スマートフォンに接続すると、まるで生きているかのようにビクンビクンと脈打つ「へその緒型充電ケーブル」が話題です。
欲しいような……欲しくないような……でも尖ったセンスの作品はかっこいい!
このへその緒型充電ケーブル「Umbilical cable for iPhone14」は、アーティスト/ディレクターの飯沢未央さん(@iimio)が制作した作品。
もともとは2010年に岐阜県のイベントで展示されたのが最初で、当時もかなり話題になったため、動画で見たことがあるという人も多いかもしれません。
作品はその後、世界最大規模のハンドメイドマーケットプレイス「Etsy」で販売されていましたが、最近になって英国の方から突然注文が入り、今回ひさびさに制作したとのこと。ちなみに価格は日本円でなんと60万円……!!!
2010年当時と今とではiPhoneのケーブル規格が変わっており、またiPhone14用に制作してほしいと購入者から依頼があったことから、飯沢さんは最新iPhoneでも使えるように規格を更新し「Umbilical cable for iPhone14」としてバージョンアップ。
さらに「へその緒を入れるなら桐箱」ということで桐箱に入れて購入者へ発送されたそうです。どういうこと?
購入者へ送られた桐箱入り充電器
Twitterでは「きちんと設計されたキモさ(褒め)」、「意味不明すぎて最高w」など、その独特すぎるが故に魅力的な作品へコメントが多く寄せられました。
BuzzFeedは飯沢さんにお話を聞きました!
――「へその緒型充電ケーブル」のアイデアはどこから生まれたのでしょうか
当時、特殊造形+ロボティクスを組み合わせたデジグロ(デジタル+ちょっとグロティクス)な作品を作っていました。例えば、ユーザーの心拍を拾って走る心臓のオブジェや、マシンのCPUの負荷を拾って激しく膨張する腫瘍のような作品です。
腫瘍の作品を制作した際に、マシンと人間の中間にあるような事象に興味が出てきて、そんなときにiPhoneが発売となりました。当時、直感的にiPhoneが親子関係のように、パーソナリティと深く連結するデバイスになると思い、そのメタファーとしてへその緒を使うことを思いつきました。
アンデシュ・ハンセン著の「スマホ脳」がベストセラーになっている昨今ですが、先見の目が多少はあったのかな……と思っています。
ちなみにiPhoneとヒトとの関係をテーマにした作品ということで、「Umbilical cable for iPhone」を発表して数年後に、デザイナーの友人とiPhoneのホーム画面を収集した本をつくりました。
アウトプットの形は違えど、身近なテクノロジーとヒトとの関係には興味・関心があるようです。
――当時もかなり話題になっていた記憶がありますが、当時はどんな反響がありましたか
初めてこの作品を発表した場は「Make: Ogaki Meeting」でした。
発表した当日からTwitterでもかなりの反響があったこともあり、イベントが終わったらちゃんと整理して自分のサイトに情報をアップしようと思っていたのですが、同じく参加していたYuna Digick(@yuna_digick)さんが、アップした動画がこちらが発信する前に一気にバズってしまい...…。
こんなにバズると思っていなかったですし、たくさんの反響を前にとにかく慌てていました。
海外の方からも多数リアクションがあったのですが、コメントはYunaさんのYouTubeに集まってしまう状況でした。このため私もしっかりとは把握しきれていなかったのですが、嵐のようにいろいろな反応が集まっていました。
基本は驚きや面白がってくれるコメントが多かったように思えます。当時もですが、あまりSNSで細かく発信することが得意でないので、波が来た時もあまりうまく振る舞えず、クレジットなしで作品の動画のみが拡散されることも増え、今に至る、という感じです。
Yunaさんからは、再生回数やどんなコメントが来ているか、何かある度に共有していただき、大変ありがたかったです。
――ツイートには「突然購入されまして」とありましたが、これまでに実際に売れたことはありましたか?
ないですね(笑)。そもそもEtsyで販売していたのは、当時、Makerコミュニティとつながりが深かったtakawo(@takawo)さんのアドバイスからです。
当時、Etsyはハンドメイド作品の販売プラットフォームの先駆け的存在で、「Make:」界隈でも話題になっており、こんなに話題になっているなら、という思いからえいやとアップしました。
ありがたいことにEtsyでもたくさんのコンタクトをいただきましたが、購入まで進むことはなく、半ば放置している状態ではありました。
――受注があったとき、どんなお気持ちでしたか
こんなことがあるのか、とうれしい反面、とても驚きました。またインターネットって本当に誰が見てるか分からないものだなと、あらためてインターネットの凄さと広さを実感できました。
またiPhone3の仕様のまま更新できずにいたので、どうやって最新版にアップデートするべきか、すぐに頭を切り替えて、実装する方法について考えました。
当時特殊造形を依頼していた自由廊のJIROさんにまずコンタクトを取ったのですが、すぐにお返事をいただき、またとても丁寧に対応いただいたので、大変ありがたかったです。
あとエンジニアリングについても、ここ数年まったく電子工作的な世界から遠ざかっていたので、普段から仲良くさせていただいているTASKOさんに相談し、実装をお願いしました。おかげ様で無事iPhone14版にアップデートすることができ、シッピングすることができました。
・・・・・
飯沢さんのショップページでは他にも、骨が透けて見えるチキン「clear chicken - Famichiki」や、種まで丸見えのアボカドフィギュア「clear avocado」、インタビュー内にもあった自分の脈と同期して動くお散歩心臓「external heart」など、眺めているだけで楽しい作品が多数出品されています。
骨が透けて見える「clear chicken - Famichiki」
種まで丸見えのアボカドフィギュア 「clear avocado」
自分の脈と同期して動くお散歩心臓「external heart」
もちろん、へその緒型充電器「Umbilical cable for iPhone」も販売中。
誰かが町中で使っていたら「あっ!へその緒型充電器だ!」と凝視してしまうこと間違いなし。クリエイターの遊び心と技術力が詰まった作品です。