食中毒の恐れがあるカラス肉の生食体験記を東京新聞が配信し、「危険ではないか」と批判を浴びている。
これに素早く対応したのが厚生労働省。
翌日には「シカ、イノシシ等の野獣やカモ、カラス等の野鳥は病原体を保有している可能性があり、その肉や内臓を生食することは非常に危険です」とジビエは加熱して食べるよう注意喚起するツイートをし、カラスのイラストまで盛り込んだ。
SNSでは「厚労省、素晴らしい対応!」と賞賛の声が上がる一方、問題の記事を配信した東京新聞は「記事で掲載した通りです」とのみBuzzFeedに回答し、記事内容を問題視していない姿勢を見せた。
東京新聞「カラス肉の生食体験記」に批判相次ぐ
問題となった記事は、東京新聞茨城県版の「<突撃イバラキ>カラス肉の生食文化 究極のジビエに挑戦」。
記者が「カラス料理愛好家の集い」に参加し、「ムネ肉の刺し身(しょうゆ漬け)」を食べた体験記だ。
ネット上では3月7日朝に配信されたが、食品の安全に詳しい識者や医師らから、批判が相次いだ。
「鶏肉の生食はやめましょう、とあれだけ厚労省、農水省、食品安全委員会、揃って言っているのに、その情報をキャッチできていないらしい記者がカラスの生肉を……。ああ」(食のジャーナリスト・松永和紀さん)
「ジビエの生食をレポートするとか東京新聞ちょっと無責任すぎる。 真似した人が劇症肝炎で肝移植必要になったら代わりに訴えたいレベル」(医師・木下喬弘さん)
「東京新聞、大丈夫でしょうか?カラスの生肉??」(リスクコミュニケーションが専門の元食品安全委員会委員・堀口逸子さん)
厚労省、カラスの文言、絵も入れて注意喚起
これに素早く反応したのが厚労省だ。
広報室から「こういう記事が話題になっている」と3月8日に連絡を受けた医薬食品局の食品監視安全課の乳肉安全係と、食品安全企画課のリスクコミュニケーション係が対応を協議。
これまでもジビエ肉の生食については加熱するように厚労省のTwitterアカウントで周知していたが、「もう一度、ツイートしましょう」と文章やイラストを練り直した。
乳肉安全係の佐藤光洋さんは、「カラスについては病原体を持っているかどうかは定かではありませんが、鶏肉全般として考えるとサルモネラ菌やカンピロバクターを持っている可能性は十分あります。中心部まで火を通して殺菌して食べていただく必要があります」と話す。
ツイート文言には、問題の記事に対する注意喚起であることがわかるよう、「カラス肉」という言葉を追加した。
この文案に対応したのがリスクコミュニケーション係。「カラスの絵を入れた方がわかりやすい」と、係員がいらすとやからカラスの絵を探してきて、それまで啓発に使っていたイラストにはなかったカラス4羽を盛り込んだ。
記事を批判した識者も厚労省のツイートを評価
厚労省が、この工夫を凝らした注意喚起のツイートを3月8日の夕方に発信すると、記事を批判していた識者たちも評価。
厚生労働省がジビエの注意喚起のイラストに、去年の7月まではなかった「カラス」を足してますね。 これ先日の東京新聞の記事に対して相当怒ってると思いますよ。 https://t.co/gKgLLlsyOz
「厚生労働省がジビエの注意喚起のイラストに、去年の7月まではなかった『カラス』を足してますね。 これ先日の東京新聞の記事に対して相当怒ってると思いますよ」(医師・木下喬弘さん)
明らかに「カラスの生食」の報道意識して作ったよね、厚生労働省。 素早い対応! 左:昨年7月バージョン 右:本日のバージョン
「明らかに『カラスの生食』の報道意識して作ったよね、厚生労働省。 素早い対応!」(リスクコミュニケーションが専門の元食品安全委員会委員・堀口逸子さん)
画像の表現を考えたリスクコミュニケーション係長の岩橋祥子さんは、「かなり反響があって驚いています。多くの人に伝わったようで本当に良かったです」と喜ぶ。
東京新聞の回答「記事で掲載した通りです」
一方、東京新聞の読者部には批判の声が数多く届いているという。
BuzzFeed Japan Medicalは東京新聞に対し、メールで以下の3つの質問を送った。
- ジビエの生食については危険なので加熱して食べるように国からも注意喚起されていますが、御社としてはこの点についてどのような見解をお持ちでしょうか?
- この記事をこのまま掲載されるおつもりでしょうか?なんらかの対応を考えていらしたら、その対応内容を教えてください。
- すでに読んで影響された読者に危険が及んでいる可能性も考えられますが、メディアとして健康を害する可能性のある情報を発信した責任についてどのようにお考えか教えてください。
これに対し、東京新聞編集局が送ってきた回答は以下の通りだ。
記事で掲載した通りです。東京新聞編集局
記事はそのまま掲載されたままで、内容も特に問題視していない姿勢を示した。