「涙が止まりません」大変だったのは先生も同じ。反響を呼んだ漫画、オンライン授業の苦悩の日々

    デジタルハリウッド大学でキャリアデザインを担当している先生。今年1年間、PCを開くのも嫌になるくらいの苦労がありました。24枚の漫画に綴っています。

    今年度、苦しい思いをしていたのは、学生だけではなかったのです。

    新型コロナウイルスによって、ほとんどの大学がオンライン授業への変更を余儀なくされました。

    Twitterに「アナログスタイルをつらぬいていた教員がオンライン授業をする話」と題された、24枚の漫画が投稿されています。

    モデルは、東京都のデジタルハリウッド大学で教鞭を執る非常勤講師です。彼女の実体験を元に、生徒が漫画を描きました。

    物語は、先生の自己紹介から始まりますーー。

    私はデジタルハリウッド大学で、キャリアデザインの授業を担当している。

    天野ハナさんのTwitterより / Via Twitter: @uekibachinohana

    リアルこそすべて。よって、もともとは対面でアナログ式の授業をしていた。

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    昨年の3月、毎年恒例だったアジア研修旅行は新型コロナウイルスの影響で中止に。

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    新年度の授業開始も延期になったけれども。「ゴールデンウィーク明けたら授業に行く」そう思っていた。

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    4月になると大学から、前期の授業をすべてオンラインにすると連絡が。

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    授業が開始されるまで、とりあえずzoomを使って、練習をしてみた。

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    5月になって、教員の間で後期から対面授業に戻すという情報が。しかしーー。

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    アナログツールを駆使して、こなしていた授業だったからこそ、困り果ててしまった。

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    そして初めてのオンライン授業では……?

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    慣れないことばかりで、パニックを起こしてしまった。

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    2回目の授業でも、ブレイクアウトルームの壁に。

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    想定外の苦しみを背負い、このまま鬱になるのかも。そう思ったとき、転機が。

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    対面授業で実施するために時期をずらしていた、「プレゼンテーション」という授業に救われた。

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    家で配信するのではなく、学校に行って誰かにサポートしてもらう。前なら当たり前のことが、前を向くきっかけとなった。

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    8月になって、集中講座が始まった。事務局の提案でハイブリッド授業ができるのか、実験してみた。

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    9月になって、ハイブリッド授業本番。工夫を凝らしてみたけれども、またもや問題発生。

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    同時並行でワークができず、思ったとおりにはなかなかできないのだった。

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    ※TAとはティーチャーアシスタントと呼ばれている、授業補佐のこと。授業が円滑に進むよう、先生の補助をしています。

    2020年度に入学した一年生は、オンラインの授業しか知らない。

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    授業の途中で出席を取ると、めんどくさいコメントが自分のもとに直接飛んできた。

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    ※デジタルハリウッド大学は出席率が70%を切ると、成績がつかないため、『出席率』が重要なのです。例えば、全8回の授業だと休めるのは、2回までです。

    対面の授業を知らない生徒は、なんでもかんでも言ってきた。

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    オンライン授業を通して、感銘を受けたこともあった。

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    デジタルネイティブな生徒によって、気分はアーティスト。

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    ハイブリッド授業に挑戦して感じたことは……?

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    できるだけリアルに近い形を追い求めているのは自分だけ。

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    BuzzFeedは物語のモデルとなった、先生漫画の作者に話を聞きました。

    様々な大学でキャリア形成科目の授業を担当している尾方僚先生。

    写真やイラストは、文字以上に情報量があると感じ、自身の体験を漫画にすることにしたそうです。

    「自分が描けたらいいのですが、『絵心』が全くないのです。そんな中、学生から紹介されたハナちゃんに相談したところ、『漫画の方がいいと思います』と言ってくれました」

    漫画を描いたのは、デジタルハリウッド大学在学中の天野ハナさんで、こう振り返ります。

    「私は普段漫画を描かないので、難しいことだらけでした。なので、コマ割りや、どのように文字を配置したら読みやすいのかを考えながら描きました」

    「一番大変だったのは、先生のお話を漫画用に脚本化することでした。漫画にする内容をZoomで1時間ほど先生にお話していただいたのですが、その録画を見返しながら文字起こしをして、そこから脚本にできるように内容を整理。どのように展開していくか考えました」

    尾方先生が「すべてのコミュニケーション自体はアナログ」だと感じていた背景には、こんな理由がありました。

    「面接がなく、入社できる会社はありません。実際のビジネスの場でも、大切な商談は直接会って話をします。そんな環境化において、どんなに技術力があっても自分をアピールできる手段を持っていないと売り込めない、という思いがありました」

    これはデジタルハリウッド大学の学生だけではなく、昨年まで授業を受け持っていた理系の大学に通う学生たちにも常に言っていたことなんだとか。

    そのうえで、とりわけ文系大学の学生には「デジタルリテラシーをしっかりと磨かないと、技術力のある学生と差が出るよ」と伝えていたといいます。

    「ゲーム会社の求人情報を見ても、現場の人たちとうまくできるコミュニュケーション力が必要と書いてあります。今年1年で様変わりしたように感じるものの、やはり就活の最終面接は対面を希望している会社がほとんどです」

    実体験を漫画にしたのには、こんな狙いもありました。

    「もちろん学生も、いきなりオンラインで大変だったのはよくわかります。けれども先生たちも大変だった、ということをわかってもらいたかったのです」

    「苦労話」を浪花節的に語っても暗くなってしまうだけーー。

    そう思い、いち個人の愚痴を聞きたいのだろうかと立ち止まりもしました。でも、漫画にして、笑い話のようにコミカルなタッチで描くことを決めました。

    「授業から先生が消える『Zoom落ち』なんて大事(おおごと)すぎると思い、落ち込んでいたこともありました。そんな時、学生から『他の授業でも、結構あることです』と聞いて『私だけじゃないのか』と安心しました」

    「他の先生と情報交換した際に『生徒のいないZoomでずーっと待っていたこと、ありますよ』と聞き、お互いに『それはかなり焦りましたよね』と笑い合いました。その時にどれだけ心拍数上がったのかなど、互いにわかった上で笑い合ったんです」

    「世の中では『学生が可哀想……』『大学の授業の質が……』など、たくさん異議が叫ばれています。中でも教員たちは自分たちの授業の質を下げないように、またどうやったら学生に理解してもらえるのか、試行錯誤を繰り返して、本当に苦労していたのです」

    最も辛かったのは、1人で淡々と準備や片付けをすることだったと振り返ります。

    「学生も同じだと思いますが、授業が終わったあとに誰とも話さずレポートを読んで、次の授業の準備をします。この循環が一番辛かったです。よく1人で反省会もしました」

    対面の授業であれば、教室に学生が残って話をしたり、学校の帰りにどこかに寄って帰ったりという気持ちの切り替えができていました。

    しかし、オンライン授業が始まると、ずっと自宅にいて、授業が終ればシーンと無音の画面が目の前に残されました。

    「私はデジタルツールをほとんど用意していなかったので、それこそパワポを作り込み、やることがたくさんありました。PCを見たくないと思った日もあります」

    オンライン授業が続くにつれ、対面授業が再開してほしいと望む学生も多いだろうと感じたそうです。

    ところが、「対面とオンラインのどちらの授業を希望するか」とアンケートした際に多かったのは「オンライン」と回答する学生でした。

    「実際には密を避けるために、1クラス36名までグループの計算で、6人グループ×6チームを対面で隔週にしていました。しかし、オンライン参加したい場合は届け出れば学校に来なくてもよい、ということにしたので6人揃うのは稀でした」

    デジタルハリウッド大学では、来年度もオンライン授業を中心に授業をすると発表しています。尾方先生の挑戦は、来年も続きます。

    「来年度もハイブリッド型の授業をやる予定です。もう少しアナログ的な要素をデジタルにしてみる工夫をしてみようかな、と思っています」

    オンラインはオンラインのツールを用い、リアルは本物の付箋を使うなどし、どちらも充実した内容にしたいといいます。

    「『知識を行動に経験を力に』、と学生には言っています。私もそれを今年も実践していこうと思っています。Zoomの使い方も慣れてきたので、Zoom+Live配信など手を広げていけたらと思います」

    最後に漫画を読んだ人へ。メッセージをこのように送ります。

    「あー、あるある、とかそうだったんだ、と思ってもらえたら幸いです。そして大学関係者及び、教育界に関わる全ての皆様。今年1年お疲れ様でした」

    「皆様にとっても試行錯誤しながらの挑戦という、試練が課せられた日々だったと思います。より良い方法を、と模索している日々はまだまだ続いています。しかし、悪いことばかりではなく、私たちは新たなオンラインというツールを得たということでもあるかと思います」

    実は、この漫画を最初に公開したのはFacebookのグループでした。全国の先生たちが集う2万人規模のコミュニティでした。

    漫画を投稿すると関係者から、「笑いながら泣きながら読みました」「涙が止まりません」「私も同じ状況でした」とたくさんの反応が。

    「グループでも連日のように、工夫した話が飛び交っていました」と当時の様子を教えてくれました。

    「今思うと地図のないところにいきなり放り出された冒険の旅だったようにも思えます。挫けず一緒に冒険していければと思います。オアシスを見つけたら教えてください(笑)」