テレビ東京で先日まで放送されていた深夜番組『SIX HACK』が、全6回のはずがわずか3回で放送休止となり、視聴者から困惑する声があがっています。
ネット上では「攻めすぎ」といった声のほか、「テレビでこんなことしていいんだ」「これを許したテレ東がすげーよ」といったコメントも。一体どういう番組で、なぜわずか3回で放送休止になってしまったのか……?
「意識高い系」をこじらせたようなライフハック番組
『SIX HACK』は、テレビ東京で水曜日の深夜25時(木曜午前1時)から放送されていた全6回(予定)のテレビ番組。
「あなたが偉くなるための番組」と銘打ち、俳優のユースケ・サンタマリアさん、松村沙友理さんをはじめとする出演陣が「会議で勝つ方法」「SNSで勝つ方法」といったさまざまなライフハックを紹介するという内容です。
しかし実際に紹介されたライフハックを見てみると、
「相手の発言を、個人の意見にすぎないと断定し、会議で優位に立つ」
「わざとSNSを炎上させることで、フォロワーを増やす。その際の“良い”炎上のさせ方」
など、なんだかいわゆる“意識高い系”を悪い方にこじらせたようなものばかり……。
極めつきとして、ディレクターが陰謀論に傾倒してしまっているようで、回を重ねるごとに番組はどんどん不穏な方向に転がっていきます。
例えば、「旧態依然とした邪悪な既得権益層“No eyes”に私たちは支配されている」といった思想を展開したり、スタジオの俳優陣全員で鼻に目薬のようなものを突き刺し「これから真=神に至ります」と瞑想を始めたり……。いったい何を見せられているんだ。
そして4週目になって、事態はさらに予想外の方向へと転がります。
放送開始4時間前に公式Twitterで「今夜の放送は休止します」と告知され、その日の放送は休止に。
さらに翌日には過去の番組アーカイブまで非公開化されてしまい、ネット上では「過激すぎる内容や、ディレクターの思想が上層部に怒られたのではないか」など心配する声もあがっていました。
なぜ放送休止になったのか、自ら検証動画を公開
それから1週間後の6月16日、今度は『SIX HACK 検証』と題した動画がネット限定で公開されました。
約38分にわたる映像では、「なぜ極めて偏った思想の番組が放送されてしまったのか」「なぜ誰も止めることができなかったのか」の2点について、インタビューと再現ドラマを通じて説明。
やがて検証を進めていくうちに、思わず耳を疑うようなとんでもない証言が次々と出てくるのですが……ここでは詳細についてはあえて触れないでおきます。
SIX HACK 検証
『SIX HACK』第1回
――と、以上が『SIX HACK』を巡るこれまでの流れ。
そしてこの記事にはまだ続きがあるのですが……純粋に番組を楽しみたい人は、ここでいったん記事を閉じることを推奨します。
↓↓ここから先はネタバレがあります!↓↓
放送前から一部ファンの間では話題に
実は本作『SIX HACK』は、フィクションをドキュメンタリー映像のように見せかけて演出する、いわゆる“フェイクドキュメンタリー”作品でした。
ディレクターは、これまで『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』や『このテープもってないですか?』といったフェイクドキュメンタリー作品を手がけてきた、テレビ東京の大森時生さん。
さらにオモコロなどで活動しているダ・ヴィンチ・恐山さん、海外ミームなどを絡めた前衛的な映像作品でファンが多いFranz K Endoさんが、構成や演出で参加しています。フェイクドキュメンタリー好きの間では、制作陣が発表されたときから「今回はどう驚かせてくれるんだろう」と話題になっていた番組でした。
そして大方の予想通り、回を重ねるごとに番組はどんどん不穏な方向に転がっていったのですが、「途中で番組が放送休止になり、過去アーカイブまで全て削除される」という展開にはさすがに驚いたファンも多かった様子。
ネット上では、
「放送休止まで演出?これを許したテレ東がすげーよ」
「最後の答え合わせ気持ち良すぎる」
「いや、この再現Vすら組織の陰謀に違いない……」
と、いかにも大森ディレクターらしい大胆な演出に、驚きや称賛の声が多くあがっていました。
また、構成を担当した恐山さんは、自身のnoteで「放送中に自分でも何が虚構で現実なのかわからなくなるような異様なことになってしまい、この幕切れになった」と意味深につづっており、ファンの間では今もなお、この作品のどこからどこまでが演出だったのか、熱心な考察が続いています。
余談ですが、4週目に放送が休止された際、代わりに『ダイアンの絶対取材しない店』の過去回が差し込まれたのですが、それすらも「きっと伏線に違いない」とダイアンの町ロケを神妙な面持ちで見続けてしまう番組ファンが多くいたことをここで付け加えておきます。筆者もそのうちの一人です……。