グランドジャンプで連載中の「ドラフトキング」はプロ野球チームに所属するスカウトマンを主人公にした珍しい作品だ。

下は中学生から、上は20代半ばの社会人まで、スカウト活動で関わる選手たちの年齢層は思ったよりも幅広い。
家族を抱えてプロに行くべきか悩む社会人選手や、プロ野球で戦力外通告を受けてトライアウトに挑戦する選手などは、これまであまり漫画作品に登場してこなかった。
スカウトマンのほうも、若くして戦力外となった元プロ選手から、データ重視のスカウト一筋の職員までさまざま。
野球漫画といえば、特別な才能を持つスター選手を描く作品が多い。人気作品はほとんど選手が主人公だったように思う。
ただスカウトマンが主役だからこそ描けるストーリーもあるし、むしろ登場人物たちの人間模様の濃さにおいて「ドラフトキング」は普通のスポーツ漫画を圧倒しているようにも感じる。
ドラフトキングの主人公・郷原眼力(ゴウハラ オーラと読む)は横浜ベイゴールズというプロ野球チームのスカウトマン。一流選手を見抜く目を持ちながらも、入団後の選手や入団に至らなかった選手にまで目をかける人情派だ。
選手の親とのやり取り、大学・社会人チームとの関わりなど、ドロドロした部分も描かれる。
あらゆる角度から「人」を通して野球を捉えることができるのはこのドラフトキングという作品ならではの良さだ。
まだ8巻が出たばかりだが、「スポーツ×人間ドラマ」の名作になる予感がする。シビアなお金の問題も含んだ「ビジネス漫画」という側面もある。
さらに巻末に掲載されているスカウトにまつわるコラムのコーナーも面白かった。現実のプロ野球において成功したドラフト、あるいは期待通りの結果にならなかったドラフトの事例などがまとめて紹介されている。
毎年ドラフト会議で指名される選手は支配下、育成あわせて計100人〜120人ほど。過去10年分くらいのドラフトを頭に入れながらプロ野球を見ると、野球観戦はさらに面白くなる。
ちなみにこのドラフトキングという作品において、スカウトマンたちのゴールはあくまでドラフト指名だ。指名された後のことは詳しく描かれないが、各エピソードの最後にちらっとだけ「数年後…」という形で活躍がほのめかされる。
ちらっとだけ。その潔さも良かった。