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HPVワクチン 男性接種を厚生労働相が承認

これまで女子のみの接種が承認されていたHPVワクチン。厚生労働相は12月25日、男性接種と肛門がんへの適応拡大を承認しました。これで男性も副反応があった場合に公的な補償を受けられるようになります。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐとして、日本では女性のみが接種対象として承認されてきたHPVワクチン。

このワクチンの一つ「ガーダシル (4価ワクチン)」(MSD)について、厚生労働省は12月25日、男性接種と肛門がんへの適応拡大を承認した。

HPVは男性もかかる中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどの原因ともなり、異性間、同性間は問わず、性的な行為でうつし合うことがわかっている。

これまでは男性への接種は「適応外使用」だったので、万が一、接種後に不具合が起きても公的な補償が受けられなかった。国のお墨付きを得た今後は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の補償を受けられるようになる。

また、今のところ、男性は任意での自費接種(3回接種で5万円前後)となるが、今後、女子と同様、公費で受けられるように定期接種化が検討される。

肛門がんにも対象を拡大 男性も9歳以上に 

MSDが製造販売しているのは、HPVの中でも特にがんになりやすい「16型」「18型」、性器にできる良性のいぼである「尖圭コンジローマ」の原因となる「6型」「11型」の計4種類を防ぐ4価ワクチン「ガーダシル」。

厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は12月4日、男性接種と肛門がんへの適応拡大を了承していた。

HPVは中咽頭がん、陰茎がん、肛門がんなど男性のかかるがんにも関わることがわかっている。

今回、子宮頸がんや尖圭コンジローマに加え、新たに肛門がんの予防についても適応が拡大され、男性は女子と同じ9歳以上を対象とした。年齢の上限は設けていない。

MSDによると、肛門がんは年々増加しており、日本では、2017年に1086人(男性540人、女性546人)が新たに肛門がんにかかっている。

肛門がん(扁平上皮がん)は子宮頸がんと同様にHPV感染が原因となり、子宮頸がん同様、前がん病変の状態を経て発症する。その約80~90%にHPV感染が関係していると言われている。

肛門がんへの適応拡大について、「ガーダシル」は、16~26歳の男性1124人を対象とした国内での臨床試験で、ガーダシルが対象とする HPV6、11、16、18型の肛門性器部の持続感染を85.9%予防し、肛門内の持続感染を100%予防した。

今のところ、男性接種は任意となり全額自費負担となるが、ワクチンの安全性や有効性、男性を定期接種とした場合の費用対効果が詳細に審議され、定期接種化するかどうかを決めることになる。

世界ではおよそ100か国以上で男性も承認

MSDによると、「ガーダシル」は、2006年6月に世界で初めてメキシコで承認されて以来、130以上の国と地域で承認されており、男性への適応については100以上の国と地域で承認されている。

がんの疫学研究者で北海道大学大学院生殖・発達医学分野の特任講師、シャロン・ハンリーさんによると、2020年12月現在、HPVワクチンについて、男性も公費助成の対象としているのは、約40の国と地域だ。

日本もようやく世界標準に一歩近づいたことになる。

MSD副社長執行役員グローバル研究開発本部長の白沢博満氏は以下のようにコメントした。

「男性への接種対象拡大と肛門がんの予防適応の追加により、日本のHPVワクチンの接種環境が世界の水準に着実に近づくことができ、大変うれしく思います。今回の承認は日本のHPV関連疾患の予防における重要な一歩として、人々の命と健康を守り、日本の公衆衛生の前進に大きく寄与すると考えています」

なお、これまで販売されていたワクチンより効果の高い9価ワクチンも承認されているが、販売開始についてMSD広報部は「できるだけ速やかにとしか言えない」として時期は未定と答えた。