2015年に国会で成立した安全保障関連法に反対する市民運動を展開した「SEALDs」元メンバーの女性2人が、ネット上で誹謗中傷を受けたとして、投稿者の女性を相手取って起こした損害賠償請求訴訟。
東京高裁(村上正敏裁判長)は2月2日、投稿者に慰謝料など約240万円の支払いを命じた。一審判決では約100万円だった、被告側に支払いを命じる額が倍以上に増えた。
代理人弁護士は「ネットによる誹謗中傷事案に対する高等裁判所の強い意志の現れ」と評価している。
訴えを起こしたのは、「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動)の福田和香子さんら女性2人。
一審の東京地裁判決によると、団体が結成された8ヶ月後の2016年1月から「売春婦と自称している」「報酬をもらっている」「ソロス財団の操り人形」「科研費を私的流用した」などという誹謗中傷ツイートを受けるようになった。
一審判決では、こうした書き込みが原告2人の「社会的評価を低下させた」としたほか、書き込んでいた投稿者の女性が「憶測に憶測を重ね」ているとも指摘。以下のように結論づけていた。
「政治的主張、政治的言論については、批判的立場からの自由な意見交換も十分に保証されるべきと言う側面を考慮したとしても、各投稿は、そもそも公共性、公益性を欠くものが含まれ、公共性があるものも、自身の憶測と強引な関連付けによって個人を攻撃した色彩が強いもので、悪質である」
今回の控訴審判決では、活動を資産家が主導したと示唆するツイートや、デモに参加して報酬を得ていたことを示唆するツイートなど計7個について、「社会的評価を低下させるもの」として、一審判決に加え名誉毀損を認定。慰謝料などを引き上げた。
誹謗中傷が奪ったもの
代理人の神原元弁護士はBuzzFeed Newsの取材に対し、「全面的な勝訴判決。ネットによる誹謗中傷事案に対する高等裁判所の強い意志の現れと言っていいと思います」と話す。
一方で、名誉毀損のツイートが追加されただけでは「増額は説明がつかない」と指摘。こう語った。
「私たちは、控訴理由書の中でネットによる誹謗中傷事案の被害実態、中傷文言が永久に残ること、検索が容易なこと、それゆえ就職に影響が出るなど、若い世代にこそ被害が大きいことを説明しました」
「また、被害者それぞれが陳述書などでそれぞれの被害を具体的に説明しました。これらのことを裁判所が理解してくれたものと信じます」
一方の福田さんはブログを更新。「大幅な増額の理由のひとつには、インターネット上での誹謗中傷が大きな社会問題として認められてきているという時代背景があると思っている」とし、こうも綴った。
「誹謗中傷の書き込みによって奪われるのは、名誉はもちろんのこと、未来の可能性でもあるんだろうなって思っている。相手の顔すら分からないまま攻撃され続けることで、本来そこになかったはずの怯えや諦めが生まれる。それらは希望や柔らかさをどんどん吸いつくして、時には人の命まで奪う」
そのうえで、「判例を残せたという意味でも行動を起こしてよかったと思っている」「どうかこれがちょっとはマシな未来に繋がってくれたら」と結んでいる。