
『香水』のヒットで、一躍注目を集めるシンガーソングライターの瑛人。
初めてつくった曲は、小学生の時にシングルマザーの母親に捧げたものだったという。
インディーズ発でYouTubeや音楽ストリーミングサービスを賑わせる、23歳のライフヒストリーをたどった。
清水翔太やTEEに憧れ
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香水 / 瑛人 (Official Music Video)
――横浜生まれ、横浜育ちですよね。
はい。
――幼いころから音楽に親しんできたのでしょうか。
歌うのが好きで。音楽が好きっていうか、カラオケが好きっていう感じでした。
――どんなアーティストの歌を歌っていたのですか?
清水翔太さん、TEEさん、平井大さん、湘南乃風とか。あとはケツメイシも。
本当に曲ごとですね。平井堅さんも好きな曲があります。
「さくらんぼ」の歌詞を書き写した
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大塚 愛 / さくらんぼ
――邦楽が中心ですか。
はい、洋楽はもう全然…。
――大塚愛さんの『さくらんぼ』を分析していたそうですが。
小1か年長ぐらいの頃、兄貴が大塚愛さんのCDを持っていたんです。それを歌いたくて、CDを流して、一時停止して歌詞を聴き取って書いて、また流して歌詞書いて…。
その歌詞を見ながら、母ちゃんの前で歌ってた記憶があります。多分、カラオケとかよくわかってなかったんでしょうね。
『さくらんぼ』以外に、YUIさんの曲とかも歌ってたかもしれないな。
離婚後の母へ捧げた曲

――オリジナルの曲をつくり始めたのは?
思い出したんですけど俺、小4ぐらいの頃に自分で1フレーズつくったことあるんです。
母ちゃんと父ちゃんが離婚した2年後、母ちゃんにつくってあげた歌があるんですよね。
――素敵ですね。どんな曲だったか覚えていますか?
メロディーも覚えていて。
《2年前はいつも一緒だったのに 今はもう違うんだ他のヤツといるよ♪》
《2年前はずっと一緒だったのに 2年前はよかったね ハッピーになれよ♪》っていうの。
「親父に彼女ができたんですよ」

――ちょ、ちょっとまってください。「他のヤツ」っていうのは?
親父に彼女ができたんですよ。離婚してからも、俺はお父ちゃん家に毎週日曜日に遊びに行ってた。
そういう情報をいっぱい知ってたので、お母ちゃんに歌ってあげたんですよね。1回遊びに行った時に彼女がいたから、それを伝えてあげようと思って。
――いやいや、別れた夫の彼女を息子から歌で知らされるお母さんの気持ち! デビュー作からして、とんでもないメッセージソングじゃないですか。
《ハッピーになれよ♪》って。うん、全部覚えてますね。
19歳で音楽学校へ
――お母さんのリアクション、どうでした?
いやー、どうだろうな。お風呂で見せた覚えがあるんですけど、笑ってた気がしますね。
――お母さんは知っていたのだろうか。
母ちゃんは知らなかったですね。だって、《ハッピーになれよ♪》のところで、めっちゃ笑ってたもん。
――小4にして才能が爆発してる。そこから作曲に目覚めたわけではないのですか?
いえ、そこからは一切、何もしてないです。19歳の時に音楽学校の「メーザー・ハウス」(現在は閉校)に入学したんですけど、それまではまったく。
ボーカルのコースとかバンドコースとかいろいろあるなかで、シンガーソングライター科に入りまして。2年制なんですけど、1年でやめました。
恩師との出会い
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桜が見える / ルンヒャン
――ある程度、学ぶべきことは学んだという感じですか。
学んだというよりも、無理だなと思って。
シンガーソングライター科では、ボイストレーニング、ギターレッスン、作曲、DTM、音楽理論とかをやるんです。
それから、アーティストのルンヒャンさんが曲づくりの手ほどきをしてくれるゼミ。
ルンヒャンさんのゼミ以外は、1、2週間で行かなくなっちゃって。週1回のゼミだけ行ってました。
1年で学校をやめた後も、ルンヒャンさんから「もったいない」と言ってもらって、ルンヒャンさんがやっている音楽塾に通い始めて。いまも一緒に曲づくりをやってます。
友人のダンサーから刺激
こんな日が来ることは分かってたけど、思った以上に早すぎて、 多分夢だよエイト って言いたいけど 夢じゃないからこいつはまじすげぇ https://t.co/Tv1XUCz202
――小4のエピソードはあったにせよ、高校生ぐらいまではほぼリスナーだったわけですよね。歌う側にまわりたい、と考えるようになった転機があったのでしょうか。
きっかけは特になくて、とにかく暇過ぎたんです。
高校卒業後1年ぐらいフリーターをして、スニーカー屋さんで働いたり、古着屋さんで働いたりしてみて。何もハマらなくて、つまらないなと。
…でも、歌が好きだし、グッとくるものは歌が多くて。
友達にKANっていうダンサーがいて、イベントをよく見に行くんですよ。ダンスイベントを見に行って、すごく刺激を受けて帰ってくるんですけど。
ステージ上で自分の気持ちを発散するのっていいな、アーティストってカッコイイなって思っちゃって。それから、シンガーソングライターになりたいって思いましたね。
「いい曲はめぐっていく」
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HIPHOPは歌えない / 瑛人 (Official Music Video)
――香水のヒットで『ミュージックステーション』に出るまでになって、影響を受けたルンヒャンさんやKANさんから何か言葉をかけてもらったりはしましたか。
ルンヒャンさんには「ありがとう」って言われました。超無名のシンガーソングライターを目指しているような人間の曲が、こういう風に広まって。
「本当にいい曲をつくれば、(世の中に)めぐっていく。みんなもそのことに気づける」というようなことを言ってくれましたね。
KANはいつも褒めてくれます。「カッコイイよ」って言ってくれますね。
絶賛制作中!
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シンガーソングライターの彼女
――『香水』以外にも『HIPHOPは歌えない』『シンガーソングライターの彼女』などの曲をYouTubeにアップされていますが、すでにかなりの曲数をつくりためているのでしょうか。
いや、全然つくりためてなくて、これからつくる感じです。絶賛制作中!
もっと聴いてくれてる人に届くように、ハッピーにできるように、いろんな曲をつくっていきたいと思っております。

〈瑛人 えいと〉 1997 年 6 月 3 日、横浜生まれ。男 3 人兄弟の末っ子として、野球に明け暮れる少年時代を過ごす。高校卒業後、ダンスで自己表現する友人の姿に刺激を受け、シンガーソングライターを志して音楽学校に入学。19歳から曲を書き始め、2019 年 4 月、21歳で初めての楽曲『香水』EPを配信リリース。翌2020年春、SNSに投稿された様々な『香水』のカバー動画から人気に火がつき、オリコン、Billboard JAPAN、LINE MUSIC、Spotifyなど各種音楽チャートで1位を獲得。サブスクリプションサービスの総再生回数は1億回、YouTubeの再生数は8000万回を超える。