米紙ニューヨークタイムズは3月7日付の朝刊1面で、ロシア軍による砲撃で犠牲となったウクライナ人親子の遺体の写真を掲載した。
ロシア側は民間人への攻撃を否定しているが、現実にはジャーナリストや市民ら現地からの発信から、そうした行為がウクライナ各地で起きていることが確認されている。
(閲覧注意:この記事には、戦争の実態を伝えるため、犠牲者の写真が含まれます)
砲撃があったのは3月6日。キエフ近郊のイルピン市からの脱出ルートにあたる橋を渡った先のエリアだ。
橋はロシア軍の侵攻を防ぐために爆破されているが、避難をするために連日数百人の民間人が集まっている(写真下)。
ニューヨークタイムズによると、ロシア軍はこの場所に向け、迫撃砲を発射。女性と10代の息子、8歳くらいの娘が即死。家族の友人の男性も負傷し、その後亡くなったと報じている。
当時、現地にはウクライナ軍の兵士が十数人いたが、民間人の荷物や子どもを運ぶのを手伝っており、戦闘は起きていなかったという。
写真を撮影したフォトジャーナリストのリンジー・アダリオ氏は「ロシア軍が、命をかけて逃げる民間人を意図的に標的にしているのを目撃しました」とツイート。
Instagram上では「これが、戦争の残酷な犠牲者です」「これまで20年間の戦争報道で多くの恐怖を目の当たりにしましたが、子どもと女性を意図的に標的にする行為は、悪の権化です」と強い言葉で非難している。
ニューヨークタイムズ紙の写真に対しては、「この出来事から目を逸らしてはいけない」「世界中の人たちが見なければいけない写真」などのコメントが寄せられている。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、2月24日から3月6日までに406人の民間人の死者が確認された。このうち子どもは27人(うち15人の性別が不明)。実際の死者数はこれよりもはるかに多いとの見解を示している。
民間人への攻撃は、国際人道法に違反する戦争犯罪だ。ロシアのプーチン政権側は否定しているが、CNNによると、アメリカのブリンケン国務長官は、ロシア軍がウクライナの民間人を意図的に攻撃している「信頼できる報告」を確認していると明かしている。