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ひとり暮らし、新しい仕事、ニシンのパイ……おじさんが初めて『魔女の宅急便』を見たら

ひとり暮らしに役立つ情報を届ける特集「ひとり暮らしの神」。いまだジブリ作品を見たことがない42歳・男性と一緒に、新しい環境でひとり暮らしを始める女の子の映画を見てみました。

ひとり暮らし、新しい生活。

こうしたフレッシュな言葉から思い浮かべる映画といえば『魔女の宅急便』である。

主人公の少女・キキが魔女として独り立ちするために、知らない街へ移り住み、自分の仕事を見つけて新しい生活を築いていく。

希望にあふれる気持ちと思春期の不安定な心を描いた傑作だ。

子どものときに見て以来、約30年。僕のなかのひとり暮らしのイメージはいつだって魔女のキキだった。あの映画には物事を始めるときのワクワクが詰まっている。

ところで僕の友人・伊藤さん(仮名42歳)はジブリ作品をまったく見たことがないという。

小さい頃は家でアニメを見させてもらえなかったそうだ。

なんとなくジブリを見ないまま40歳を過ぎた。もちろん「魔女の宅急便」も知らない。

なので今日はこのおじさんが初めて魔女の宅急便を見るのを眺めながら、キキの活躍を見守りたいと思う。

実はこの伊藤さんは最近転職したばかり。自分と同じように新しい場所で奮闘するキキをどう受け止めるだろうか。

ジブリ作品はネット配信で見られないため、TSUTAYAでDVDを借りてきた(Blu-rayは貸出中だった)。5年ぶりくらいにレンタルした。

まさかプレステ5で魔女の宅急便のDVDを再生することになるなんて。

伊藤さんの買ったばかりのPS5に、年代物のDVDを読み込ませる。

「あ、これ知ってるな。メイとかサツキとか言うんだっけ?」

その人はメイだ。

「これは見たことがない人だ!」とあらためて思う。

始まった。

草原に寝っ転がるキキ。

ラジオから流れる天気予報を聞いて、今夜、旅立つことを決めた。

魔女はみんな13歳になったら修行のために、遠くの町にひとりで暮らすというしきたりがあるようだ。

「だからお母さんも魔女なんだね」

そう。魔法で薬をつくっている。

近所に住むおばあさんとの会話で、このお母さんも昔、キキくらいの年の頃にたった1人でこの町にやってきたらしいことがわかる。

ちなみに僕はこのあとのお父さんとの会話のシーンでこっそり泣いた。

この作品の最初の山場は開始直後に訪れるキキとお父さんのやり取りだと思う。

「13歳でもう旅立つんだ」

キキが飛び立つと、オープニング。

ここのオープンニング曲への入り方は何度見ても神がかってると思う。

「ジジ、ラジオつけて。今、手がふさがってるの。早く!」

ズンチャカ、ズンチャカ♪(ルージュの伝言が流れる)

embed.spotify.com

キキが街についたら、靴下を半分脱いで寝っ転がるおじさん。ひどい。

新しい土地で生活を始めようとがんばるものの、何もかも空回りしてしまうキキ。

ちゃんと座って見てほしい。

「いいシーンだね。ドラクエみたいな音楽が流れてる」

そう。魔女の宅急便はこの海が見える街並みの景色に、久石譲の音楽がいい。

embed.spotify.com

でも個人的なクライマックスはしばらく後にやってくるこのシーン。

出た! ニシンのパイ!

そして大ボス登場! 直後のセリフがグッとくる。

このあとのキキの呆然とした顔がとてもいい。

「これはさすがに笑うw」

「名シーンだよね」

「まあ好き嫌いはあるからね。ニシンはな」

誰も悪くない。そもそもあのパイはどんな味なんだろう。

なぜかこの事件以降、飛べなくなったキキ、喋れなくなった猫のジジ。

キキは、山小屋で絵を描いてひとり暮らをしている少女・ウルスラと共に過ごす。

ジジにはかわいい猫の恋人ができたようだ。

飛べないけれど、それなりに平和に過ごすキキ。

と思ったら、また事件発生。「おいおい、どしたどした(笑)」

俄然注目するジブリ初めておじさん。

「どうするのこれ。飛べないじゃん」

なんでニヤニヤしながら見てるんだ。

とてもシリアスなシーン。

えっ!? モップ?

彼は初めてなのでドキドキしながら見てる。

「キキ、がんばれ…!」

自然と声が出てしまう。

まるで野球観戦でもしているみたいだった。

最後は食い入るように見ていた友人。

満足そうにエンディングの『優しさに包まれたら』(荒井由実)を聴いていた。

ーー初めてのジブリ、初めての魔女の宅急便はどうでした?

伊藤さん:情景描写がとにかくよかった! 街の様子や空、森、すべてがストーリーや登場人物の心境を表しているようで、そうか、人間を役者として使うのとは違うんだなと感じた。

すべてを作り手がコントロールできるアニメの面白さってこういうことなのかしら、と思った。

ーーひとり暮らしを始めて、キキは突然飛べなくなった。ジジはあるとき喋れなくなった。あれはなぜでしょう。

伊藤さん:ジジが言葉を失ったのは恋をしたからだよね、きっと。もう「特別な猫」であることをやめた。そしてそれは自分で選んだことなんだと思うよ。

キキは自意識が揺らいだからじゃないかな。自分のあり方は自分が決めるという自意識の話なんじゃないかと思った。

私は何者なんだろう、何のためにここにいるんだろう、と思ったときに魔法使いではなくなったのでは。

ーーなるほど、自意識の問題…。

伊藤さん:そう、でもそこでウルスラという女の子に出会う。彼女は「絵描き」という自意識とは関係なく、スランプであろうがなんだろうが「ジタバタするしかない」と言ってただ描く。対照的な存在としてキキを導いていた。

ーーちなみに、どのキャラが一番好きでしたか。

伊藤さん:パン屋の夫がよかった。帰ってこないキキを心配して、店をうろうろしながら落ち着かない様子だったのに、いざ本人が帰ってくると心配するそぶりを見せず笑顔で出迎える。ダンディズムを感じた。

ーー新しい環境への挑戦とか適合をテーマにした作品だったけど、最近バズフィードを辞めたおじさんとしてどんな点に共感しましたか。

伊藤さん:キキは家を出て新しい街で仕事に就くからいろいろドキドキしたんだろうなと思う。さすがに俺はもういいおじさんだからそういう新鮮さはないかな(笑)

でもあの最初の街に着いた時の、すべてがみんな他人事、っていう冷たさは最高だった。他人が干渉してこない。寂しいようで背筋が伸びる感じ。あれはあれでいいんだよね。

やっぱりひとり暮らしを始める瞬間ってああじゃないと。

独り立ち、新しい生活、自分の仕事。どんな人にも無関係ではない広くて難しいテーマを細やかに描いたから、魔女の宅急便は傑作なんだろうなと思ったよ。

年代を問わず愛される作品ですね。新生活を迎える人におすすめです。

魔女の宅急便、ネット配信では見られないから一家に一枚DVDかBlu-rayがあってもいいですね。Amazonではなんと3112個の評価。すごいな。

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