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自衛隊が歴史的な任務につく南スーダンは「非常に危険」 国会の議論と現実の差は

日本を背負い、任務につく自衛隊。国会ではどのような議論がなされていたのか。

安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」などの任務が新たに付与された陸上自衛隊の先発隊130人のうち第一便が11月21日、南スーダンの首都ジュバに到着した。

2011年に独立した南スーダン。2013年からは事実上の内戦状態に突入し、AFP通信によると、これまでに数万人が死亡、250万人以上が避難民となっている。

2015年に停戦合意がなされたが混乱は収まる気配がなく、7月には大規模な「戦闘」があったばかりだ。カギカッコ付きで「戦闘」と書いた理由は、後ほど説明する。

国連の潘基文事務総長は11月16日、「大規模な残虐行為が発生する非常に現実的な危険がある」とまで指摘した

そんな「戦場」で、自衛隊はいったい何をするのか。

稲田防衛相「リスクは高まらない」

そもそも自衛隊は、2011年から南スーダンのPKOに参加してきた。現地では、道路などの整備に当たっている。

今回派遣された部隊が注目を集めているのは、昨年、国内で議論を呼んだ「安全保障関連法」に伴い、「駆けつけ警護」などの新たな任務が付与されるようになったからだ。

駆けつけ警護とは、武装集団に襲われている国連職員やNGO職員、他国軍部隊のいる場所に要請を受けて向かい、武器を使ってその人たちを助ける任務のこと。

自衛隊の武器使用の基準が緩和され、隊員を守るためだけではなく、威嚇射撃も可能になった。

稲田朋美防衛大臣は「人道的な見地から(自衛隊が)対応できる人を見殺しにしないのが駆けつけ警護だ」としている。国会答弁では「隊員のリスクは高まることはない」とも主張している。

PKO5原則は守られているのか

そもそも自衛隊をPKOに派遣するには、「参加5原則」を守る必要がある。1992年に成立したPKO協力法に盛り込まれたルールで、日本はこれに則って参加の可否を決めてきた。

  1. 停戦合意が存在すること
  2. 受入国などの同意が存在すること
  3. 中立性が保たれていること
  4. 要件が満たされなくなった場合には派遣を中断又は終了すること
  5. 武器の使用は必要最小限度とすること

日本政府は南スーダンにおいて、この5原則が守られていると主張している。野党議員ら反対派からは「南スーダンは内戦状態にある」と、原則が満たされていないと指摘する。

実際には、現地はどのような状況なのか。

国連は「大規模な残虐行為」を警告

AFP通信によると、潘基文事務総長は11月16日に出された報告書で、「南スーダンで大規模な残虐行為が発生する非常に現実的な危険があり、特にここ数週間はヘイトスピーチや、民族対立の扇動が急速に広がっている」と警告している。

そして、こう強調している。

「国連の平和維持活動(PKO)には大規模な残虐行為を阻止するだけの人員も能力も備わっていないことは明確に理解されなければならない」

実際、ジュバでは今年7月、数日間で300人以上の死者を出す大規模な「戦闘」が発生。自衛隊の宿営地の隣にあるビルでも銃撃戦が起きていた。PKOに参加していた中国軍2人も死亡している。

日本政府の判断は

この混乱のさなかには、外国人のNGO職員たちが滞在していた施設が南スーダン政府兵の襲撃を受けた。女性職員がレイプされ、地元の記者が殺害されている

これらの事態を受け、国連安保理は8月、アフリカ各国軍による「地域防護部隊」4千人を追加派遣することを決めた。施設や国連職員、民間人の防護を担うためで、武力行使が認められている。

では、7月の「戦闘」を日本政府はどう判断しているのか。

安倍晋三首相は10月11日の参院予算委員会で「PKO参加5原則との関係も含めて、戦闘行為には当たらない。衝突、言わば勢力と勢力がぶつかったという表現を使っている」と答弁した。

これが「戦闘」とカギカッコをつけた理由だ。日本政府は300人以上が死亡したのは「衝突」によるもので、「戦闘」ではないと主張している。

安倍首相はその翌日の衆院予算委では、こうも述べている。

「南スーダンは、例えば我々が今いるこの永田町と比べればはるかに危険な場所」

「すべては私の責任」

稲田防衛相は10月、ジュバを訪問。「現地は落ち着いている」と語った。

今回の派遣命令を出したのち、11月18日の記者会見では、「南スーダン全体の治安情勢は極めて厳しいものがある」とも語り、こう加えた。

「ジュバでは7月に大規模な武力衝突が発生しております。現在は比較的落ち着いておりますけれども、楽観できる状況ではないので、しっかり見ていく必要があると思っております」

「新たな任務の付与についての命令も発出したのは私自身ですから、その全てのことについての責任は私にある」

任務は12月12日から

派遣された部隊が持つ小銃や拳銃、機関銃などの装備は変わらない。ただ、軍医に当たる医官を3人から4人に増やすほか、「駆けつけ警護」の出動1回につき6千〜7千円の手当がつくようになる。

また、隊員が傷ついたり、死亡したときに支払われる「賞恤金」を6000万円から9000万円(イラク派遣時と同額)に一時的に増額するかどうかについても、検討中という。

11月20日、先発隊が青森空港から飛び立った。見送り客のなかには、涙を流す人の姿もあった。

残りの人員の現地入りが終わる12月12日から、新な任務の実施が可能になる予定。活動期間は約半年間だ。


訂正

冒頭部分の一部表現を修正しました。


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