“清潔大国”ニッポンの底力。家電のナショナルメーカーはコロナとどう向き合っているのか。

    ユーザーが求める「清潔」に様々な製品で対応してきた日本の家電メーカー、パナソニック。コロナ禍でどう動き、何を追求しているのか。

    コロナウイルスによる世界的なパンデミック真っ最中の今、複数回に渡る緊急事態宣言など、日本も大きな犠牲を強いられている。日本全国で感染拡大や医療体制の逼迫が叫ばれている危機的な状態にある。

    しかし、一方で欧米諸国に比べて日本は、圧倒的に患者数、死者数が少ないというのもまた事実である。“空気を読む”国民性であることや、従来からのマスクの習慣など、様々な要因が憶測されているが、そもそも日本の「清潔」のレベルは高かった。

    1997年から「空気浄化」に特化

    パナソニックの「清潔」技術の代表的なものが、帯電微粒子水「ナノイーX」だ。

    帯電微粒子水とは、空気中の水に高電圧を加えることで生成される、ナノサイズの微粒子イオンのことを指す。高反応成分の「OHラジカル」を含んでおり、このOHラジカルが脱臭、菌、ウイルス、アレル物質の抑制などに作用。弱酸性のため、髪や肌に優しいという特徴もある。

    「空気浄化には物理的浄化と科学浄化の2種類があります。物理的な浄化とは物資を空間から強制的に除去するというもの。空気清浄機などに搭載されているフィルターなどによる浄化、あるいは換気も、物理的浄化にあたります。

    一方、
科学的浄化とは、アルコールや次亜塩素酸、オゾンなどによる浄化を指します。帯電微粒子水『ナノイーX』による浄化もこちらに入ります」(パナソニック アプライアンス社ホームアプライアンス開発センターの中山敏部長)

    パナソニックでは1997年から住環境の空気浄化というテーマで研究をスタート。水に臭気成分を溶かす性質があるということに着目し、2001年に帯電微粒子水(ナノイー)を発見、2003年から同技術を搭載した製品の発売を開始した。

    当初は空気清浄機やエアコンなど、空調機器への搭載がメインだったが、現在では、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電のほか、ドライヤーやフェイススチーマーなどの美容機器にも「ナノイー」を搭載。

    現在では主要技術のひとつに数えられるほど成長した。

    なお、パナソニックでは2016年からOHラジカルの発生量を10倍にした帯電微粒子水「ナノイーX」を新たに開発。空気清浄機やエアコンなどの空調機器に搭載している。

    帯電微粒子水「ナノイーX」はコロナにも有効か?

    新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対し、2時間で99.99%の抑制効果があることを確認

    わかりにくい技術をどう伝えるか。「眉唾」と言われたことも。

    帯電微粒子水「ナノイーX」は匂いもしない、形もない。効果をどう伝えるかというのは、長年の課題だ。

    「まずはしっかりと目に見える形でのデータを示すというところがもっとも大事だと思っています。

    『ナノイーってなに、眉唾だ』みたいに思われたこともありますし、実際、自分の親戚から『ナノイーって効かないんでしょ』という言葉を投げられたこともあります。しかし、そんな中でも続けてこられたのは、しっかりとしたデータで効果を示せたこと、そしてその効果を認めてくださった方がいたからこそです。

    近年ではBtoBでの事業も広がっており、特にトヨタさんからは高い評価をうけ、車両への搭載もどんどん広がっています」

    安心できる世界へ、少しでも助けになりたい。

    緊急宣言下で、パナソニックでは多くの部署でリモートワークを実施している。しかし、中山さんの部署はほかの部署に比べて出社率がどうしても高くなってしまうという。

    「お客様はもちろんですが、社内の多部署から『うちの製品にもナノイーXを搭載したい』という声も多く、以前よりも忙しく過ごしています。

    様々なデータをみながら製品設計するには、在宅勤務では対応しきれずに、止むを得ず出社してます」

    世界を大きく変えようとしているこのパンデミックの最中、中山さんは決意を新たにした。

    「もっと安全に、もっと短時間で、さらなる効果をというのは、いつも考えているところです。もっと安心して暮らしていただけるようになってほしい。

    海外にも全然行けなくなり、旅行も行けずに寂しい限りです。早く飛行機に乗って、色々なところと行き来ができるようになって欲しい。そのために少しでも助けになれればと思っています」