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アフターピル、オンライン処方だけで終わらせないで 産婦人科医やNPO代表が市販化を陳情

避妊の失敗や性暴力による望まぬ妊娠を防ぐために使われる「アフターピル(緊急避妊薬)」のオンライン処方解禁が決まりましたが、産婦人科医の有志や市民団体代表が、市販化を求めて自民党の野田聖子氏ら女性議員に陳情しました。

避妊の失敗や性暴力による望まぬ妊娠を防ぐために事後に飲む「アフターピル(緊急避妊薬)」。

厚生労働省の検討会で、オンライン診療で処方を受けられるようにすることが決まったが、当事者の女性がより早く薬を手に入れて確実に避妊できるように、産婦人科医有志や市民団体代表が、自民党の女性議員らにアフターピルの市販化などを陳情した。

アフターピルは、無防備な性行為後72時間以内に飲んで、妊娠を防ぐ薬。現在、市販化されておらず、医療機関が開いていない夜間や休日に必要になった時に手に入れるのに苦労するため、市販化やオンライン処方が議論されてきた。

「オンライン処方解禁で終わらせないで」

陳情したのは、先日、現場でアフターピルを処方する産婦人科医に対し、産婦人科有志グループで緊急アンケートを実施した産婦人科医の宋美玄さん、太田寛さん、窪麻由美さんと、アフターピルの市販化を求める署名活動を実施している「NPO法人ピルコン」理事長の染矢明日香さん、性教育や避妊について考える「#なんでないのプロジェクト」代表の福田和子さん。

自民党の衆議院予算委員長で前・女性活躍担当大臣の野田聖子議員、日本看護協会出身でアフターピルの院内勉強会事務局を務めてきた木村弥生衆院議員、小児科専門医でアフターピルや性教育の問題に取り組んできた自見はなこ参議院議員に6月21日、面談した。

宋さんは約500人の産婦人科医の緊急アンケートで、6割が市販化に賛同していることを示し、「女性のリプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康や権利)を守るために、アフターピルをオンライン処方できるようにしたということだけで終わらせないでほしい」として、以下の二つのことを訴えた。

「72時間以内と言ってもできるだけ早い方が避妊の効果は高いので、アフターピルの検討会を作り、最終的には薬局で買えるようにしてほしい。6年制教育となった薬剤師の専門性を生かして、必要な知識は薬剤師から伝えても女性の健康を守ることはできる」

「そして、より確実な避妊法も含め、思春期、月経随伴症状、更年期障害の診療を産婦人科医が丁寧に取り組めるよう、初診・再診料に限られている診療報酬をもっと広げてほしい」

染矢さんも、市販化を求める署名が3万筆に迫る勢いであることを伝え、「アクセス改善という視点で言うと、オンライン診療が解禁されたことで終わらせるのではなく、OTC(市販薬)化にぜひつなげていただきたい」と訴えた。

「女性を軽視した議論」

野田議員は、「当初、性暴力被害者に限る、という議論が行われていたのを聞いて、おかしいと思っていました。実態を知らない人が議論しているんだなと思った」と話し、「初潮が始まった時からのかかりつけ婦人科医も必要。女性が健康に生きていくにはどうしたらいいかという視点で考えたい」と理解を示した。

また、自見議員は、「オンラインでアフターピルだけ解禁すればいいのではないかというやや乱暴な議論になっていて、女性を大事にするという視点が欠如していることに当初は怒りを感じた。そもそも今すぐ飲まなくてはならない薬なのに、郵送で処方箋が届くのを待ち、薬局に行って薬剤師の目の前で飲んだことだけの確認で終わるとするのは安直に過ぎる」とこれまでの検討の問題点を指摘した。

その上で、女性を守るという観点から性教育の充実や、薬剤師の専門性を生かした関わり、オンライン処方を行う医師が司法の知識も含め性被害について勉強することなどの必要性にも触れ、「矮小化された議論から始まり、女性を軽視し過ぎていると思っていたが、関係団体の協力を得ていいものにしていけるだろう」と、総合的に政策を進めていくことを約束した。

木村議員も、助産師など他の医療職が関与していく必要性を語った。

そして、野田議員は、「市販化に取り組む宿題が一つ残っているし、性教育や低容量ピルなど未整理になっていることについても引き続き取り組む」とした。

アフターピルをめぐっては、厚労省の検討会で6月10日、性暴力被害に限らず、医療機関を受診するのが心理的に難しい人や過疎地で近くに医療機関がない人がオンライン診療で処方が受けられることが決まった。

ただ、検討会では、転売などの悪用を防ぐとして、オンライン処方を受けるには、事前に性犯罪被害者の支援センターなどに電話するなどして、利用できるか医師に判断してもらうなどの要件が設けられ、ハードルの高さが批判されている。