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厚労省、HPVワクチンの対象者に情報提供徹底を自治体に通知 新リーフレットも完成

厚生労働省は HPVワクチンの対象者に情報提供するように自治体に通知しました。新しいリーフレットも完成しました。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

小学校6年生から高校1年生の女子は公費でうてる定期接種となっているが、個別にお知らせが届かないこともあり、接種率が1%未満に落ち込んでいることが問題となっている。

この問題について、厚生労働省は10月9日、対象者や保護者に対して個別に情報提供することを徹底するよう求める通知を出した

このワクチンについては2013年4月に定期接種となったが、接種後に体調不良を訴える声が相次ぎ、厚労省は同年6月に対象者に個別にお知らせを送る「積極的勧奨」を差し控えるよう求める通知を自治体に送っている。

この「積極的勧奨」は再開されたわけではないが、差し控え通知の一部を改正し、「その周知方法については、個別通知を求めるものではないこと」という文言が削除された。

これまで、個別にお知らせが届かないため、自分が対象者であることも知らずに接種の機会を逃してしまうことが問題になっていた。

新リーフレット 「接種をおすすめするお知らせをお送りするのではなく」は残る

公費の接種対象者にお知らせが届かない問題に対して、わかりやすい情報提供のリーフレットを対象者に個別に送る方針は、9月25日に開かれた厚労省の副反応検討部会で了承された。

厚労省予防接種室の担当者は、「現在はこのワクチンがあるということさえ知らないという対象者が増えているので、接種するかどうか判断するために、まずは安全性や有効性の情報を提供することが必要だと考えた」と話す。

都道府県への通知には、「これらについて貴管内市町村(保健所を設置する市及び特別区を含む。以下同じ。)及び関係機関等へ周知を図るとともに、その実施に遺漏なきを期されたい」と、個別通知を徹底するように求める文言も入れ込まれた。

わかりやすく改定されたリーフレットの概要版は以下の通りだ。

ただし、積極的勧奨の差し控えを再開したわけではなく、「接種をおすすめするお知らせをお送りするのではなく」という文言もリーフレットの最後に残る。

積極的勧奨の差し控えを継続することと、今回の個別通知の徹底との整合性について予防接種室の担当者に質問したところ、「国がこのワクチンをお勧めしているわけではないのは継続している」と話す。

だが、定期接種とは国が病気にかかることを予防したり、人に感染させてしまうことで社会に病気がまん延してしまうのを防ぐことを主な目的として、予防接種法に基づき公費を出して国民に受けてもらうものだ。

予防接種のQ&Aで、厚労省はHPVワクチンも入っている「A類疾病」の定期接種について、「誰もが受けるべき予防接種です」と説明している。

この矛盾について担当者は、「公費でうてる定期接種にしているのは、国民に広く接種してもらうためであるのは間違いないが、接種の判断をするのはそれぞれの皆さん。公費でうてること自体知らない方が多いので、判断するために必要な情報を提供する必要があるということです」と説明する。

このワクチンに反対する人のハレーションを考慮しながらも、接種の機会さえ逃している対象者に情報が届くようにするというウルトラCの解決策だったと見られる。

リーフレットの詳細版はこちら接種した後バージョンはこちら

積極的勧奨の再開の議論は?

今後、積極的勧奨の再開はいつ議論されるのだろうか?

「今回の個別通知の徹底と、積極的勧奨再開の議論は切り離して考えている。具体的にいつ議論するという予定はない」と厚労省の担当者は言う。

つい先日には、スウェーデンから17歳未満でのHPVワクチンの接種が浸潤子宮頸がんを88%近く減らすことを示す論文も出された。今回改定されたリーフレットには、「がんそのものを予防する効果を実証する研究も進められています」とだけ書かれている。

これについても、「そのデータが出てきたことは厚労省でも把握しています。今後の政策の議論にも影響することもあり得ますが、具体的にどうとは言えないし、リーフレットの改定をどういう頻度で行うかもわからない」と担当者は話している。