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不登校のその先へ 経験者として問いかける「その授業必要ですか?」

10年間の不登校経験の末に、起業家として活躍する小幡和輝さんインタビュー後編。1億円のファンドマネジャーや最年少の内閣府「地域活性化伝道師」として力をつける中で、不登校の子ども支援に乗り出した小幡さんの今を伺います。

10年間の不登校を経て、起業家として活躍する小幡和輝さん(24)インタビュー後編は、様々な事業を軌道に乗せ、かつての自分のように不登校に悩む子どもの支援を始めた道のりを伺った。

東京と和歌山を往復しながら働く小幡和輝さん。東京ではコワーキングスペースを仕事の拠点としている
Naoko Iwanaga / BuzzFeed

東京と和歌山を往復しながら働く小幡和輝さん。東京ではコワーキングスペースを仕事の拠点としている

初の主催イベントは大失敗

1年ほどライブイベントの運営を手伝って高校3年生になると、今度は自身でイベントを主催したくなった。

「街の魅力を考えるワークショップをやったのです。僕はそもそも日本文化や地域の歴史が好きで、戦国時代の歴史への興味からゲームも始めました。僕の住んでいる湯浅町は、街の一部が伝統建造物に指定され、醤油発祥の地であるなど、歴史的資産がいっぱいある。そういう街で生まれ育ったことが影響しています」

その頃、地域でお祭りを運営している人たちと出会った。普段は会社や自営でそれぞれの仕事をしている人が、自分たちの住む街のために毎年ひと肌脱ぐ。

「自分たちのまちを自分たちで作っていくという姿がかっこよかった。でも僕らの世代はどう考えても興味がなさそう。だから、地域のイベントに興味を持つ10代を増やしたくて、まちの魅力を高校生で考えるワークショップを開くことを思いついたんです」

自分が主催するイベントを企画し始めた頃の小幡さん
小幡和輝さん提供

自分が主催するイベントを企画し始めた頃の小幡さん

アイディアは浮かんだが、実現する方法がわからない。

高校の担任に相談してみると、彼はたまたま和歌山大学時代、地域おこしの市民活動をしている人だった。アドバイザーになってもらい、ちょうど若者による地域活性化事業に予算をつけた和歌山市が10万円の補助金を出してくれることも決まった。

人の縁や運に恵まれ、順調な船出のはずだった。

「ところが当日ふたを開けてみると、集まったのは3人だけ。辛いのは補助金を出してくれた和歌山県の担当者がみんな見学に来ていたことです。情けなくて、本当に泣きましたよね」

リベンジ誓い成功体験、起業して高校生社長に

悔しいから、数ヶ月後、もう一度同じイベントに挑戦した。今度は確実に参加者を集めるため、ツイッターやフェイスブックで和歌山に住む高校生らしきアカウントに片っ端からメッセージを送った。親世代にも「子供を参加させてください」と、数千人は送ったと振り返る。

「とにかく声をかけまくるしかないと頑張ったら、今度は50人が集まったんです。汚名返上です。負けず嫌いなんですね。それが初めての成功体験でした。楽しくて、これをずっと続けたい、仕事にしたいと思いました」

リベンジのために企画した高校生のワークショップ。今度は50人が集まって大盛況だった
小幡和輝さん提供

リベンジのために企画した高校生のワークショップ。今度は50人が集まって大盛況だった

2か月後の翌年2月1日には、イベント制作会社「和―なごみ」を設立した。和歌山の和、自分の名前である和輝の和、そして、高校2年生の時に初めて手伝ったイベントの名前が「なごみ」だった。高校3年生でついに社長になった。

誰かが喜んでくれて、人がつながるイベントをやりたいーー。

カフェの空き時間を会場として使わせてもらい、社会人からギターアンプやドラムセットなど本格的な音楽機材を借りて、高校生が気軽に自分たちの音楽を発表できる場を作った。

「でも相手は高校生なので300円や400円の入場料で100人集めても売り上げは3、4万円。若干の経費もかかり、結局手元に残るのは1万円ぐらいで、月収1万円じゃあかんだろとさすがに危機感を持ちました」

その頃には、高校生社長としてメディアにもてはやされ、講演も頼まれるようになっていた。しかし、本業よりも講演料の方が、収入が多い。

「高校在学中に1回ぐらい成果を出さないと、会社を作っただけになってしまうな、他の人があっと驚くことをしたいなと思いました」

2014年1月、定時制高校4年生で卒業までにあと2ヶ月の余裕しかなかった。

高校生がホリエモンを呼んだ! 足で稼いで500人のイベントを成功

どんなイベントをやったら、人を驚かせることができるのか。

「イベントで収益をあげるとなると、入場料を上げるしかない。少なくとも2000円や3000円の入場料を取り、たくさんの人数が来なければいけない。そうなると著名人だ、ということで堀江貴文さんを呼べないか考えました」

当時、堀江さんはライブドア事件による服役を終え、『ゼロ』という再出発を誓う半生記を出版したばかりだった。

「『ゼロからの再チャレンジをテーマに講演してほしい』とツイッターに公開されているメールアドレスに依頼文を送ったんです。『本を500冊買い取るので講演会に来てください』と。僕にとっても再チャレンジは大きなテーマなので、まさに今、再チャレンジしようとしている堀江さんに講演してほしかった」

堀江さんのマネジャーから電話があり、「やりましょう」と快諾してくれた。

本とチケットをセットにして入場料は3000円。500枚のチケットをどうやって売り切るか。

「毎日僕が駅前に立って、手売りをしました。チケットをポケットに入れて、ツイッターで『この時間にいるので買いたい人は来てください』と告知する。買ってくれた人と一緒に写真を撮って、ツイッターやフェイスブックにタグ付けして出すと、その人たちがシェアしてくれる。そうしたらその周りの人もまた買ってくれる。写真を撮っている姿を見て、駅で待ち合わせをしている人が興味を持って買ってくれたりもしました」

2月の寒空の下、一人チケットを売る高校生に、缶コーヒーを差し入れしてくれる大人もいた。そんな地道な売り方は口コミで評判となり、チケット500枚はすぐに完売。2014年3月、堀江さんが1時間講演し、自分と30分対談してもらうイベントが実現した。会場は満席だった。

堀江貴文さんと対談する小幡さん。500人が参加するイベントを成功させた
小幡和輝さん提供

堀江貴文さんと対談する小幡さん。500人が参加するイベントを成功させた

「当日まで僕は高校生だと堀江さんに伝えていなくて、壇上で明かしたら、ボソッと『スゲエな』と言ってくれた。それがものすごく嬉しかった。終わった後もフェイスブックで『お疲れ様』とメッセージが来て。会場費などを差し引いて50万円利益も出て、やりきったなという充実感がありました」

なぜそこまでできたのだろう。

「本当にがむしゃらにやるしかないと思ったんです。それまで周りは、半分遊びでやっている子だという印象だったと思います。でもこれをやりきった時に、周りの見る目が変わったと感じました」

最年少で「地域活性化伝道師」に就任

翌年、推薦入試で和歌山大学観光学部に進学。堀江さんのイベント成功以来3年ほどは、商品開発や商店街活性化のイベントなど、続々と仕事の依頼が舞い込んだ。

和歌山活性化プロジェクトの実行委員長になり、2016年の参院選では10代の投票率をあげるための「和歌山リア10プロジェクト」などを運営した。

そうして築いた人脈やノウハウを駆使して、2017年6月には、全国47都道府県から250人の参加者を高野山に集めて、「地方創生会議in高野山」を主催した。高野山の会場や宿坊を押さえ、企業トップや国会議員らを招く。

高野山に全国から人を集めて地方創生会議をやり遂げた
小幡和輝さん提供

高野山に全国から人を集めて地方創生会議をやり遂げた

「参加者の半分はそれまで知り合った友人たちですが、あと半分を高野山に集めなくてはいけない。クラウドファンディングで1万5000円のチケットを出して、すぐに目標金額100万円を達成したことを可視化して、話題を集めました。このイベントで、和歌山県内から、全国を視野に入れた活動に広がりました」

これが評価され、2018年1月、企業と組んで地域活性化に取り組む企業などに投資する1億円の地方創生ファンド「NagomiShareFund」を設立。2018年4月には、最年少で、内閣府の「地域活性化伝道師」を委嘱された。

地方活性化の若手専門家として順風満帆な日々。そこでふと、かつての自分のように不登校でいる子供たちはどうしているのだろうと心が動いた。

夏休み明けに登校したくない子どものために 本を出版

「それまでもたまに当事者や親から相談事のメールが来ていました。ただ、悩んでいる人が多いとわかっても、どうやってその人たちをサポートしたらいいのかわかりません。できることは自分の体験談を届けることぐらいではないかと思い、自分の本を作ろうと考えました」

夏休み明けに学校に行きたくなくて子どもの自殺が増えることは知っていた。そんな深刻な悩みを一人ぼっちで抱えている当事者にどうやったら届くのか。

「本屋さんに並べても、この本を買ってくれるような家庭は、不登校を受け入れているでしょうから、結局、家庭でも孤立して一番つらい思いをしている子どもには届かない。学校の図書館に送るしかないと思いました」

しかし、自分が送るとしたら二つ問題が思い浮かぶ。まだ知名度が低いことと、不登校を肯定し学校教育を否定するような本を著者が送っても、学校が置いてくれそうにもないことだ。

「クラウドファンディングを立ち上げて、3000円の寄付をしてくれると2冊届け、1冊を母校に送ってもらうようにしたんです。OBが送れば、学校の反応も良くなるのではないかという作戦です。支援してくれた人が200数十人いることも、本の中に入れました。これだけ多くの人が不登校を肯定しているのだと読んでくれた子に伝えるためです」

2017年の11月に不登校から起業家になった道のりを書いた本が出来上がると、全国から反響が殺到した。当事者や親は「勇気をもらえた」と、教員も「教師では言えないことを言ってくれた」と感想をくれた。

「#不登校は不幸じゃない」キャンペーンスタート

手応えを感じ、「さらに大きな仕掛けができないか」と次の一手を考えた。

2018年4月、夏休み明けに学校に行きたくない当事者のために、8月19日にイベントを考えていて、手伝いたい人を募集することをツイッターで呼びかけると、初日に100人もの人が手をあげてくれた。

コピーライターと共に「#不登校は不幸じゃない」というハッシュタグを作り、一気に拡散。当初は東京で数百人規模のイベントをするつもりだったが、関心を持ってくれる人が毎日のように増えていくのを見て、全国100箇所での同時開催にすることにした。

「数百人規模のイベントに来られる子はあまり困っていない気がしたんです。もともと僕は地方組ですから、フリースクールがないとか居場所がないとか地方の方が課題が多いと思っていました。地方でも開催すれば地元メディアも取り上げてくれるだろうし、取り組みも広がりやすいだろうとも考えました」

もともと地方創生会議の活動で、全国に仲間がいる。ふたを開けてみたら、全国100か所で1500人が同時参加する前代未聞の不登校イベントを開くことができた。

「このハッシュタグは2万件以上使われ、今も使われています。新しいフェーズに入ったなと思ったのは、このイベントの関係者ではない人も、全国紙などのマスコミも僕らのイベントに関係なくこのタグを使っている。自分たちを超えた運動になったんです」

不登校の先を創ろう 生活費を稼ぐ力とつながりを生む居場所

「不登校は不幸じゃない」イベントは一過性で終わらず、その後も各地のチームが自律的に活動し、定期的に不登校の子どもが集まる会を開いている。来年もやはり夏休みの終わりに全国一斉のイベントを開くつもりだ。

そして、小幡さんの歩みは止まらない。

不登校の子どもや親と話していると、一番不安に思っているのは、将来稼げるのか、自立できるのかということだ。

「不登校の先を創る必要があると思っています。フリーランスの人は会社という組織に合わなくて独立している人が多いので、フリーランスを不登校の先とすることはありなんじゃないかなと考えました」

今、思い描いている計画はこうだ。

エクセル処理や簡単な記事作りなど中学生が月1万円ぐらい稼げるような仕事を、クラウドソーシングの企業と組んで作る。社会人なら生活できないような仕事でも、中学生ならパソコンを使った職業訓練になる。

「13歳から始めて7年経ってもまだ20歳です。技術はレベルアップするでしょうから、その頃には他の20歳と比べて相当優秀になっているはずです。中学生から自分で稼ぐ経験をしてフリーランスとしての体力を作っていくことができれば、社会は変わると思うんです」

その仕事をやる場所として考えているのは、全国各地にあるコワーキングスペースだ。

「フリースクールなど不登校の子どもの受け皿がない自治体でも、コワーキングスペースを使ってコミュニケーションの場を作ることができると思うのです。利用しているのはフリーランスの人ばかりですから、不登校にも肯定的でしょう。昼間子どもがカフェで一人でいると変な目で見られますが、半分オープンな場所で仲間やフリーランスの人たちと出会えたら彼らの可能性は広がるはずです」

学校教育に対する問いかけ 「それ、必要ですか?」

最近、教育関係者とも対話する機会が増え、学校教育は時代から遅れていると感じている。例えば、スマートフォンを授業中禁止しているというルールにも疑問を投げかける。

最新の著書『学校は行かなくてもいい』を手にする小幡和輝さん。活動は全て「社会への問いかけ」だという
Naoko Iwanaga / BuzzFeed

最新の著書『学校は行かなくてもいい』を手にする小幡和輝さん。活動は全て「社会への問いかけ」だという

「スマホをいじると授業を聞かないとか集中力が下がると言いますが、それは先生の授業がスマホより面白くないからじゃないですか?と問いたいです。逆にスマホを使ってどうやったら授業を面白くできるか考えるべきだし、ネットがつながっていない環境でテストで高得点を取ったと言っても、普段の社会はネットがつながっているわけですからどれほど意味があるのかわかりません」

2018年7月、「学校は行かなくてもいい 親子で読みたい『正しい不登校のやり方』」を出版した。

インターネット時代、社会は大きく変化しているのに、学校の授業や大卒が有利な雇用形態は変わらない。かつて不登校だったからこそ、日本を縛るそんな空気に挑戦したいのだ。

「僕なりの社会に対する問いかけなんです。不登校は不幸じゃないも、学校は行かなくてもいいというのも。無駄とは言わないけれども、本当に学校は必要なのか、みんなが声をあげ始めている。教育に関わっている人は、なんのために学ぶのか、なんのために学校が必要なのかをもっと真剣に考えてほしいのです」

「僕はもっと学校教育がよくなればいいと思いますし、教育には伸び代があると思っています。だから、今のままでいいのですか?というのが僕の社会に対する問いです。それに対して社会がどう答えるのか、見ていきたいと思います」

【前編】学校に行かなくても大丈夫 10年間の不登校を経て社長になった僕から見た学校


【小幡和輝(おばた・かずき)】NagomiShareFund&地方創生会議創業者、内閣府地域活性化伝道師、#不登校は不幸じゃない発起人

1994年、和歌山県生まれ。合計約10 年間の不登校を経て、定時制高校3年生の時にイベント運営会社を設立。2017年、47都道府県から参加者を集めて、世界遺産の高野山で「地方創生会議」を開催。2018年1月には1億円規模の地方創生ファンド「NagomiShareFund」を設立し、地域活性化のための新しい仕組み作りに奔走している。

著書に「学校は行かなくてもいい 親子で読みたい『正しい不登校のやり方』」(健康ジャーナル社)がある。2018年に展開した「#不登校は不幸じゃない」キャンペーンは多くの人が参加し、今も拡散され続けている。

公式ウェブサイトはこちら

Naoko Iwanagaに連絡する メールアドレス:naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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