2019年6月1日

    スーツだけでなく”想い”も託す。韓国の就活生に人気のシェアリングサービス

    買うものから借りるものへ。超合理的なサービスを支えるのは、大人たちの想いがこもったスーツだった

    就職活動のスーツどうしてる?

    Thomas Trutschel / Getty Images

    就職活動をしている学生にとって、面接用に用意するスーツは大きな出費になります。

    最近、日本でも就職活動用スーツのレンタルサービスがスタートしましたが、学生の就職難が深刻な韓国では、ユニークなサービスが注目を集めています。

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    韓国・ソウルにある「オープンクローゼット」は、就職活動中の学生を対象とした非営利団体のシェアサービスです。

    「就職活動で最もお金がかかるのが、就職活動用のスーツを用意することです。一方で、韓国は大手企業でもカジュアル化が進んでおり、せっかく買ったスーツもほとんど着ないというケースも少なくありません。そういった状況に疑問を感じ、いらなくなったスーツを集めて、学生たちにレンタルしようというところからスタートしたのがこのサービスです」(代表:キム・ソリョン氏)

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    学生街の雑居ビルに入居する店舗には、よく管理された様々なサイズ、形、色のスーツがずらりと並ぶ。

    学生たちは、事前にインターネットで来店予約をして、店舗で実際に試着してスーツを選びます。レンタル代は1着につき2000円程度。初めてスーツを着る学生でも困らないように、店舗にはコーディネーターも駐在します。


    「7年前にサービスがスタートした時は10着ほどのスーツしかありませんでしたが、現在はスーツだけで3000着、シャツなどを含めると1万点ほどが揃います」

    スーツはこの活動に賛同した人から寄贈されたもので、その数、6000人以上になります。

    スーツだけでなく想いも託す

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    このサービスでは特徴的なのが、寄贈者はスーツにメッセージを添えることです。レンタルする人は必ずそのメッセージに目を通します。

    「自分が就職活動で苦労をした話、今は社会人として頑張っている様子など、メッセージの種類は様々です。我々の活動に賛同してくださった著名人が、実名でメッセージを添えて、スーツを何着も寄贈してくださった例もあります。

    韓国で有名なあるお笑い芸人は、100kg以上ある大柄な方ですが、ご自分が使っていたスーツを何着も寄贈してくださいました。当初、そんなに大きなサイズは必要ないかもしれないが、と言っていましたが、実際には逆でした。ここにくればビッグサイズのスーツがある、と大柄な人も来るようになりました」

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    事務所のキャビネットにはメッセージファイルがずらりと並ぶ。

    在庫が増えることによって、「スーツを安く借りられる」という本来の目的に「サイズ展開が豊富」という新たな需要が生まれました。

    「この国の若者に未来を託したいという真剣なメッセージを添える方もいます。不慮の事故により車椅子での生活を送っている方は、『未来がある若者の飛躍を願って』とご自身が持っていた全てのスーツを寄贈してくれました」

    メンテナンスも自分たちで

    寄贈されたスーツは全て点検、補修しているが、それ以上に手間がかかるのがレンタルから戻ってきたスーツのクリーニングです。

    「本来であればクリーニング業者に全てを依頼したいのですが、そうすることによりサービスの利用料金が上がってしまいます。クリーニング作業に関しても、最初から自分たちで対応しています」

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    店舗と別の階はクリーニング専用となっており、専用スタッフがアイロンがけなどを手作業を進める

    クリーニングフロアでひときわ目立つのが、壁沿いに並べられた大きめのクローゼット。これは、韓国の家電メーカーLGエレクトロニクスが2011年に発売した衣類クリーニング機「LGスタイラー」という製品です。

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    スチームや振動など独自のプログラムによって、スーツやジャケットなど家庭で洗濯できない衣類をリフレッシュできるというもので、オープンクローゼットでは2013年から同製品を導入したそうです。

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    「衣類のクリーニングは大きな悩みの1つでした。LGからこのような製品が出ると聞いて、すぐに買いました。想像していたよりも性能がよかったので、すぐに3台の追加購入を決めました。

    当時まだ珍しかったこの製品を3台まとめて買ったことで、LGの本部の人がどういうところで使っているのか見せて欲しいと見にきました。

    サービスを説明したところ、LGの考える社会貢献活動と価値観あっているということで追加で7台を寄贈してくれました。現在、私たちは全ての業務を14人で回していますが、それを実現しているのは10台のLGスタイラーがあるからこそ。今では、なくてはならない製品です」

    韓国の大手企業であるLGエレクトロニクスは近年、社内のカジュアル化を進めているとして、スーツの寄贈にも貢献しているという。

    「大企業であってもスーツを着る機会が少なくなっている中で、私たちのようなサービスの需要はますます広がると思います」

    寄贈されたスーツは無駄にはしない

    サービスの利用者は年々増えています。

    「当初は学生向けのサービスとしてスタートしましたが、いまでは結婚式用にスーツを借りる高齢者の方など、学生以外の利用も増えてきました。累積利用者は約13万人で、現在では1日平均利用者は約80人に上ります。サービスが知られることによって、スーツの寄贈数も増えてきました」

    寄贈されたスーツの中にはデザインが古すぎたり、損傷が激しかったり、レンタル用のスーツとしては使えないケースもあります。しかし、スーツを破棄することはありません。

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    「着れないスーツはバッグとして再利用しています。古着を再利用している非営利団体に託しているもので、この取り組みは香港のデザインアワードも受賞しています」

    誰でもかっこよくなれる権利がある

    Natsuko Abe/BuzzFeed

    現在ではスーツだけでなく靴も一緒にレンタルできる。これらの靴も全て寄贈されたものだ。

    「韓国の就職難は深刻で、就職浪人する人も増えつあります。面接を受けられるチャンスも限られています。そのためにスーツを買うよりは、レンタルした方が合理的だと感じている人が増えています。

    スーツの着こなしがわからないという学生も多いです。店舗に行けば、高額なセットを薦められますが、それを買う余裕はない。私たちのサービスは『誰にでもかっこよくなる権利がある』という理念の下、スタートしました。今後はインターネットのサービスを拡充させることで、全国でこのサービスを利用できるようにしたいと考えています」

    BuzzFeed Daily

    Keep up with the latest daily buzz with the BuzzFeed Daily newsletter!

    Newsletter signup form