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今後50年で10万人が子宮頸がんに 今のHPVワクチン接種率が続いたら...

このまま放置していたら、毎年、本来予防できたはずの5000人前後が子宮頸がんになり、1000人前後が死亡するかもしれません。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防するHPVワクチン。国が積極的に勧めるのを止めてから5年4ヶ月が過ぎ、一時は70%程度だった接種率は0.6%まで落ち込んでいる。

そして、日本は先進国で唯一、子宮頸がんが増え続けている国だ。

もし、この低い接種率が続いた場合、ワクチンで防げたはずの子宮頸がんに毎年4200〜5800人がかかり、900〜1300人が死亡するという解析結果を、北海道大学大学院産婦人科学教室の特任講師、シャロン・ハンリーさんが発表した。

このままHPVワクチンの接種率が低かった場合に想定される子宮頸がんの発症や死亡者数を調べたシャロン・ハンリーさん
Naoko Iwanaga / BuzzFeed

このままHPVワクチンの接種率が低かった場合に想定される子宮頸がんの発症や死亡者数を調べたシャロン・ハンリーさん

このまま積極的な勧奨の中止が長期化すれば、今後50年間に10万人が子宮頸がんになり、2万人を超える死亡も予測される。

ハンリーさんは、最近、地震の被害があった北海道を例にあげ、「私たちは災害の被害を防ぐことはできませんが、子宮頸がんは防ぐことが可能です。防ぐためのツールである検診とワクチンの両方を使うことが私たちの義務なのです」と訴えた。

日本医師会・日本医学会の合同フォーラム「HPVワクチンを考える」で発表

10月13日に東京都内で開かれた日本医師会・日本医学会合同公開フォーラム「HPVワクチンについて考える」で発表した。オーストラリア対がん協会との共同研究で、ハンリーさんはこれに先立ち、国際ヒトパピローマウイルス学会でも同じ研究を発表した。

研究の目的は以下の3つ。

  1. HPVワクチンの積極的勧奨の中止で本来は子宮頸がんにかからなかったはずの患者数とそのために失われた命を具体的な数字で示す
  2. 積極的な勧奨の中止が長期化した場合に日本の女性の健康に与える影響
  3. 接種率が回復した場合に日本の女性の健康に与える影響


世界各国の政府が、子宮頸がん検診とワクチンに関する政策を決める時に利用している数理モデルを使って、解析した。

日本の平均余命や、HPVへの感染率、浸潤がんにおけるHPVの型別の感染率、現在の検診受診率、現在の子宮頸がんの罹患率や死亡率などを考慮した上で、日本の解析結果を出した。

再開がない場合と復活する場合で開く命の差

ハンリーさんらは、日本の予防接種行政について、以下の3つのシナリオを想定した。

  1. 積極的な勧奨が再開されなかった場合
  2. 積極的勧奨の中止が長期的に続いた場合
  3. ワクチン接種率が以前と同じ70%程度まで回復した場合


もっとも楽観的な3の「以前と同じレベルまで回復した場合」については、さらに、

  1. 2019年から2024年まで5年かけてゆっくり回復する場合
  2. 2019年にすぐに回復する場合
  3. 2019年にすぐに回復した上で、それまでにワクチンを受ける機会を逃してしまった女子の半分が、遅れを取り戻して接種する「キャッチアップ接種」を受けた場合


に分けて検討した。

日本医師会と日本医学会が合同で開催したシンポジウムで発表した。写真は、発表後の質疑応答
Naoko Iwanaga / BuzzFeed

日本医師会と日本医学会が合同で開催したシンポジウムで発表した。写真は、発表後の質疑応答

1%未満の接種率のままだと、毎年5000人前後が子宮頸がんに

その結果、積極的勧奨が再開されず、毎年の接種率が現在と同じ1%未満だと、本来防げたはずなのに、4217人〜5760人が毎年子宮頸がんにかかることが予想された。それによって死亡する人は毎年915人〜1308人に上る。

次に、2020年〜2050年に、積極的勧奨が全く再開されなかった場合は、50年間で10万864人が子宮頸がんを発症し、それによって2万1235人が死亡することが予測された。

ただし、積極的な勧奨が中止される前に既にワクチンを接種した女子については、2万5165人の発症を防ぎ、5048人の死亡を食い止めた効果も加味した数字となる。

ハンリーさんは、「これは素晴らしい結果であり、ここにお集まりの産婦人科医や小児科医、内科医、看護師などの医療職や学校の先生、保護者など皆さんの努力の賜物だと思います」と、わずかな期間でもワクチン接種を進めた関係者をねぎらった。

逆に、この5年4ヶ月の間、積極的な勧奨を中止した影響で、既に本来予防できるはずだった罹患者が2万6780人、それによる死亡者が7008人出てしまうことが予測されている。

この5年を超える実質的なワクチン中断で、防げるはずのがんが防げなかった残念な可能性が可視化された。

積極的勧奨を再開した場合

では、近く国がHPVワクチンの積極的勧奨を再開することを決めた場合、どれぐらいのがん発症や死亡が防げるのだろうか。

2019年にすぐに接種率が元のレベルに回復した場合、今後50年間で7万4084人の発症と、1万4227人の死亡を防ぐことができると予測される。

2019年にすぐに接種率が元のレベルに回復し、さらにこれまで受けるチャンスを逃してしまった女子の半分がキャッチアップ接種をしたとすると、これに加えて2万1328人の発症と4954人の死亡を防ぐことができる。

キャッチアップ接種はせずに、今後5年間でゆっくり中止前のレベルに接種率が回復したとしても、6万1719人の発症と1万1666人の死亡を防ぐことができるのだ。

この研究には限界がある。日本では子宮頸がんの発症率が年々増えているが、この解析ではこれについては考慮していない。

また、子宮頸がんに特になりやすいハイリスクHPVのうち、日本で使われている2種類のワクチン(2価、4価ワクチン)が防ぐ16型と18型についての予防効果しか考慮していない。

そのため、これらのワクチンが持つ別の型への感染予防効果や、新たに世界で発売されている9価ワクチン(日本では未承認)の効果は考慮されていない。2価、4価ワクチンでは子宮頸がんの6〜7割を防ぐ効果があるとされているが、9価ワクチンでは子宮頸がんの9割以上を防ぐと言われている。

ハンリーさんはこう強調した。

「私が示した予防効果の解析結果は、今後、9価ワクチンが日本でも使われるようになれば、より高くなります。来年までに接種率が回復したら、さらに9価ワクチンが承認されたら、子宮頸がんにかかる人や死亡者数をもっと多く減らすことができるでしょう」

接種率が持ち直したデンマークやアイルランドと日本の違い

ハンリーさんの発表によると、海外でも、デンマークやアイルランドでは、接種後に体調不良を訴える女子のテレビドキュメンタリーが流されたり、反対活動を行う市民団体の影響でそれまで8割以上と高かった接種率が急激に落ちたことがある。

だが、デンマークでは27%、アイルランドでは50%以下まで下がりながら、今は再び7〜8割まで回復している。

日本との違いをフロアから問われると、ハンリーさんはこう答えた。

「一番大切なのは、両国とも勧奨は中止していないことです。日本では積極的な勧奨が中止されています。(中略)専門家からの推奨も大きいです」

ハンリーさんはこう呼びかけた。

「アイルランドとデンマークの両国が示すように、日本でも接種率の回復に成功することは不可能ではありません。両国は様々な分野の関連する団体が、コミュニティーと関わりながら協働すれば、HPVワクチンに対する国民の信頼が再び得られることを私たちに示してくれました。日本でも私たちが力を合わせることで同じように達成できることを心から願っています」

Naoko Iwanagaに連絡する メールアドレス:naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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