天皇陛下が京都で暮らす? 退位後のお住まいめぐり話題の「双京構想」とは

    奈良まで名乗りを上げたけれど…

    天皇陛下が退位後、京都に滞在する。そんな構想の実現に向け、京都市や府などが動き出した。

    発端は6月12日。天皇陛下の退位に向けた特例法を受け、門川大作市長が会見で発言した。

    京都新聞によると、門川市長は退位後に上皇となる天皇陛下に「できるだけ長く京都に滞在して」ほしいと述べたという。その内容はこうだ。

    「上皇となる天皇陛下にできるだけ長く京都に滞在していただくことは、以前から念願している。具体的にどういう可能性があるのかを専門家の意見も聞きながら、客観的に調査し、できるだけ早く国に要望したい」

    そもそも京都では、東京に暮らす一部の皇族の、将来的な京都在住を目指す「双京構想」が提言されている。

    いったい、どういう内容なのだろうか。市のホームページでは、構想についてこう説明している。

    「日本の大切な皇室の弥栄のために、皇室の方に京都にもお住まいいただき、政治・経済の中心である『東京』と文化の中心である『京都』が我が国の京都としての機能を双方で果たしていくこと」

    さらに「目指すべき姿」として、皇室行事を京都御所で開催することなどを提言。最終的に「お住まいいただくこと」を目指す、としている。

    皇室の方々が出席される国際会議や宮中行事の京都での実施などにより,皇室の方々が京都へお越しいただく機会を増やし,1週間,そして1箇月間という長期の御滞在へとつなげ,将来的にはお住まいいただくことを目指します。

    なぜ、京都なのだろうか。その問いに対しては、3つのポイントを挙げている。

    * 東京以外に唯一御所があること

    * 明治初頭までの1千年間にわたり天皇陛下が暮らしていたこと

    * 日本の歴史・文化の中心地であること

    宮内庁京都事務所によると、天皇陛下は京都を訪れる際はほとんど、大宮御所に宿泊するという。

    門川市長(写真)は「早く国に要望するのが大事」とも述べている。6月19日に開催される懇話会で具体的な議論を始めるという。

    京都では署名活動も始まっている。地域政党の「京都党」が中心になったもので、1万745筆の署名を6月16日、国に提出されたという。

    署名は、天皇陛下が退位後、京都で暮らすよう願い、「双京構想の実現」を求めるもの。

    「今上天皇ご退位後、我々はお帰りをお待ちしております」と銘打たれている。ホームページに掲げられているのは、村山祥栄代表のこんな文章だ。

    京都は天皇家とともに繁栄してきました。京都は日本のふるさとであり、皇室のふるさとです。京都の町衆は、明治二年に行われた陛下の行幸からのお帰りを、首を長くして待ち望んでいると言われています。

    百四十有余年の時を経て、京都は再び皇室との縁(えにし)が結ばれる。我々京都市民はそれを歓迎しようではありませんか。その思いを形にし、その願いを国へ届けましょう。

    こうした動きに呼応し、名乗りを挙げた自治体もある。京都より以前に都だった、奈良だ。

    荒井正吾知事(写真)は6月14日、天皇、皇后両陛下が退位後に過ごされる離宮を県内に設ける検討を始め、国に提案すると記者会見で発表した。

    毎日新聞によると、「神武天皇以来ゆかりある父祖の地で、心身を休めていただけるよう貢献できれば」と述べ、さらにこう京都のことを牽制したという。

    「地域振興といった京都とは全く違う発想。静かに奈良に来ていただければ」

    上皇になった天皇陛下が東京以外で暮らすことを、識者はどうみるのか。皇室研究が専門の原武史・明治学院大名誉教授は、Twitterで「権威の二重化」の問題を指摘した。

    もし仮に京都御苑内に仙洞御所が再建され、上皇と上皇后が京都に住むようなことがあったら、権威の二重化が進み、皇室の存在感が増し、東日本は天皇が、西日本は上皇が治めているような感覚が生まれると思う。

    では、宮内庁の担当者はどう見るのか。

    BuzzFeed Newsの取材に対し、報道室の担当者はこう回答した。

    「退位後のお住まいについては、宮内庁において今後検討していくことになります。現時点ではなんら決まっておりません」