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「加計学園」主要5紙はどう報じたか 立ち位置くっきり、社説を比べてみた

前川文科前事務次官の証言や文科省の調査をどう報じているのか。

「総理のご意向」などと記した文書の存在をめぐり、議論を呼んでいる学校法人「加計学園」の問題。5月25日には前川喜平・文科前事務次官が文書は「本物」と証言するなど、事態は広がりを見せている。

いったい、主要5紙はそれぞれどんな立場で問題を報じているのだろうか。BuzzFeed Newsは、社説を比較してみた。

1. 毎日新聞(5月18、23、26、28日)

朝日新聞の報道があった翌18日の社説「学部新設で『総理の意向』 事実関係の解明が必要だ」では、森友問題に言及し、政府に「しっかりした説明」を求めた。

「森友学園」の問題では、首相の妻の関与が焦点となっている。「総理のご意向」という官庁の文書の文言は、よりいっそう不可解な印象を与える。

また、23日の「文科省の『総理の意向』調査 これで幕引きとはいかぬ」では、個人PCを調べなかったことを「結論ありきの調査」と批判。

26日の「『加計学園』問題で新証言 もう怪文書とは言えない」では「文書が確認できないという言い訳は通用しなくなった」とし、こうも指摘している。

前川氏に証言してもらい、真相をはっきりさせなければ、疑問は解決しないだろう。

日に日に厳しいタッチになる毎日新聞。28日の「安倍首相の在任 戦後3位に 『1強』のひずみは深刻だ」では、「府省の幹部人事は今、内閣人事局が握っている」ことが官邸への忖度を生んでいると指摘。

「菅義偉官房長官の対応は前川氏に対する個人攻撃」と批判し、「安倍1強のひずみ」をこう論じた。

解明を拒む姿勢に異を唱える声は自民党の中ではごく少数だ。深刻なのはそこだ。

2. 朝日新聞(5月18、22、26日)

自らが口火を切った翌朝の社説「加計学園問題 疑問に正面から答えよ」では、問題にこう言及している。

事実であれば、内閣府が「総理のご意向」をかざして首相の友人に便宜をはかろうと動いたととれる。首相と政府の信頼に関わる重大な事態だ。

そのうえで、「森友学園への国有地売却問題とも重なる」と指摘。「森友学園問題での財務省のような、事実究明に後ろ向きな態度は許されない」と結んだ。

22日の社説「安倍政権 知る権利に応えよ」では、文科省の調査が個人PCに及んでいない点を「あまりにも不十分で、問題の沈静化を図ったとしか見えない」などと、政府の対応を批判している。

情報公開に対する国の後ろ向きな態度は、国民主権を支える「知る権利」を脅かすものだ。

前川氏の証言後の26日の社説「前次官の証言 国会の場で解明せよ」では、「解明するのは、政府の、そして国会の責務である」と指摘。こう厳しい言葉を投げかけた。

このままほおかむりを続けることは許されない。国政に対する信頼の根幹がゆらいでいる。

3. 日経新聞(5月19、27日)

19日の社説「獣医学部新設の経緯を示せ」では、「政策判断の経緯を明らかにしていく必要がある」と言及した。

官邸から直接の指示があったのか。内閣府側が首相の意向を忖度したのか。それとも学部新設に消極的な文科省を動かすために「官邸の印籠」を使ったのか。事実が知りたい。

そのうえで、森友問題に関する財務省の対応が「調査に後ろ向き」と批判し、加計学園に関しても「政府は様々な疑惑を自ら払拭する姿勢で事実を明らかにしてもらいたい」と結んだ。

また、27日の社説「戦後3位『長きをもって貴しとせず』」では、「長期政権の弊害が指摘される場面が増えた」と指摘。森友問題に触れながら、加計学園についても強めのトーンで政府の姿勢を批判している。

前川氏らの国会招致を含めて事業認定の経緯を明らかにする必要がある。十分な調査もせずに幕引きをはかるような姿勢では、政治不信を深めるだけだ。

4. 読売新聞(5月27日)

社説「加計学園問題 『特区指定』の説明を丁寧に」では前川氏の証言を批判的に論じながら、政府にこう呼びかけた。

前次官が在職中の政策決定を公然と批判する。異例の事態である。政府には、疑念を払拭する努力が求められよう。

前川氏が「行政がゆがめられた」と語ったことについては、「これが事実なら、なぜ現役時代に声を上げなかったのか」と、菅義偉官房長官と同じ主張を展開。

そのうえで、「政府は、特区を指定した経緯や意義について、より丁寧かつ踏み込んだ説明をすべきだろう」としながら、こんな見解を示している。

まず特区に限定した規制緩和は理解できよう。規制緩和は安倍政権の重要政策であり、仮に首相が緩和の加速を指示しても問題はあるまい。

また、野党が森友問題に関連付けていることについて、「同列に論じるのは無理があろう」と結んだ。

5. 産経新聞(5月27日)

主張「加計学園問題 不毛な泥仕合は見苦しい」は、「まるで泥仕合であり、見苦しくさえある」との書き出しで始まる。

野党側は同氏の国会招致を求め、政府側からは同氏に対する個人攻撃が聞こえてくる。不毛な論戦であるとしか、いいようがない。

そのうえで、「推進の指示があったとしても規制改革は政権の重要政策であり、不自然とはいえない」と指摘。「忖度」の有無が焦点であれば「水掛け論」になるとした。

また、前川氏の「行政がゆがめられた」という発言については、「事実なら自身の在職中に対処すべきであり、あまりに情けないではないか」と批判。

前川氏が「出会い系バー」に通っていた理由について、「女性の貧困について調査をしていた」と述べたことを批判しながら、こう結んでいる。

この問題は今後も何の結論を得ることなく、政官界の評価を落とすことに終始するだろう。

BuzzFeed Newsでは、前川事務次官の発言をめぐる経緯を【読売にスキャンダル報じられた元事務次官、週刊文春に「加計学園の文書は本物」と証言】という記事にまとめています。