流行語大賞にノミネートされ、トップ10入りをした「保育園落ちた日本死ね」。「反日的だ」などとバッシングの矛先が向いた歌人がいる。

産経新聞がこの騒動を「『日本死ね』トップテン入りで、審査委員の俵万智さんに「残念で仕方ない』と批判・炎上 」と報じるなど、波紋は広がった。

俵さんは12月10日、「ちょっと見ないうちに、何か書かないと次に進めない雰囲気になっていました。だから一回だけ、その件について、私の思いを書きますね。お騒がせ&ご心配おかけしました」とつぶやき、下記のように思いを綴った。
「死ね」が、いい言葉だなんて私も思わない。でも、その毒が、ハチの一刺しのように効いて、待機児童問題の深刻さを投げかけた。世の中を動かした。そこには言葉の力がありました。お母さんが、こんな言葉を遣わなくていい社会になってほしいし、日本という国も日本語も、心から愛しています。
確かに「日本死ね」は批判的だし、「死ね」という言葉は軽々しく使うべきではない。

厚生労働省が発表した2016年4月1日時点での待機児童数は、全国で2万3553人。8年連続で2万人を超えており、国の待機児童対策が追いついていない状況は歴然としている。

「日本を愛しています」と書いた俵さんは、ネットで批判されるように「反日」なのだろうか。
同じように「反国家的」だと指摘され、「私たちは愛国者だ」と反論した人がいる。
英メディア「ガーディアン」のアラン・ラスブリッジャー編集長だ。
2013年、アメリカやイギリスの国家機密に迫る報道を続けていたガーディアンは、英国会で批判に晒された。そして、ラスブリッジャー編集長はこう質問を受けた。「あなたは国を愛しているのか?」

ラスブリッジャー編集長はこう答えた。
「そういう質問を受けることにちょっと驚いています」と前置きをしてから、編集長が語ったのは次のようなことだった。
「私たちは愛国者です。そして、私たちが愛国的であるためには、この国に民主主義の本質と言論の自由の本質が必要なのです。それを議論し、報じることができることも」
さらに、こうも繰り返した。
「私がこの国を愛するのは、書くこと、報じること、考えることに対して自由であるからなのです」