ヒール靴を履かなかったので……無給のまま家に帰された女性

    規則を変えようと、オンライン嘆願を始めた

    派遣先の企業で就業中にヒール靴を履いていなかったため、帰宅を命じられたイギリスの受付係の女性。先週9日から、業務中の服装の性差別をなくそうと、オンラインの署名活動を始めた。17日現在、13万人以上の人が署名している。

    この女性は、ロンドンに住む、27歳のニコラ・ソープ。女性は就業中にフラット靴を履く権利があってよいはずだと話している。

    ソープは昨年12月、ロンドンのプライスウォーターハウス・クーパーズ(PwC)に受付係として派遣された。しかし、到着後「2から4センチのヒールのある靴」を履くように言われた。ソープがヒール靴の購入を拒否すると、給与の支払いのないまま、帰宅するように言われた。同じようなことを男性にも求めるのか、と聞くと笑われたという。

    この一件の後、ソープは労働相談窓口に連絡を入れると、「企業が雇用者にドレスコードを適用するのは合法」と回答された。ソープは「このような法律は時代遅れで、性差別だ」とFacebookに書き込んでいる。

    PwC側は、ソープが帰宅することになったのは、外部請負会社側の規則のせいであって、PwCにはスタッフがヒール靴を履かなくてはいけないというルールはない、と話している。

    PwCの広報担当者は「受付係は外部請負会社からの派遣スタッフです。問題が起きてから5ヶ月後の5月10日に、この問題を知りました。報道されているドレスコードの規則は、PwCの規則ではありません。請負会社側とは規則について、話をしていません」

    ソープはBBC Londonに、企業がドレスコードを定めることは理解できるが、ハイヒールを履かなくてはいけないルールはいらないはずだと話している。

    「ドレスコードは社会状況を反映するべきです。今の時代、女性たちはフラットな靴を履いていても、フォーマルで知的な装いが可能だと思います。足が本当に疲れるのとは別に、性差別でもあると思っています。企業は女性従業員に強要するべきではないと思います」

    英内務省・平等人権委員会のレベッカ・ヒルゼンラスは「男性雇用者に対しても説得力のあるルールが適用されない限り、2センチのヒールを履かなくてはいけないルールは違法のものになります。必要な対策を取るつもりです」と話している。

    派遣会社はその後、女性が特定の就業環境ではヒールを履かなくてはいけないという規則を変更した。

    ポーティコの広報担当者は「ポーティコは、フラットな靴でもいいというガイドラインを施行したことを発表しました。PwCには、男性でも女性でも靴の種類を強制する規則はありません。以前からフラットな靴で問題ありませんでした」と話した。

    イギリスのほか、カナダでも、就業中に定められている性差別的なドレスコードについては議論になっている。カナダでは、レストランチェーンが規定していたドレスコードがメディアで取り上げられた後、地元自治体の人権委員会から「女性やトランスジェンダーの従業員を差別するドレスコードは撤廃するべきだ」という発表が出された。それでもまだ、ヒール靴を履くように言われる、という訴えが続いている。

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