「ダイソンのようなコストリフォームが必要」パナソニック家電トップが今語る7つのこと

    パナソニックは家電市場のゲームチェンジャーになれるか。4月に就任したパナソニックアプライアンス新社長に聞く

    日本の人口は、当初の予想よりも早いペースで減少している。人口が減るということは、あらゆるモノの市場が縮小するということであり、かつて世界でその名を轟かせていた日本の家電製品もその例外ではない。すでに東芝、シャープ、三洋電機などの大手家電メーカーは中国や台湾などの外資に買収されており、日本の総合家電メーカーはパナソニック一社になってしまった。

    今後の日本市場は、どうなるのか。キーパーソンの1人、パナソニック アプライアンス社社長に話を聞いた。

    パナソニックアプライアンス社 社長 品田正弘(しなだまさひろ)氏(natsuko abe/BuzzFeed)

    2019年4月に社長に就任したばかりの新社長、品田正弘(しなだまさひろ)氏は、「詳細を話すにはまだタイミングが早い、もう少し猶予が欲しい」と前置きしながらも、記者の予想を上回る明確なビジョンを語ってくれた。以下、箇条書きで紹介する。

    1. ダイソンのようなライフスタイルコストを

    需要が縮退していく中で、家電量販店との付き合い方やコストのかけ方も変化していく。品田氏が例に挙げたのが英国の掃除機メーカー「ダイソン」だ。

    ダイソン新製品発売のタイミングで原宿の駅前に登場したポップアップストア(natsuko abe/BuzzFeed)

    「非常に上手にやっていて、価格にまつわるライフスタイルコストを極小化している。伝統的な日本の量販店でいうと、製品は毎年変わっていき、1万円で売れた製品が1年後には、50〜60%の価格になる。製品は毎年マイナーチェンジして、もしくは3年に1回くらいフルモデルチェンジをして、価格を戻していく。これが家電量販店のやり方だった。

    しかし、ダイソンは1年でその製品を処分するというやり方はせずに、ラインナップと用途によって製品を上手く組み合わせている。1万円のものが5千円、6千円にならないように、コストをコントロールしている。その代わり、そのお金を使って、お店の中にダイソンブースを作って、説明する人を置き、製品の持つ価値をダイレクトに伝える。ダイソンは、全世界同じやり方を徹底している。

    一方、我々は製品を出したら、あとはお店で買っていただく。価値の伝わり方が商品によって、温度差が出てくる。では、どうするのか、流通も含めて大幅なコストのリフォームが必要だと考えている」

    需要の縮退を見据えて、家電量販店も様々な動きをしているが、現状の取り組みだけでは厳しいのではないかと語る。

    「需要が縮退してくるということは、それだけ売上が落ちるということ。そこで、無用な競争はしたくない。お互いに変えていかないといけない。製品がなかったら、彼らのビジネスは成り立たない。そういう意味でみると、もっと本音の話し合いがいっぱい出てくるだろう」

    2. 空調・空質ビジネスにリソースを振る

    品田社長が繰り返し話したのが「専門性高める」ということだ。

    「より儲かる領域、専門性の高い領域に基本的にリソースを振っていく。特に空調、空質は収益性の高いところ、その中でもルームエアコンではなくて、業務用のコマーシャルエアコンというところは非常に収益性が高い、社会からのリプライメントも非常に大きい、こういった領域は非常に重要」

    3. ローカルフィットからグローバルスタンダードへ

    中国・上海で行われた家電展示会「AWE2019」に出展されたパナソニックのキッチン家電(natsuko abe/BuzzFeed)

    パナソニックは従来、特に洗濯機や冷蔵庫などの白物家電において、ローカルフィットを重視してきた。その地域のライフスタイルに合わせて家電を作ってきたが、世の中が成熟するにつれて、家電の世界もローカルフィットからグローバルスタンダードいう考え方に変わってきたという。

    「今後の勝負の仕方が変わってくる。ローカライズを全面否定するわけではない。開発の考え方だったりリソース配分、フォーメーションを変えないとそういうものは出来上がってこない。グローバルで勝てる、グローバルでナンバーワンだという製品をどれだけ作れるかということにチャレンジしていく」

    4. 世界シェアナンバーワンの製品を作る

    今後は世界で勝てる製品をどれだけ出せるかがキーになる。

    「日本においてはトップシェアを取っている製品は数多くあるし、世界の各地域でも、市場によってはトップシェアの製品もある。しかし、世界で一番売れている製品はない。多くの製品、リソースが日本に偏っている。それが大きな課題。

    日本市場にかけているコストをうまくセーブしながら、グローバルで勝てる製品にリソースシフトするというのが、これからの大きなテーマ」

    5. テレビ事業は他社と組むことを念頭に

    「AWE2019」に出展されたパナソニックの最新テレビ。透過性のあるパネルを採用する(natsuko abe/BuzzFeed)

    「AVは業界全体の進化が止まりつつある。ここは自力でどうするかというよりも、どう賢く生きるかを考えて行く。いまはそういうオプションを模索している段階だが、今までと同じようなお金のかけ方はしない。できるだけ、上手に補完しあえる相手と組んで我々の資産を上手に生かすというのが、常套手段だろう」

    6. インド市場に注力

    グローバルで特に注力している市場としてはインドを挙げた。インド市場は、サムソンやハイアールなどの中国・韓国勢にとっても重要な市場だ。

    「ここをこうすれば、他のメーカーに勝てるというマジックみたいなものはない。マーケット自体が伸びているので、日本メーカーが参入するには、周回遅れでもなんでもない。ローカルに工場作り、現地で生産を始め、インドコストを取り込みつつ、軌道に乗ってきた状態。インドは相対的に日系メーカーに対する信頼性が高く、まだまだ戦闘力としてはある」

    7. 経営の真ん中に商品を置く

    (natsuko abe/BuzzFeed)

    自身の経営姿勢については「商品を基軸にした経営」を挙げる。

    「経営の真ん中に商品があるということを、あまねく伝えていきたい。ソニーの平井さんが引退されてからお会いしたが、ソニーが良くなったのは、平井さんの商品に対するこだわりが強かったからだと実感した。技術者に思い切って商品にチャレンジする精神をどれだけ作ってあげられるか、それにトップにどれだけコミットできるかというところに尽きる」