
子育ての“理想と現実”のギャップを描いた漫画が、「ホントこれ!」「わかりすぎてヤバイ」とSNSで共感を呼んでいます。
作者の「ゆーぱぱ」さんは、Web系企業に務める20代の会社員です。
同じく会社員の妻と共働きしながら、7歳の長女「ゆあ」ちゃん、3歳の次女「つむ」ちゃんとのドタバタな日常を、イラストや漫画に綴っています。
ゆーぱぱさんは「子どもを通しての学びや感動がたくさんあり、人生の幅がグッと拡張された」といいます。
在宅勤務のかたわら、育児漫画をSNSに投稿しているゆーぱぱさん。なかでも大きな反響があったのが、「お風呂の理想と現実」と題した2枚のイラストです。
「理想」編には、「ちょうどいい温かさ」「ほのかにいい香り」「広々とした浴槽」「平和」「10秒数えたら出ようね」といった言葉とともに、気持ちよさそうな表情のゆーぱぱさんと、ゆあちゃん、つむちゃんが描かれています。
ところが、「現実」編で実態は一変。「ぬるま湯」「天井からしたたる水」「おもちゃ入れすぎ」「弄ばれしボディソープ」などなど、不穏なワードの数々が並びます。
蛇口の主導権争いをめぐって、子どもたちの間でいざこざまで勃発。ゆーぱぱさんはぐったりした表情で白目をむいています。お湯が「何故か濁ってる」ってどういうこと!? 怖すぎるよ!
地獄のような光景ですが、これこそが子育て家庭のリアル。投稿には「おそろしいですwww」「めちゃくちゃわかります…」といった感想が寄せられています。
この「理想と現実」シリーズには、公園や買い物、寝かしつけなど様々なシチュエーションがあり、どれも「あるある!」とうなずきたくなるものばかり。
BuzzFeedは、ゆーぱぱさんに執筆の経緯や男性育休への思いなどを聞きました。
いいネタみっけ!の発想で
――子育て漫画をSNSに投稿し始めた理由は?
漫画を投稿する前から、毎日100円ノートに日記をつける習慣があり、これに絵をつけたらより記憶として残るんじゃないかと。それからずっと「日記」として漫画の執筆をしています。
また子育ての中で、ついテンションが下がってしまうような瞬間(ジュースやお菓子をこぼす、「パパ嫌い」って言われた時など)も負の感情を抱くのではなく「いいネタみっけ!」と思えたら、自分にとっても子にとっても良いかなと思って描いてます。
――「理想と現実」シリーズ、あるある過ぎて最高でした。思いついたきっかけを教えてください。
買い物や公園、お風呂など、子どもとの生活は、自分の「理想」通りにいかないことが多いと感じていました。
まさにイレギュラーの連続で、常に何かしら眉をひそめたくなるような出来事が起こる――。
その中でふと、そもそも自分の「理想」の展開ってなんだろう?と思い立ち、具体的な「理想」を書き出したところ、浮き彫りになった現実とのギャップがとても面白く、それをそのまま漫画にしました。
「現実」さえも、いつかは「理想」に?
――「理想と現実」にはどんな反響が寄せられていますか。
大変ありがたいことに共感の声を多くいただいておりますが、特に印象に残っているのは、現在「親」世代でない方々からのメッセージです。
たとえば「子」の立場の方が自身の過去を振り返り、親御さんに対して感謝の念を抱かれていたり。
また「親」のさらに「親」、育児を終えた世代の方々からは自身の過去の育児を懐かしむ声や、「現実の方でも、今となっては理想だ」とズシンとくるようなメッセージをいただいています。
見る人の環境や立場によって、見え方がまったく異なるんだなと実感しました。
――育児の「現実」は時に過酷ですが、それでも楽しいと思える瞬間は?
まさに「現実」のような状況に陥った時、瞬間的に負の感情が湧いてしまったりすることはありますが、冷静に見てみると、子どもたちの興味やこだわり、言動や行動には、子どもたちなりの意思や目的が潜んでいます。
可愛らしいなと思うのと、単なる悪戯に見えても大人以上に深い思考や発想が見えることもあり、むしろ感心することも結構あります。
最近は、本屋さんで絵本を選んでいる時に、3歳の次女がすでに持っている絵本をほしがり、困惑したのですが……
深く耳を傾けてみたところ「本棚からとったら、そこにあったはずの本が消えてしまうのが寂しかった」ようで、感心してしまったと同時に、なんだか哲学みを感じて面白かったです。
「ワークインライフ」へ
――ゆーぱぱさんは育児休業を取得したことはありますか。
ありません。ですが漫画制作の延長で、縁あって育児休業を取得された方々の経験をお伺いする機会をいただきまして。
その際に感じたのが、どの方も共通して家庭環境が良くなり、復帰後仕事の成果も出て、全体的に生活が豊かになっているな、ということでした。
しかし反面、取得時に会社の理解を得るために苦労された方が多いようでした。
「ワークライフバランス」から「ワークインライフ」に変わりつつあり、社会全体で個人の「ライフ」を尊重する風向きも感じておりますが、育休についてはもっともっと浸透していってほしいなと思っています。
――男性の育休取得率は増えてきてはいるものの、まだ12.65%にとどまります。男性が育休をとりやすくしていくために、何が必要だと思いますか。
育休取得の声をあげる人が増えればいいんじゃないかと思います。育休を取得された方の経験談の中で「自分が育休を取得したら、社内で育休を取る人が増えた」というお話がありました。
会社という小さい組織の中でも、勇気を持って風穴をあける人が増えれば増えるほど、世の中全体で育休取得しやすい空気がつくれるかなと、個人的には思っています。
ちょっと視点を変えるだけで…
――最後に子育て中のパパや、これからパパになる人たちへメッセージをお願いします。
漫画をSNSに投稿するようになってから、「育児」にアンテナを張っているということもあり、漫画を始める前とは比べ物にならないくらいの膨大な情報に触れてきました。
僕自身も当事者となりながら、本やメディアを通して得た情報を実践したり吟味しながら過ごしていますが、その中で一番の気づきは、子どもとの日々はとにかく楽しいということです。
子どもを通しての学びや感動がたくさんあり、人生の幅がグッと拡張された感覚があります。時に疲れたりイライラしてしまうこともありますが、ちょっと視点を変えるだけでこんなにも豊かな時間になるのだと気がつきました。
いま育児をしている人たちとも、これからパパになる人たちとも、こんな風にみんなで情報を共有しあって、お互いに子どもとの時間を豊かにしていけたらいいなと思っています。
