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子ども医療電話相談「#8000」 知らない人が全体の4分の3に

内閣府が「医療のかかり方」について世論調査したところ、子ども医療電話相談「#8000」について知らない人が4分の3にものぼることがわかりました。

「待ち時間が長い」「3分診療できちんと診てもらえない」「夜間や休日に病院にかかるべきかどうかわからない」

医療にこんな不満や悩みを持つ人は少なくないでしょう。

「念のために大きな病院を受診しておこう」「安心するために救急にかかっておこう」

そんな行動が、医療スタッフの負担を増やし、結果的に患者も安全・安心な医療を受けられなくなるというところまで日本の医療は追い込まれています。

これからも命や医療を守るために私たちのかかり方をどう見直していけばいいのか、まずは現状を探るために内閣府が世論調査をしました。

医療機関にかかる前に医療者に我が子の症状を相談できる子ども医療電話相談「#8000」を知らない人は全体の4分の3にのぼり、安心して上手に医療にかかるための様々な方策が活用されていない実態が明らかになりました。

「#8000」知らない、76.7% 

調査は2019年7月26日〜9月10日に、18歳以上の男女5000人に調査用紙を郵送する形で行われました。2803人からの有効回答を分析しました(回収率56.1%)。

結果によると、

子ども医療電話相談「#8000」を知っているか、また利用したことがあるかという質問に対し、「知らないので、利用したことがない」と答えた人は76.7%と全体の4分の3にのぼりました。

「知っているが、利用したことはない」は15.6%で、「知っていて、利用したことがある」という人はわずか6.3%のみでした。

また、#8000を利用したことのある人に、不満な点について聞いたところ、

「電話がつながるまでの時間が長かった」が21.6%、「助言の内容は理解できるが、相談したことが解決しなかった」が19.9%いました。

「不満な点はなかった」と答えた人がもっともも多く48.3%でした。改善すべき点はあるものの、満足している人が多数派であることが伺えます。

夜間・休日窓口 「緊急性は高くない」利用も

また、休日・夜間に病気やけがをした場合、どのような場合に救急窓口を受診しようと思うかを尋ねたところ、

「症状から緊急性が高いと思った場合」がもっとも多く、90.7%にのぼりましたが、「症状から緊急性が判断できない場合」が次に多く、43%でした。

また、「緊急性は高くないと思ったが、薬を処方してもらいたい場合」(8.3%)や「平日の日中に予定(仕事、学校、プライベートなど)がある場合」(7.3%)、「緊急性は高くないと思ったが、検査をしてもらいたい場合」(6.4%)など、本来、救急窓口の対象でない人が利用している実態も明らかになりました。

医療機関が開いている平日の日中に受診できないのは、職場が休みにくい状況もあると言われています。

自身の職場が平日に休んで受診しやすくするよう取り組んでいるか尋ねたところ、「取り組んでいると思う」と答えた人は43.8%、取り組んでいるとは思わないと答えた人が20%いました。

平日日中に受診するために民間企業に求める取り組みとしては、

「職場に置いて、体調が悪いときは休みがとれる雰囲気を作り出す」がもっとも多く、70.9%にのぼりました。

かかりつけ医がいる人は半分

どんな症状でも大病院や総合病院が安心といきなりかかってしまうことが、混雑や待ち時間の長さにつながっています。

そんな状況に対して、「かかりつけ医」がいるかどうかも尋ねました。

「かかりつけ医」とは、「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれるような、身近にいて頼りになる医師」としています。

その結果、かかりつけ医がいる人は約半分の52.7%でした。

一方、「いない」と答えた40.7%にいない理由を聞いたところ、

「かかりつけ医の必要性について考えたことがないから」がもっとも多く、27.6%でした。

「かかりつけ医を選ぶのに必要な情報が不足しているから」(16.3%)、「大きな(複数の診療科があり、病床数も多い)医療機関に行けば良いから」(14.9%)、「かかりつけ医に適していると思う医師がいないから」(14.6%)がそれに続きました。

一方、住んでいる地域の医療機関が検索できる「医療情報ネット」を知らないので利用したことがない人は82.6%にのぼります。

かかりつけ医に求める要件としては、「症状、治療内容など、分かりやすく説明をしてくれる医師」(60.3%)、「話を十分に聞いてくれる医師」(47.2%)とコミュニケーション能力を求める人が目立ちます。

「かかりつけ医が治療できない病気が見つかった場合、専門の医療機関などを紹介してくれる医師」を求める人も54%いました。

医師の長時間労働 「全体で取り組むべき」 71.4%

医師の長時間労働は、患者のかかり方も関係があり、結果的に患者の医療安全にも関わる問題です。

医師の長時間労働を改善させることに、誰が取り組むべきか聞いたところ、「行政、医療機関、民間企業、国民が全体で取り組むべき」と答えた人がもっとも多く、71.4%にのぼりました。

主治医制を取ることで、説明も治療も全て一人の医師が行うことが医師の負担を増やしていると言われていますが、病状について主治医以外の医師が説明することに賛成とする人は70.9%おり、反対の25.8%を大きく上回りました。

また、24時間対応が必要な産婦人科や救急などでは、病院を統合し、医療スタッフを一つの病院に数多く集めることで、一人一人のスタッフの負担を減らす対策が必要だと言われています。

いくつかの医療機関を統廃合することにより医療スタッフを集めることに賛成か尋ねたところ、

賛成が68.9%、反対が28.2%と賛成が多数となりました。

逆に、反対した人に理由を尋ねたところ、「医療機関までの所要時間が長くなると思うから」がもっとも多く34.2%で、「医療機関が減るので、医療機関を選択しにくくなると思うから」(32.7%)が続きました。

「上手な医療の医療のかかり方」を普及

この調査結果に対し、上手な医療のかかり方の推進や、医師の働き方改革を担当する厚生労働省医政局総務課の課長補佐、中澤宏和さんは、「意外と医療が直面している問題については知られており、問題を改善するために積極的な方が多かったのは驚きでした」と話します。

ただ、かかりつけ医を探すための「医療情報ネット」や、夜間・休日に急に子どもが体調を崩した時に頼れる相談窓口「#8000」があまり知られていない現状も明らかになったとして、こう語ります。

「国民も医療を守るために何かしたいと考えていただいているようですが、それを行動に移すための情報が届いていないことがわかりました。今年度から上手な医療のかかり方の普及に力を入れていこうと思います」

筆者の岩永直子は、上手な医療のかかり方を広めるための懇談会に参加した構成員で、今年度も引き続き、懇談会で決めたことが適切に実行されるか推進委員を務めています。謝金は辞退し、何のしがらみもなく、自由に取り組みを報じていきます。

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