日本の排他的経済水域に沈没したタンカー 原油の大量流出、その後の被害は

    漂着のほか、ウミガメの死亡も。

    東シナ海で衝突・炎上事故を起こし、漂流後に日本の排他的経済水域に沈没したタンカー。そこから流出したとみられる油が、奄美大島や沖縄本島などに漂着している。

    これまでに回収された油は鹿児島県だけでも90トンにのぼり、奄美大島では、ウミガメ1匹が喉に詰まらせて死亡した。

    最初の漂着から2月28日で1ヶ月。影響は広がっているのだろうか。

    まず、経緯を振り返る

    沈没したのは、イランから韓国に向かっていたタンカー「SANCHI」だ。

    1月6日、上海から約300キロの沖合で香港の貨物船と衝突し、爆発を繰り返しながら漂流し、1月14日に日本の排他的経済水域(EEZ)内に沈没した。乗員32名は死亡したとみられる。

    タンカーには11万1000トンの原油の一種「コンデンセート」(超軽質原油)や2000トン以上の重油が積まれており、当初から環境への影響が懸念されていた。

    海上保安庁は、事故当初から沈没現場近くでの油の拡散作業や、監視に当たっている。

    海保によると、日本への油状物質の漂着が始まったのは1月28日のことだ。これまでに奄美大島や沖縄本島や屋久島など25島に広がっている。

    漂着したに油は、タンカーの重油と類似性が認められたものもあるが、全てではなく、現在も調査・分析を進めているという。

    また、大量に積まれていたコンデンセートについては、「揮発性が高いため、一般的に島に漂着する可能性は極めて低いと考えられます」としている。

    回収作業に全力も、見通しは立たず

    「到着の漂着状況と比べると、油の回収はかなり進んでいます。新たな漂着も、一見して少なくはなっている状況です」

    BuzzFeed Newsの取材にこう語るのは、なかでも多くの油が漂着した奄美市の担当者だ。

    一時は油が一面に広がったような海岸もあった奄美大島。2月18日にはボランティア1840人による回収、清掃活動が行われた。

    これまでに計48トンが回収されたという。いまのところ漁業被害はないが、今後油が漂着してくる可能性もあるため、懸念は捨てきれない状況だ。担当者は言う。

    「これから観光シーズンにも入るため、それまでに除去は終わらせたいですが、かなり細かいものもある。除去作業は1〜2週間で終わるものではなく、かなり長いスパンがかかるため、見通しは立っていません」

    鹿児島県によると、県内では2月18日までに約90トンが回収された。市民の回収作業に当たって、マニュアルを作成。ボランティアなどに周知したという。

    環境林務課の担当者はこう語る。

    「すでに回収が終わっている海岸もあるが、まだ岩場や砂浜などに残っているところもある。奄美大島を含め、引き続き、回収作業に全力で取り組んでいます」

    環境への影響は

    環境省は、環境や海洋生物への影響の調査を進めている。これまで、アオウミガメ1匹が油の影響で死亡したという。

    奄美大島の海岸で見つかったこのウミガメは、解剖の結果、喉に油が詰まっていた。自然環境計画課の担当者は「油が握りこぶしのような状態で流れており、それを間違えて食べてしまったのではないか」と推測する。

    サンゴや、そのほかの生物への影響は現段階では認められてはいない。

    「漂着は減少傾向にあるが、予断は許さない状況。当面の間、巡視をしていきたい」(担当者)として、今後も船舶や水中などでの調査を続けていく方針だ。

    現地調査を行った国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」も、「100%の除去は困難」として、中長期的なモニタリングの実施や情報の公開を求めている。

    今後、油の流出はどうなるのか。事故海域を管轄する第10管区海上保安部の担当者は、こう語る。

    「沈没現場では日を追うごとに油の流出は減少傾向にあります。ただ、漂着している油もあるため、今後漂着がどうなるかについては、一概に言える状況ではない」

    巡視船などによる継続した監視を続けると言う。海上保安庁のサイトでは、関連情報を公表している。