ウクライナ侵略をめぐり、アメリカの駐日大使と駐日ロシア大使館がTwitter上で直接、日本語で「レスバトル」を繰り広げ、話題を呼んでいる。
キーウ近郊・ブチャで多数の市民の遺体が見つかった事件など、ウクライナ情勢を巡る米露の応酬は激しさを増している。
国連など外交の場で各国が言い合うことは時々あるが、日本語のSNS上で大使や大使館公式アカウントがこうした「直接対決」をするのは、異例だ。
駐日ロシア大使館のアカウントが反応したのは、ラーム・エマニュエル駐日米国大使の公式アカウントが日本語で4月1日に発信した、以下のツイートだ。
「ロシア軍は恥ずかしげもなく人道支援部隊を襲撃し、食料や医薬品を盗んでいるため、国際的な支援がこれまで以上に必要となっています」
ロシア軍が人道支援の拠点や配給所などを攻撃したという情報や、赤十字の物資を没収したという情報は、ウクライナ側からたびたび、発信されている。
これに対し、ロシア大使館側は4月6日、ガルージン駐日ロシア大使の名前で「嘘を付き続けている」という言葉を用いて強く反発。ウクライナ政府が自国内でのロシア系住民を虐殺し続け、アメリカとNATO(北大西洋条約機構)はそれを黙認しているという内容を投稿した。
これに対し、米国のエマニュエル大使はさらに反発。日本語で4月7日、以下のように書き込んだ。
「きっと制裁で予算が厳しくなり、ケーブルテレビを解約せざるを得なかったのでしょう。それなら私がお手伝いしましょう」
エマニュエル大使は、多くの民間人の遺体が見つかったキーウ近郊ブチャに関するアメリカや中東のメディアの報道へのリンクを貼り付けた。
ロシアでは主要メディアが政府の管理下にあり、政府や軍の意向に反した報道を行えば最高で懲役15年の犯罪となることを背景に、「ロシアのメディアを見ても事実は分からない」という皮肉を込めたとみられる。
たびたび否定されるロシアの主張
なお、「ウクライナがロシア系住民をジェノサイド(虐殺)している」というのは、ロシアがウクライナ侵略を正当化するため、繰り返し用いてきた主張だ。
しかし、ウクライナ東部の状況を監視している国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)や欧州安全保障協力機構(OSCE)の報告では、ウクライナ東部でロシアが主張する「ジェノサイド」は、確認されていない。アメリカ国務省も「事実とする根拠はない」と指摘している。
また、ロシア側はブチャでの事件について「ウクライナによるフェイク」との見方を崩していない。
しかし、多数のメディアの発信や当事者の証言などから、「戦争犯罪」「虐殺」とする見方が強まっている。日本を含む国際社会からの批判はさらに高まっており、各国からの制裁も強化される方針だ。
主要20ヵ国・地域による会議「G20」をめぐっても、ロシアが参加するならばアメリカは欠席するとの考えを示すなど、アメリカとロシアの応酬も激しさを増している。