「今度、帝王切開は我慢強くない子になるっていわれたら、 母が私を命がけで産んだときのことを書いた手紙を読んでもらおうと思う」
HITOMI(@HITOMI79856761)さんがTwitterで、小学生のときにお母さんからもらったお手紙を紹介したところ、3千回以上リツイートされ、2万4千回を超える「いいね」が集まりました。
リプライ欄では「久しぶりにツイート読んで泣きました」「誰になんといわれようとお腹の傷は私の誇りだ!」「様々な背景があることを知っていれば考えは変わるよね」など、お手紙に記されているお母さんの思いや、温かい言葉に落涙した人たちからのコメントが寄せられました。
※紹介するお手紙では、個人情報の特定を防ぐ目的で、白く塗りつぶされてる箇所があります。
ひとみへ
最近背も随分高くなって、あと少しでお母さんを追い越してしまいそうだね。
時々、口のきき方が乱暴になったりして、けんかもするけれど、ひとみなりに成長してきた証拠だと、お母さんはいつも思っています。
(そう思っているのだけれど、 なかなかうまく言ってあげられなくてごめんね。)今回、先生方が良い機会を作ってくださったのでひとみの産まれた時の事を話します。
今まででも 一緒におふろに入りながら、話してあげたこともあるのでおおよその事はわかっていると思います。ひとみがお母さんのおなかに宿ったことがわかってから、ずっと順調で近くの病院にかかっていました。
マタニティ体操やマタニティスイミングをしたりしながら、ひとみが産まれてくるのをずっと楽しみに待っていました。もちろん、お父さんも、おじいちゃん、おばあちゃん達もそうです。
ところが8ヶ月になったはかりの○月○日の早朝お母さんは突然おなかが痛くなり、大出血をして
すぐ病院に行きました。病院の先生は、はじめ、"出血多量なので輸血をしながらお産をして赤ちゃんだけ、病院へ送ります”と言っていました。
○○病院には、小さく産まれた赤ちゃんのための設備、"新生児未熟児センター”があるからです。
ところが、血液センターに連絡したところ、1時間後でないと、名古屋から、血液を届けられないとのことでした。
血液が間に合わないので、お母さんは、救急車で○○病院へ運ばれることになりました。
○○病院に着いたのは、まだ病院の朝の診察開始前でした。
大勢の先生や看護婦さんが、大急ぎでお母さんを診察して、手術の準備をしてくれているのをうっすらと覚えています。先生に”おなかの赤ちゃんが弱ってきているので、すぐに手術をして、赤ちゃんを助けます”と言われました。
帝王切開です。こうして先生にとり上げられた赤ちゃんが、ひとみ……。あなたです。
○月○日午前9時40分、仮死状態でした。
手術室の中では、小児科の先生が、すぐ側に
待機していて、小さなあなたを、手でかかえて、手術室から階下の未熟児センターの保育器へ運んでくれました。
身長40cm、体重1898g。小さな、小さな赤ちゃんでした。
本当に多くの人達に、お母さんとひとみは、助けてもらったのです。
後でわかった事ですが、お母さんは、"前置胎盤”といって、胎盤の位置が悪かったのだそうです。もしあの時、血液が間に合っていたら、 輸血をしながら近くの病院で産んでいたら……お母さんもあなたも生きていなかったかもしれません。
もし仮に生きていたとしても、重い障害が残っていたかもしれません。
ひとみ、あなたは本当に運の強い子だと思いました。
仮死未熟児として産まれてから、その後、約1年半、心臓、脳、目などのいろいろな検査をして、異常がないか調べてもらいました。
多くの先生方に御世話になりました。 そして、本当にうれしいことにどこにも異常がなく元気一杯に育ちました。
それが今のあなたです。
ひとみ、これだけは忘れないでほしい。
あなたは本当にまわりの多くの人達に助けられたのだということを。
お母さんも、あなたも、これからも、感謝の気持ちを忘れないようにしようね。小学校生活も、もうすぐ終わり、いよいよ中学生だね。
これからもいろいろな事があると思うけれど、ひとみのまわりにはやさしい友達、先生、そしてあなたの事をとても大切に思っている家族がいることを忘れないで……
頑張ってね。いつも応援しています。
お母さんより
BuzzFeedは投稿者に話を聞きました。
「母が私を緊急帝王切開で生んだように、まさか私自身も娘を緊急帝王切開で出産するとは思いませんでした。壮絶なお産でしたが娘と無事に生きて会えたことは、奇跡だと思いました」
そう話すのは、愛知県名古屋市在住の松田ひとみさんです。
松田さんは2021年4月に第一子を緊急帝王切開で出産し、母になりました。
実はその出産前、妊娠6カ月での後期流産(死産)を経験しているといい、「人生で最も悲しくて、悔しい経験でした」と振り返ります。
「また今回も同じことを経験してしまったらどうしよう……と不安で不安で仕方なく、毎日、祈るように過ごしていました」
そしてお産の日。陣痛が来てからしばらくは、順調に進んでいました。
しかし、途中でお腹の中で赤ちゃんが横向きのまま止まってしまう「回旋異常」により、赤ちゃんの命が危険な状態に。そこで自然分娩から帝王切開へと切り替わり、無事に赤ちゃんと会うことができました。
自身の出産時、病院に持参するほどお守りにしていた、大切な手紙をもらったとき、どんな感想を持ったのでしょうか?
「母も含めて、家族が自分が産まれるのを心待ちにしてくれていたこと。母から命がけで産んでもらえたこと、産まれる時に、たくさんのお医者さまに助けてもらえたこと。そして産まれてからも、たくさんの方にサポートしていただいたことを知りました」
「子どもながらにすごく嬉しく、誇らしい気持ちになったのを覚えています」
投稿は、帝王切開への無理解がきっかけ。
妊娠中、コロナ禍のため、妊婦さんや先輩お母さんと直接交流することがなかなかできず、情報交換に活用したのはTwitterでした。
「そのなかで、帝王切開で出産したお母さんが『帝王切開への偏見で苦しんでいる』というツイートを見ました」
「私自身も実際に『最後の最後に帝王切開になっちゃったの!残念だったね……』『帝王切開だと赤ちゃんが産道を通らないから我慢強くない子に育つって言われてるのよー』『惜しかったねー!』と言われて本当にびっくりしていました」
そんな経験もあり、ずっと宝物にしてきたお手紙を共有したいと思い、Twitterに投稿したのだといいます。
投稿すると、松田さんの想像以上に反響がありました。
帝王切開の経験者やその家族、流産や死産を経験した人など、様々な人からメッセージが届きました。
「お母さまが帝王切開でご兄弟を出産する際に、亡くなられてしまったという娘さんからもご連絡いただき、『母もひとみさんのお母さんのような気持ち、そしてひとみさんの今の気持ちと同じ想いでいたんだと、心が少し救われました』とおっしゃっていただきました」
「どんな出産も命がけで、出産の数だけ奇跡のようなエピソードがあり、どんな方法で生まれたとしても、無事に母子が会える事以上に大切なことはないと思います。私自身も前回の死産、そして今回の出産を経験して実感しています」