「まだ早い」と病院から帰された30分後、道端で出産した女性

    「生まれたての赤ちゃんを自分のスカーフでくるんでくれた見知らぬ人に感謝を伝えたい」

    「まだお産が進んでいないから」と病院から帰された直後、ロンドン中心部の歩道で赤ちゃんを産むことになった女性がいる。

    リジー・ハインズさんの息子、ルイスくんは2016年12月22日、ロンドンの地下鉄トッテナム・コート・ロード駅の外で生まれた。

    その日、ハインズさんは出産のためユニバーシティ・カレッジ・ロンドン病院(UCLH)を訪れたが、お産が始まってまだ2時間半しか経っていないのでまだ受け入れられないと言われ、病院を後にしていた。その30分後、ルイスくんが生まれた。

    UCLHは文書を出し、ハインズさんに謝罪したと説明した。ハインズさんは病院スタッフも「難しい判断を求められるとは思う」と述べている。

    1年が経った2017年12月、ハインズさんはこのときの話をFacebookに投稿した。生まれたばかりの子が寒くないようにと自分のスカーフでくるんでくれた見知らぬ人にお礼を伝えたい、そしてできればスカーフをお返ししたい、とつづった。





















    「その方たちの優しさと、助けてくれたすべてのみなさんに、感謝を伝えたいと思っています」とハインズさんは言う。


    「人生の中でも特別な、かけがえのない体験を見知らぬ人たちと共有するというのはすばらしいことです。みなさんが自分のことは脇に置いて助けてくれて、応援してくれているのを感じましたから。あのときの息子は元気にしています、ということも伝えたくて。ルイスは期待どおり、丈夫でたくましく育っています!」

    ハインズさんによると、最初に訪ねたとき、病院からは6時間以内くらいにまた来るように言われたという。

    「でも、それではだめだろうとわかっていたので、夫が近くのホテルをとってくれました」とハインズさんは振り返る。「そこにほんの30分くらいいたところで、急いで病院へ戻った方がいい状態になったのですが、もう間に合わなくって」

    陣痛がきていると考えた夫は、ハインズさんを歩道に座らせ、陣痛の合間に病院へ連れて行こうとした。

    「でも私は、このまま歩道で赤ちゃんを産むことになると感じていました。そう口に出して言う余裕はなかったですが」とハインズさん。

    まわりに人が集まりはじめ、中には非番の医師もいたという。医師はとても落ち着いていて心強かった、とハインズさんは言う。

    「赤ちゃんはあっという間に生まれてきました。私はパジャマとTシャツを着て、裸足で、上にロングコートを羽織っていました。でも、まわりは誰も生まれたことに気がつかなくて」

    「『生まれた!』と言ったんですが、そばにいた女性に『大丈夫、生まれる前に病院へ連れて行くからね』と言われたので、『違う、もう生まれたの!』と答えました」

    「で、パジャマを開けると赤ちゃんがもぞもぞしていて、泣き声をあげたんです。誰かが『クリスマスの奇跡だ!』と声をあげました」

    そのあと母子は病院へ向かって医師に診てもらい、赤ちゃんの健康状態は良好だった。病院からは、最初に来たときに受け入れずに申し訳なかった、と謝罪があったという。自宅にいる方がお産が早く進む場合が多いから、という説明だった。

    「難しい判断が求められるのは理解していますが、方針について考えるべき点はあるのではないかと思います」とハインズさんは話す。「細やかなケアが必要なときですから。お産を迎えた女性が、希望すれば病院で安心してゆったり過ごせる場所があるといいですね」

    1年が経った今、生まれたばかりの赤ちゃんが寒くないようにと通りがかりの人が自分のスカーフでくるんでくれたことを思うと、「すてきだし心が温かくなる」という。ただ、そのときは状況が状況だったため、名前や連絡先を聞くことはできなかった。

    「生まれたてのルイスの小さな身体を最初に包んでくれたのが、この子が寒くないように気遣ってくれた見ず知らずの人のスカーフだった、というのがとてもすてきだと思うんです。なんて温かく迎えられたんだろうって」

    UCLHの広報は「昨年のエリザベス・ハインズさんの出産の件があった後、院内調査を行い、今回の経験を教訓にして同様のケースが起きるリスクを減らすよう検証しました。ハインズさんにも謝罪の意を伝えています」と述べている。

    この記事は英語から翻訳されました。