小池知事、築地市場の移転を延期 3分でわかる移転問題5つのポイント

二転三転した移転問題

築地市場の移転が延期される。小池百合子知事が決断した。そもそもなぜ移転をする必要があり、今回、延期が決まったのか。

Atsushi Tomura / Getty Images

①老朽化し、狭くなった。現状のままでは限界が。

Daniel Berehulak / Getty Images

築地市場は、1935（昭和10）年に開業。もともと日本橋にあった魚河岸が関東大震災で焼失し、現在の場所に移転してきた。

80年以上が経った施設は老朽化し、作業スペースが足りなくなっている。建物の一部が劣化して落下したり、荷物を屋外に置かざるをえなくなったり。古い建物だけに、アスベストが使われているという問題もある。

商品の品質や鮮度保持にマイナスだし、作業効率は落ちる。

東京都は「このままの状態が続くと、築地市場が都民の食生活を支える役割が果たせなくなるおそれがあり、また震災などの影響も懸念されることから、一刻も早く、施設を抜本的に改善する必要があります」と説明している。

②建て替え→白紙→移転

Yoshikazu Tsuno / AFP / Getty Images

都は1988年に同じ場所での建て替え計画をまとめ、1991年からは立体駐車場の工事なども始めた。

しかし、総工費が計画段階の2380億円から3400億円へと膨らんだこと、工期が長引いたことから、1996年、計画は白紙になった。

その後も都と業界の協議は続き、2001年、石原慎太郎都知事時代に、豊洲地区への移転が決定した。

豊洲が選ばれた理由について、都は「用地・交通・商圏の全ての条件を満たす場所は、（候補地で）豊洲地区以外になかった」としている。

③でも、土壌汚染がひどかった

浄化対策が進んでいた予定地=時事通信（2010年撮影）

候補地の豊洲では1988年まで、東京ガスの工場が都市ガスを作っていた。

それによる土壌汚染が発覚したのは、2008年。環境基準の約4万3千倍の「ベンゼン」などの有害物質が検出されたのだ。

都は総額858億円の予算を投じ、汚染対策を進めた。地下2メートル分の土を入れ替えたうえで、地上2.5メートル分の盛り土工事を実施。地下水も浄化している。

この問題も相まって、移転にかかる総事業費は計5900億円に。2011年度に想定された金額の1.5倍に膨らんだ。

なかでも建設費は990億円から2752億円と、3倍近くに高騰している。これについては、小池知事も31日の会見で「巨額かつ不透明な費用増加」と指摘している。

④移転反対論の背景には、仲卸業者の財政難

Keith Tsuji / Getty Images

一部の市場関係者は、移転への反対や延期を求めている。

土壌汚染の問題に加え、移転予定日が11月で、年末年始の超繁忙期の直前になること。新市場の店舗が狭く、「マグロを切りづらい」ことなどがその理由だ。

ただ、それだけではない。背景には移転を余儀なくされている業者の財政難も隠れている。

日経新聞によると、昨年度は640あった業者が半減する可能性もあるという。

引っ越し費用は各業者の負担だ。それゆえ、すでに経営が厳しかった小さな仲卸業者は統廃合や廃業を迫られるケースが多いといい、移転に躊躇している現実もある。

⑤小池知事の決断のなぜ、そして影響は

豊洲新市場を視察する小池知事＝時事通信（8月16日撮影）

新市場は本来、11月7日に開場するはずだった。それなのに小池知事は、なぜ移転を延期しようとしているのか。

その理由に挙げたのが、新市場の地下水調査が終わっていないことだった。小池知事は「都民の納得、安心を優先させたい」として、11月に始まる最終調査の結果を待つべきとのスタンスを示している。

ただ、移転延期をすることによる影響も大きい。

朝日新聞によると、移転を延期すると、新市場の維持費に1日700万円かかる。築地市場跡地を走る環状2号線の建設が、2020年の東京五輪開催に間に合わなくなる可能性もある。

小池知事は31日の会見で、こうも話している。

「何を今更という意見があることも承知しているが、立ち止まって考えるべき」