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「生活の全てを支配されました」摂食障害に苦しんだ大学生が伝えたいこと

「ひとりで摂食障害に苦しむ中高生を救いたい」。多くの相談を受けてきた大学生が、当事者同士で交流できる場を作ろうとしている。

必要な量の食事を食べられない、コントロールできずに食べ過ぎてしまう、飲み込んだ食事を意図的に吐いてしまう…。

食事に関連した異常とも言える行動が続き、心と体の両方に影響が及んでしまう「摂食障害」。

厚生労働省によると、1年間に21万人が摂食障害のために医療機関を受診し、その多くが10代、20代の女性だという。

社会生活に深刻な影響を及ぼすだけでなく、やせ、栄養障害、嘔吐などによる体の合併症をきたし、死に至ることもある。誰でも発症する可能性がある病気だが、理解や支援体制は十分ではない。

そこで「ひとりで摂食障害に苦しむ中高生を救いたい」と、自らも病気に苦しんだ大学生が、当事者同士で交流できる場を作ろうと奮闘している。

人に寄り添う、をキーワードに相談活動をしてきた

臨床心理士の資格取得を目指し大学に通う園田珠々さん(20歳)は、Instagramを中心に「寄り添い屋」として摂食障害経験者たちの話を聞いてきた。

「Instagramでライブを開き、生きづらさを抱える人と交流を重ねてきました」

この1年間でおよそ200人から連絡があった。その6割ほどが中高生だったという。

「食べられない、食べ過ぎてしまうなど自分で食事をコントロールできないお悩みをよく聞きました。

また、それを周りに相談できない、話しても分かってもらえない、今後どうしていけばいいですかと尋ねられることや、死にたい、生きてる価値がないと自分を追い詰める声も聞きました」

摂食障害になったとき、肯定してくれた恩師

園田さん自身、摂食障害に苦しんだ経験を持つ。

軽いダイエットの気持ちで始めた食事制限が止められなくなり、糖質、脂質、カロリーを厳しく制限していった。カロリーを消費しなければ、と運動も欠かせなかった。

高校2年生の時には拒食症と診断された。その後、過食症やうつ病にも苦しんだという。

「痩せるためのマイルールに生活の全てを支配されました。身体的にも精神的にもしんどかったです」

「病気のこともよくわからず、誰にも頼れず、自分自身を責めることしかできませんでした」

そうやって苦しんだ園田さんが、当事者たちの話を聞こうと舵を切る原点となった出来事があった。

「私が存在するだけで価値があると言ってくださった恩師がいました。ありのままの自分でいるだけで、生きているだけで素晴らしいと思えるようになり、少しずつ自分の存在を肯定できました」

「私が回復する時に不可欠だった、安心を感じられる場所、居場所を作りたいと思いました」

摂食障害に苦しむ中高生たちが、安心できる場所を

「摂食障害は重大な精神疾患であるにもかかわらず、社会の理解や支援体制は十分とは言えません。私自身、学生の身だったので自分の意思で支援を受けるにも限界があり、一人で苦しむこともありました」

自ら助けを求められずに苦しむ中高生たちと出会ってきた。園田さんも同じように1人で辛いと感じる時期もあったが、そばにいて寄り添ってくれる恩師と出会い、希望が見えた。

中高生たちが自分らしく生きていく手伝いをしたい。園田さんはそう考え、誰もが安心して交流できる居場所作りを目指し始めた。

「私は精神疾患になった当初、まさか自分がと思うと同時に、今まで思い描いてきた道を歩んだ私にとって、人生最大の汚点だと思い、深く絶望しました。

しかし、心の病は誰もがいつなってもおかしくない身近な存在で、それは決してかっこ悪いことではないです。

私は回復途中で不安がありましたが、より生きやすい社会作りがしたい、これ以上苦しむ学生を増やしたくない、という思いがあり、行動に至りました」

園田さんはこのほどクラウドファンディングで支援を募り始めた。

カフェのような居心地がいいオフラインの場を当事者たちに提供したいと意気込む。Zoomを活用した専門家による講演会なども計画している。

専門家による監修を検討するといい、「生きていることが辛くて苦しい人が安心を感じて、また明日からも生きるエネルギーが得られる場所を作りたいと思っています」と夢を膨らませる。

園田さんのクラウドファンディングは、8月20日まで。