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HPVワクチンの新しいリーフレット案を公表 厚労省の検討会

厚労省作成のHPVワクチンのリーフレットがわかりにくく、不安を煽るという批判を受けて、新しいリーフレット案が提示されました。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

小学校6年生から高校1年生の女子を対象に公費でうてる定期接種となっているが、対象者に個別にお知らせを届けないように厚生労働省が通知を出して7年以上が経った。現在は実質中止状態となっている。

このワクチンについて説明する厚労省のリーフレットがわかりにくく、不安を煽るという批判を受けて見直しを進めていた同省が7月17日、副反応検討部会で新たなリーフレット案を提示した。

概要版(表紙も含めて4ページ)と詳細版(同8ページ)のほか、体調変化があった場合の対応案内、医療従事者向けの4種類。

「劇的に見やすくなった」などと評価の声が複数の委員から上がる一方、「最後の決め文句がわかりにくい」など注文の声も委員から相次いだ。

概要版はどんな内容?

概要版ではまず、このワクチンで防ぐ「子宮頸がん」とはどういう病気なのかという説明が書かれている。

ウイルス感染が原因であることが書かれているが、性的接触でうつるという感染経路の説明はない。

「日本では毎年、約1.1万人の女性が子宮けいがんになり、毎年、約2,800人の女性が亡くなっています。患者さんは20歳代から増え始めて、30歳代までにがんの治療で子宮を失ってしまう(妊娠できなくなってしまう)人も、毎年、約1,200人います」

このように書いて、若い女性の命や妊娠可能性に大きなダメージを与える可能性が示される。

次に書かれているのが子宮頸がんを防ぐためにできることと、HPVワクチンのメリット、デメリットだ。

ワクチンだけでなく、20歳になったら検診も受けるという両輪で防げることを書いている。

効果とリスクでは、リスクの方が分量を割いて詳しく説明している。

最後のページは、具体的に接種する方法だ。

もっと詳しく知りたい人のために「詳細版」への案内も書かれている。

厚労省のメッセージ「おすすめするお知らせをお送りするのではなく」

問題は最後に赤線で囲まれて強調されている「厚労省のメッセージ」だ。詳細版にも同じスタイルで同じ文言が書かれている。

「このご案内は、小学校6年~高校1年相当の女の子やその保護者の方に、
子宮けいがんやHPVワクチンについてよく知っていただいた上で、希望される方に接種していただけるよう、おすすめするお知らせをお送りするのではなく、みなさまに情報をお届けするものです」

積極的勧奨をしているわけではないことを強調するために、「おすすめするお知らせをお送りするのではなく」という文言が入った。

現在使っているリーフレットには、説明の後に、「HPVワクチンは、積極的におすすめすることを一時的にやめています」と目立つ太文字で書いている。

これについても、「結局、国は勧めていないのかと不安になる」「うってもらうためのリーフレットなのか、うたせないためのリーフレットなのかわからない」などの批判が専門家や一般の人から相次いでいた。

詳細版、医療従事者向け、接種後の注意

詳細版はさらに詳しい情報が盛り込まれている。

子宮頸がんの現状が盛り込まれ、どこにできるがんかの図も描かれた。

HPVに感染してから、がんになる手前の前がん病変になり、子宮頸がんになるまでのプロセスもわかりやすく図示されている。検診は前がん病変の段階で見つけるために行われる。

海外では高い接種率でうたれていることも示されている。

ただし、リスクなどネガティブ情報にも2ページを割いた。

接種後の体調変化に注意を促し、万が一何かあった場合の対応方法を書いたリーフレットも別に用意した。

医療従事者向けのリーフレットには、接種後に体調の変化を訴えられた時の対応として、「HPVワクチン接種との関連を疑い症状を訴える患者が存在することを念頭に置き、傾聴の態度(受容、共感)を持って接し、診療にあたってください」という注意も盛り込んでいる。

「ワクチンとは関係ない」と訴えを突っぱねられ、 患者の不信感や不安感が膨らみ、より症状が悪化したり、ドクターショッピングを繰り返したりしたケースが相次いだ教訓からだ。

委員から評価と共に注文相次ぐ「最後の文言わかりにくい」

委員の一人、濱田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター教授は、「とても見やすくなった」と評価する一方、末尾の文章について注文をつけた。

「最後の決め文句のところで『積極的におすすめしているわけではありません』という意味の言葉が書かれ、大事な言葉になると思いますが、相変わらずよくわからない」

「いろんなことは詰め込めすぎられている。ここで一番言いたいのは何なのか。『お勧めするお知らせを送るわけではない』ということを一番言いたいのですかね? これを見てもなんだかよくわからない」

そして、一文に詰め込み過ぎずに、「『接種いただけるように情報をお届けするものです』『ただし、お勧めするお知らせをお送りするものではありません』と二つに分けないと一般の方はわからない」と改善案を提案した。

他には、

「わかりやすくなったとはいえ、まだ難しい。絵を大きくして、文章で補足するぐらいが中学1年生は読みやすい。お子さんにはわかりやすく、保護者にはもう少し詳しくメリハリをつけてもいい」

「QRコードで、(接種後に体調を崩した時に診療する)協力医療機関のリストをすぐ見えるようにできないか」

「協力機関にどのように紹介したらいいか、医師向けのリーフレットに具体的に書くべきではないか」

などの意見が出た。

バズフィードの女性社員はどう見たか

このリーフレット、バズフィードの若手女性社員たちはどう見ただろうか? メディアで働き、日々、読者にどうやったら伝わるかを試行錯誤しているスタッフたちだ。

まず、概要版でも子宮頸がんとはそもそもどういうものなのか、もう少し詳しく知りたいという声が多かった。

「概要版にも、詳細版の『子宮けいがんの現状』にあるような説明があってもいいと思いました。特に子宮のけい部とはどこなのかという図解。自分の体なので、『どこにできるがんなのか』はっきり説明されないままだと、実感や危機感があまりわかないかも…」(26歳)

「概要版にも、子宮頸がんの現状の説明が最初にあったほうがいい気がします。
説明自体はわかりやすく、ワクチンについて理解できるので、最初に子宮頸がんと関係があるということや現状の説明を入れて、読ませる仕組みにした方がいいと思います」(21歳)

表紙やイラストへの注文も多い。

「あと概要版の(詳細版もですが…)表紙デザインのメッセージ性がゼロで、ワクチン推奨の意図と何も関係ない絵なので????ってなりました笑」(28歳)

「表紙のイラストに関してですが、文章(テーマ)を何に変えても成り立つものだなあと個人的に思ってしまいました フリー素材みたいな…。重要視せず、さらっと見てしまうな〜という印象です」(23歳)

「あなたと関係のあるがんがあります、がはっとさせる文章のはずなのに、場所と大きさのせいでインパクトがない気がします」(21歳)

全体の評価は分かれた。

「私は言われるままワクチン受けましたが、もし受けるか受けないかの選択肢が同等にあった場合、これを見て『受けなきゃ!!』とはならないですね」(26歳)

「自分は学生の時に同ワクチンを打てなかった世代です。リーフレットを手に取り正しい情報を得ることはワクチン摂取への第一歩。今対象年齢である子や親御さんに訴えかける内容で作ってほしいです」(28歳)

「結局どっちなの?受けた方がいいの?リスクがあるの?と迷いが生じるなぁと思いました。多分作っている方も迷っているのだろうなという感じが伝わりました。関心がなかったら何もせず終わってしまう人が多そうかなと思いました」(38歳)

「インフルエンザワクチンのような、できればやるといいよ〜的な印象を受けました!もう少しメリットを最初に書いてもいいのかも...?」(31歳)

一方で「わかりやすかった」という声もあった。

「私が高校生当時はワクチンが定期接種ではなく、テレビで副作用で訴えてる人たちを見て危ないワクチンというイメージを数年前まで持っていました」

「こちらのリーフを見て、がんになる人や死亡率よりも副作用の率の方が低いことが書いてあり、安心材料になるのかなと思いました(でも副作用に書いてあることが自分に起こったら...と不安もありますが)。がんになる人や死亡率がクラスの人数で例えられてるのがとてもわかりやすかったです!」

「個人的にですが、どこに注射を打つのか気になってたので詳細版読んで解決しました。私以外にも、どこに打つんだろうって不安に思う高校生もいる気がして、概要版にも載せてもいいんじゃないかなーと思いました。大人になったら5万もかかるんですね。高校生羨ましい」(28歳)

親の立場からも

娘がいる親の立場からの意見もある。

「『対象年齢の女の子は公費。※公費の補助がない場合の接種費用は......』と注釈があるのですが、この年齢を過ぎると公費補助がなくなるというのはできれば明確に書いてもらえたらと思いました。小1くらいで子どもの予防接種ラッシュの時期が終わっていて、通知も届かなければうっかり見過ごしてしまうので、この年代を親がしっかり頭に入れておけるようなアピールの仕方がよいのではと思います!」(42歳、7歳の娘あり)

「詳細版をしっかり読めば概要やワクチンのメリットが理解できました。ただなんか読むモチベーションがわかないのはなんでか……。子宮頸がんになったらどうなるのかが一番知りたいので、概要版にもそこをまず紹介してほしいなと思いました!」

「概要版に『まずは知ってください』っていう項目があって、知るためのリーフレットなのでは…???と不思議に思いました。相談先の提案が『周りの人やかかりつけ医』ってなってて、うーんとなりました」(31歳、3歳の娘あり)

厚労省の林修一郎・予防接種室長によると、このリーフレットは過去にヒアリングした対象年齢者や保護者の意見を参考に作ったが、今回作ったものについて意見は聞いていないという。

今後2週間ぐらい委員から意見を募集して、改善バージョンを作成する予定だ。