ネクタイの裏から糸が出ていたら……? 「職人からのお願い」が話題です。
しゃく。さん(@shakunone)が「絶対に切っちゃダメ」と、ネクタイにまつわる知識をTwitterに投稿したところ、4万8千回リツイートされ、12万6千回を超える「いいね」が集まりました。
リプライ欄には「初めて知りました!」「このツイート見るまで切ってました」「ココの糸…いつもなんやろ?って引っ張ってました」と反響が寄せられています。
ネクタイの糸ってなんのこと…? と思う人に届け〜!
投稿された写真のネクタイの裏側には、ちょっと不自然に飛び出た輪っか状の糸が。
ツイートには、こう言葉が添えられていました。
「絶対に切っちゃダメ。ネクタイからこんな糸が出てても、無茶に引っぱったり切ったりしないでください」
「3月~4月は特に、"はじめてネクタイを結ぶ人"が増えます。以前もツイートしましたが、まだまだ知らない人も多くいらっしゃるのが現状です」
「絶対に知っておいてほしい。職人からのお願いです」
写真を拡大してみると、大切に使用するための注意書きが。
ネクタイを大切に使用していただくためにお読みください。ネクタイの大剣、小剣の裏面には図のような糸の輪っかがあります。
これは"スリップステッチ"といい、ネクタイを結んだり解いたりする時の伸縮を補助するための余裕糸です。
この糸はメンテナンスの際にも重要な役割を果たします。
ネクタイの中心部分に緩みが生じた場合はスリップステッチを少し引っ張ると解消されます。
ネクタイはこの糸で縫われているのでこれを切るとネクタイがバラけてしまいます。
ネクタイの生命線にもなっている糸なので絶対に切らないでください。
ネクタイの裏から不自然な糸が出ていても、もう絶対に触れないぞ……。生命線は大事にせねば。
BuzzFeedは投稿者のしゃく。こと、笏本達宏さんに話を聞きました。
どのネクタイにもスリップステッチは存在する?
では、すべてのネクタイにもスリップステッチは存在しているということなのでしょうか。
笏本さんは、「いわゆる簡易的なネクタイにないこともあります」と話し、構造について詳しく教えてくれました。
「価格にもよりますが、しっかりと基本に忠実に作られたネクタイにはスリップステッチがあります」
結んだり解いたりする前提で作られているネクタイの構造上、伸縮性が重要とされているのだそう。ただ、息を潜めている場合も。
「スリップステッチはその伸縮を補助し、スルスルと中で動いてネクタイの破損を防いでいます。普段は表に出てくるようなものではありませんが、大きくめくると糸が見えます」
「中に入り込んで見えなくなってしまっていることもありますが、その場合でも伸縮を補助する役割はしっかりと果たしてくれています」
いらない糸と間違えて切ってしまったときには。
ネクタイの寿命は使用頻度や商品の素材、仕立てにもよるそうですが「通常であれば3~5年程度」だといいます。
「スリップステッチもネクタイの寿命の判断基準にはなりますが、基本は生地の擦れ、キズなどで寿命を迎えるものが多いです」
それでは、「大切なネクタイながら、誤って糸を切ってしまった」という場合にはどのように対処すればいいのでしょうか。
「基本的にはこの糸(スリップステッチ)はネクタイの生命線です。切らないことが絶対条件と言っても良いですが、万が一切ってしまったら、ギリギリの所で結んでください」
「ほつれ始めてしまった場合は、できるだけ早い段階で糸を玉結びしてほつれの防止にしてください」
「大切な人からのプレゼントや、お気に入りのネクタイをどうしても復旧させたい場合は、私たちプロの職人にご相談をいただくことがおすすめします」
やはり最後はプロの手……! 今後の参考にさせていただきます。
SNSの力を信じて。
最後に、多くの人から寄せられた反響を受け、こう話しています。
「ぼくたち職人は、普段はあまり表舞台に立つことがありません。それでも、SNSなどを通して伝えられることがあると信じて、毎日発信している次第です」
「まだまだ知られていない職人のこだわりや、想いがこうして反響をいただけるという事は、自分たちの励みになりますし、嬉しいことです」