海外に住む13歳の少年が、パズルゲーム『テトリス』で人類初の「完全制覇」を達成し大きな話題を呼んでいます。
発売から35年、これまで誰も成し遂げられなかった偉業に、「AIを越えた」「人はまだ機械を越えられるのか」など世界中のゲームファンから惜しみない称賛が寄せられました。
記録達成の瞬間(38:30ごろ~)
前人未到の偉業を達成したのは、アメリカ・オクラホマ州に住む13歳の少年ウィリス・ギブソン(Blue Scuti)さん。
ギブソンさんは、1989年に発売されたNES(海外版ファミコン)版『テトリス』で、これまで誰も到達したことのなかった「レベル157」に到達。最後はゲーム側がクラッシュし、事実上の『テトリス』完全制覇を達成しました。
記録達成の瞬間
1月2日にYouTubeへ投稿された動画では、ギブソンさんがレベル157に到達し、ゲームがクラッシュするまでの様子が収められています(記録達成の瞬間は38分30秒ごろから)。
レベル29を超えているのでレベルの表示もおかしなことに
『テトリス』は、旧ソ連のコンピュータ技術者、アレクセイ・パジトノフさんが制作したパズルゲーム。上から落ちてくるブロックを組み合わせて、横一列に並べると消える“落ち物パズル”の始祖と呼ばれる作品です。
日本でも、セガのアーケード版や任天堂のゲームボーイ版、BPS社によるファミコン版など多くの機種で販売され、一大ブームを巻き起こしました。
今回ギブソンさんが挑戦したのは、数ある『テトリス』のバリエーションの中でも特に難易度が高いとされる「NES版」です。
日本で発売されていたファミコン版とは、操作方法からブロックの落下速度といった細かな仕様までまったく異なっているのですが、中でもNES版『テトリス』の攻略を難しくしていたのが「高レベル時の落下速度の速さ」でした。
ただでさえ落下スピードが速いのに加えて、NES版では現代のテトリスのように、「ブロックが着地してから完全に接着されるまでの猶予時間」もありません。そのため高レベルになると落下するブロックを左右に移動させることすらままならず、左右キーを押しっぱなしにして移動させる通常の操作では、長らく「レベル29が実質的な限界」とされていました。
研究によって、一気に攻略が進んだNES版テトリス
しかし、あるときこの「実質的な限界」が、競技シーンの研究によって破られることになります。
左右押しっぱなしでも間に合わないのなら、押しっぱなしよりも速く左右キーを連打すればいい――。2017年ごろに生まれ、2018年の世界大会でチャンピオンが使ったことから一躍有名になったこの手法は“ハイパータッピング”と呼ばれ、この手法が編み出されたことで、NES版『テトリス』と人類の戦いはついに「レベル29の先」へと突入することになります。
さらにその後、2020年にCheez_Fishさんがコントローラーを背面からたたいて連打する“ローリング”と呼ばれる新テクニックを発見。ハイパータッピングよりも安定して連打できるこの手法が広まると、戦いの世界はとうとう「レベル100越え」に……。
ローリングと呼ばれるテクニック
この時点でも既にだいぶ意味がわからないことになっていますが、ギブソンさんは今回、前人未到だった「レベル157」までゲームをプレイ。最終的にゲームがクラッシュして終了する“キルスクリーン”と呼ばれる現象を引き起こすことに成功しました。NES版『テトリス』はエンドレスでどこまでもゲームが続くため、キルスクリーン到達は実質的な「完全制覇」を意味しています。
通常の操作だけでも難しく、どこにブロックを置かなければならないかの瞬時の判断も必須。ローリングのようなテクニックを駆使したうえでも、レベル157まで行くのは並大抵のことではありません。プレイの終盤になるとブロックの表示がおかしくなり、ほぼ見えないような状態になったことも……。
ブロックの表示がおかしくなって、点しか見えない!
そんな苦難を乗り越え、ゲーム自体に改造などの手を加えずテクニックだけでレベル157まで達成したのはギブソンさんが史上初。この偉業にSNSでは、
💬 「ある意味、AIを越えた」
💬 「人間の可能性を示すいいニュース」
💬 「新時代到来してた」
💬 「人はまだ機械を越えられるのか」
など多くの称賛の声が寄せられました。
なお、ゲーム自体の改造など特殊な工程は必要になるものの、AIによるプレイでは現状「レベル237」まで到達できているようです。
人間がプレイした場合でも、理論上はまだまだ記録を伸ばせる可能性があるとのこと。NES版テトリスの競技シーンは、今日も未知の記録を求めて熱い挑戦を続けています。