたね。ネタですか?

三輪:本当です。

樋口:今日もだよね?

三輪:私、Tバック派だったんですけど、出産後にきつくなってきて。頑張って履いてたんですけど、こんなきついの履いたらお腹痛くなるよって言われて。

樋口:肉が食い込んでヒモが見えないんですよ。

三輪:「俺のパンツ履けばいいじゃん」って言うから、履くようになったんです。そうしたら超楽だし。樋口さんはすぐ浮気を疑ってくるけど、ボクサーブリーフ履いてたら疑わなくて済むでしょ。

本のイラストを描いてくださった町山智浩さんにお会いしたら、すごく面白い方で。「町山さんなら抱かれてもいい?」って聞いたら、「ふざけんな」って言われましたけど。

樋口:当たり前でしょう。「町山さんと1回ヤッていいか?」って聞くから、「俺の目の前ならいいよ、カメラ回すけどね」って言ってやりましたよ。

町山さん、話は面白いけどセックスはどうかな。「調子悪ぃ…」とか言いそう。三又又三みたいに!

妻は大黒柱

――ご夫婦での家事・育児の分担は。

樋口:僕のいまの1番の仕事は育児で、2番目が家事、3番目が妻のサポートです。作家業はだいたい5番目か6番目ぐらいですね。

でも赤ん坊も2歳になって、随分手が掛からなくなりました。保育園に預けている間に執筆活動をしてます。

妻は本当に忙しい人で。本職の弁護士業やタレントとしてのテレビ収録で、週の半分は関西で泊まり。あきれるくらい忙しいんです。

三輪:そんなに忙しくないですよ。

樋口:僕の願いとしては、我が家の大黒柱に土日は1分でも長く寝てほしいし、ゆっくりしてほしい。僕が育児も家事もやるから。

こんなこと普段は聞かないけど…ふさちゃんは俺と出会ってから、洗濯は何回したっけ。

三輪:3回ぐらい。

樋口:僕は1000回ぐらいですね。だけど、ふさちゃんは最近、料理に目覚めたみたいで、みるみるうちに上達して。すごくおいしいんですよ。

セフレ以上恋人未満の時につくってくれたカレーは、僕の人生のワーストカレーだったんですよ。本人の前では言えないですけどね。

三輪:言ってるよ! でも簡単なものしかつくってないですよ。中華風アクアパッツァとか。野菜をたくさん入れて。煮魚つくれって言うんだけど、煮魚って砂糖を結構使うから。それでアクアパッツァにして。

樋口:いや、本当にありがたいです。僕は炒め物とかスープぐらいしかつくってあげられないので。

おっぱいにはかなわない

――育児を通じて感じたことは。

樋口:育児ってこんなに大変なんだ、と痛感しました。僕がいくらあやしても泣き止まない時も、おっぱいをあげた瞬間におとなしくなるので。そんな思いもあって『おっぱいがほしい!』というタイトルにしました。

だからといって「母親は小さい子と24時間一緒にいるべし。常に母親であるべし」みたいな考えは嫌い。間違った母性信仰だと思います。

「いくら好きな相手でもずっと一緒にいると疲れるから、自分の時間もほしい」というのは許されるのに、子育て中の母親が「ちょっと1 人の時間がほしい」というと怒られる。絶対おかしいですよ。

おっぱいをあげる時も、ずっと見つめてなきゃダメだとか。女性が少しでも育児を楽にしようとすることを許さない。そういう風潮は嫌ですね。

性欲なくなりショック

――産前、産後はかなりつらかったそうですね。

三輪:体もつらいし、頭も回らないし。いまもまだ続いてます。

樋口:ふさちゃんは、妊娠中も「食べづわり」で、20キロ太っちゃったんですよ。53キロから73キロに。

三輪:写真で岩みたいな後ろ姿を見て、ショックを受けて。体も思うように動かないし、そういうことで自尊心が損なわれるんですよ。仕事ができずに休んでいることも嫌で。

樋口:とにかくワーカホリックなので。高齢出産ということもあって、半端ないストレスがあったと思います。1年前まで口グセの1位は「つらい、しんどい」でしたから。でも、やっと減ってきたよね。

三輪:2年たって、やっと。あと私、性欲が本当に強かったので、性欲がなくなっていくのもつらかったです。生きている意味がない、ぐらいの落ち込み方ですね。

樋口:「勃たへんのや…」と言ってるオッサンと一緒じゃない!

三輪:ほぼ一緒。本当に「中年の危機」ですよ。性欲がなくなって、自分の生きている意味が見出せない、みたいな。

「裸足で外へ」脅しの意味は

――荒れている時は、「離婚する」「手首を切り落とす」といった言葉が飛び出すことも。

樋口:10回どころじゃないですね。

三輪:正直、面白いかもって思いながらやってました。ちょっとだけ。

樋口:「飛び降りてやる!」とかね。1回、ベランダに出た時に追いかけなかったんですよね。5分後ぐらいに戻ってきましたけど(笑)

つい何日か前も「いまから裸足で外を走ってきてやる!」って。

――裸足? どういう意味でしょう。

三輪:私は家でスリッパ履かないんですよ。めんどくさいから。

樋口:とにかく「めんどくさい」の人なんですよ。お願いだから、家のなかはスリッパを履いてくれと言うんですけど。

三輪:「体が冷えるから、お願いだから履いて」って言われるから、ついムカついて。「じゃあ、体を冷やしてやるよ!」って意味で。

――「私の体が冷えてもいいんだな?」みたいな。

三輪:バカじゃないですか?

樋口:お前だよ! そういうことの連続なんですよ。

クローズアップでも喜劇

樋口:いままで生きてきて、いろんな頭のおかしい人に会ってきたなあ、という自負はあったんですけど、まさか一番ヤバイ人と同じ家に住むようになるとは思いませんでしたね。

この間も休みの日に、ふさちゃんにお昼の3時まで寝てもらったんですね。15時間ぐらいかな。ゆっくり休んでほしくて。その間に僕は一文にご飯をあげて、公園に連れて行ったりして。

で、彼女が起きた時に、台所に洗い物が残っていた。それを見るなり、ボロボロ泣き出して、「もう、たけちゃんのこと愛してない!」って。台所を3週間放置したわけじゃないんです。3日でもない。3時間ですよ!

三輪:アハハハハ。

樋口:いやいや、全部実話。アンタの話よ? 歯ぐき出して笑っているけど。

三輪:すごい面白いなあと思って。続編書いてほしい。

「男根クソ野郎」と言われて

――本には「離婚する! 出てけ」と言われた樋口さんが、「妻よ、それはあなたの嫌いな、旧時代の男根主義者とどう違うのか」と問いかける場面も出てきます。

三輪:私、フェミニストの女友達にも言われたことがあって。「アンタが男だったら、男のズルイ部分を全部持ってたハズだ」って。自分でもそうかもな、とは思いますね。

――「俺は使い勝手のいい家政夫じゃない」「おまえが男だったら絶対オムツも替えたことのない、愛人を作ることに長けた政治家になっているよ」なんて記述もありますね。

三輪:いや、政治家にはなっていないと思いますよ。下半身に問題があり過ぎて、文春砲食らいまくるから(笑)

私のことを「男根クソ野郎」みたいに言うけど、その割には私、いつもいろいろやってくれて感謝してるし、料理もするし。

樋口さんは「ふさは女に生まれてきた意味があるんだよ」って言うんですよ。「男根クソ野郎が女に生まれてきたら、世の中がこういう風に見える」っていう実例。だからヤリマン尊称化運動とか言い出すんですよ。

樋口:彼女は東大法学部に現役で入ったんですけど、3回留年して、弁護士になるのにも10年ぐらいかかってるんです。もし何もかもポンポンとうまくいっていたら、嫌なヤツになってたと思うんですよ。

挫折を知って、いまの彼女がある。本業の弁護士としても、社会的弱者の方やマイノリティーの方に寄り添う人なんですよね、彼女は。そういうところは素直に偉いなあと思いますね。1人の女性、1人のヤリマンとして。

あなたの子がほしい

――三輪さんから「樋口さんの子がほしい」と言って結婚に至ったそうですが、その時の心境は。

三輪:当時、子どもがほしくなっていて。もう遊び疲れちゃって。

樋口:ヤリマンに疲れて。

三輪:そう。で、もう質が下がっていくんですよ、男の。わかります?

樋口:本当にひどかったもんね。何人か会ってるけど。

三輪:たまたまそういうタイミングで出会って、いいなと思ったんです。私がいままで会ってきた人のなかで、一番面白かった。面白いことをやろうとして面白いんじゃなくて、ナチュラルに面白いなって。

「代わりに産んで」

――面白い同士で結婚。よかったですね。

樋口:僕は面白さ求めてないですよ! 家庭のなかで、無茶ぶりの笑いなんて求めてない。家庭はステージじゃないから。平穏でいいんですよ。

最近、ふさちゃんは2人目をほしがっていて。今年42歳になるので。

三輪:ようやくちょっとやる気が出てきました。

樋口:本当に体が心配で。あんなに「しんどい、しんどい」と言ってたのに大丈夫なのかなって。

三輪:だから代わりに産んでほしいなと。

樋口:「産んでみろ」って、これもうハラスメントですよ(笑)

昔は「自分の子どもなんて要らない、生まれたらかわいそうだ」ぐらいに思ってました。ふさちゃんと出会ってなかったら、僕はいまだにバツイチ独身だったでしょうね。

でも、ふさちゃんなら、こんなに素晴らしい人だったら、ぜひ自分の子を産んでほしいと思っていまに至ってます。こんなエキセントリックな人ですけどね。2人目もぜひ。


〈ひぐち・たけひろ〉 1971年、東京生まれ。出版社勤務を経て、2009年に『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビュー。新書『タモリ論』やコラム集『さよなら小沢健二』などの著書も。最新作は長編小説『アクシデント・レポート』。

〈みわ・ふさこ〉 1976年京都生まれ。東京大学法学部、立命館大学法科大学院卒。2009年、司法試験合格。TBS「白熱ライブ ビビット」、朝日放送 「キャスト」、TOKYO MX 「モーニングCROSS」などに出演。2015年に樋口さんと結婚・出産。2017年、東京ファミリア法律事務所を開設。

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