南スーダンPKO派遣の自衛隊員が自殺 防衛省「職務との関連性はない」

    南スーダンPKOに派遣された隊員の自殺が明らかになったのは初めてだ。

    国連平和維持活動(PKO)のために南スーダンに派遣されていた陸上自衛隊の男性陸曹が2017年5月6日、自殺をしていたことがわかった。南スーダンPKOに派遣された隊員の自殺が明らかになったのは初めて。

    BuzzFeed Newsの取材に応じた陸上幕僚監部広報室の担当者は「原因と動機は職務とは関連がないもの」としている。

    陸幕広報室によると、男性陸曹は岩手駐屯地に所属。2016年11月に派遣施設隊(第11次要員)として南スーダンに派遣され、17年4月に帰国していた。

    第11次要員は、安全保障関連法の施行に伴う「駆けつけ警護」「共同防護」などの新たな任務を付与されたとともに、最後の派遣部隊ともなったことで注目を浴びていた。

    男性陸曹は静岡県富士宮市で自殺した。年齢や所属課、家族がいるのかどうかについては、 「個人情報のため明らかにしていない」という。

    自殺の動機については「個人的な問題」といい、PKO派遣との関連性は否定した。一方、遺書の有無などについては「承知していない」としている。

    過去の派遣でも自殺者が

    イラクやインド洋に派遣された経験のある56人の自衛隊員が、在職中に自殺していたというデータもある。このうち、精神疾患を原因としたものは14人。

    防衛省が全自衛隊員に向け実施したアンケートの結果を見ると、1人の自殺者の陰に、PTSDやうつなどに悩まされている多くの隊員がいることがわかる。

    下の表は、海外や国内災害派遣を経験した隊員のうち、PTSDのリスクや、うつ病や不安障害のリスクが高い隊員の割合を示したものだ。

    PTSD傾向にある隊員が毎年1千人以上で推移していることがわかる。

    ただ、全隊員でうつ病や不安障害のリスクが高い隊員の割合を見ると、13年度は10%、14年度は7.8%、15年度は7.1%になるため、防衛省は、決して派遣経験者だけが高リスクになるとは言えない、としている。

    民間でメンタルケアを担う動きも

    自衛隊員のメンタルケアを重要視する動きは、防衛省内部のみならず、民間レベルでも進んでいる。

    2017年2月に発足した「海外派遣自衛官と家族の健康を考える会」には、医療者、研究者、カウンセラーなど38名が賛同。情報提供や相談対応を通じて、防衛省が実施しているメンタル・ケアを補完する目的がある。

    まったくの民間組織であることから、隊員やその家族が周りを気にせず、気軽に相談できるようにすることを目指しているという。

    隊員やその家族たちからのメール相談を受け付けており、ケースに合わせ、提携している医療機関や医師を紹介する仕組みを整えている。

    共同代表で精神科医の蟻塚亮二さんは、「不眠だったり、1〜2時間おきに目が覚めたりする、なぜか戦闘を思い出す、イライラするなどの症状は、PTSDと思われる。そうした症状が出た場合は、気軽に相談をしてもらいたい」(団体発足時のシンポジウム)と呼びかけている。


    BuzzFeed Newsでは、PTSDやメンタルケアの現状について、自衛隊員、海外派遣でPTSD傾向、自殺も 南スーダンでは「深い傷」 メンタルケアの重要性との記事を掲載しています。