• medicaljp badge

木村英子議員初の質問主意書に実質ゼロ回答 「厚労省で検討中」 就労・就学中の重度訪問介護をめぐって

重度障害者の木村英子議員が出した「重度訪問介護の早急な見直しに関する質問主意書」。8月15日に内閣総理大臣から答弁書が出され、「厚生労働省において必要な検討を行なっているところ」と実質ゼロ回答でした。

7月の参議院選挙で車いすの国会議員として当選を果たした重度障害者の木村英子・参議院議員(れいわ新選組・比例区)。

重度障害者の日常生活の介助を行う国の「重度訪問介護」制度が就労中や就学中は使えない規定の見直しを求めて、8月5日、国会に質問主意書を提出し、安倍首相からの答弁書が15日に出された。

安倍首相は「厚生労働省において必要な検討を行なっているところ」とし、実質的にゼロ回答だった。

国会活動に介助派遣(ヘルパー)が認められない現状の制度

木村議員が問題視しているのは、生活の多くに介助が必要な重度障害者向けに、長時間の見守り介助を可能とする国の「重度訪問介護」という制度。

利用要件を定めている厚生労働省告示では、「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く」という制限を設け、仕事中や就学中は使えないこととしている。

このため、木村議員や同じくれいわ新選組から当選したALS患者の舩後靖彦氏は国会活動中に介助者をこの制度でつけることができない壁に直面したが、当面、参議院が費用負担するという特例で対応することになっていた。

この就労・就学中に介助派遣が受けられない問題については地域で生活する重度障害者が度々問題にしており、さいたま市では市が独自に就労中の介助費用を全額負担する制度を今年度から設けている。

制度の早急な見直しを求めて質問主意書を提出

これに対し、木村議員は、「重度訪問介護の早急な見直しに関する質問主意書」を5日に提出。

当面の対応として参議院で費用負担することに「致し方ない」と理解は示しつつも、「これは根本的には間違っていると私は考えます」と批判し、その理由をこう述べた。

「なぜならば、介護保障は国が障害者全体に対してする義務があり、私が国会議員であろうとなかろうとなされなければいけないからです」

その上で、こう求めた。

「介護費用は、法律等を見直し、厚生労働省が責任をもって出すように至急すべきです。このまま参議院から費用が出されると、私は特別扱いになってしまいます。すべての障害者に就労や就学を権利として認め、公費で社会参加できるようにすべきです」

「法律では障害者の労働そのものは認められていますが、告示により、介護の必要な障害者の重度訪問介護を使っての労働は認められていません。これは矛盾するのではないでしょうか。至急法律に沿った告示の見直しを行い、就学や就労の権利を保障するしくみを整えるべきと考えますが、それに対する納得のいく説明を求めます」

答弁書「現在、厚生労働省において必要な検討を行なっているところである」

これに対し、答弁書では制度の現状に触れた後、衆議院、参議院の各厚生労働委員会による「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(2019年5月10日、6月6日)で、「通勤に係る障害者への継続的な支援や、職場等における支援の在り方の検討を開始すること」とされていることに言及。

これをふまえ、「現在、厚生労働省において必要な検討を行なっているところである」としたが、具体的な方針は示さなかった。

これについて厚生労働省障害福祉課の石井悠久課長補佐は、「7月9日に障害福祉課と障害者雇用対策課で、障害者雇用福祉連携強化プロジェクトチームを立ち上げており、障害を持つ人の通勤・就労中の支援のあり方をどうするかの検討を始めたばかりだ」

「重度訪問介護の見直しまでは手をつけていないが、今後の議論次第で、重度訪問介護以外の新たなサービスを作るのか、重度訪問介護の中で対応することになるのか、検討していくことになる」と話した。

さらに、安倍首相は答弁書で、就学中の重度訪問介護については、「教育・福祉・医療・労働分野等の連携により特別な支援を必要とする子供への就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援体制を整備するための支援などに取り組んでいる」として、現状を見直す姿勢はないことを明らかにした。