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高市早苗氏が「クタバレ夫婦別姓」で語っていたこと。反対し続ける理由とは?

SNS上で拡散されているのは、雑誌『諸君!』(2002年3月号)の座談会特集「ネコ撫で声の『男女平等』に騙されるナ!クタバレ『夫婦別姓』」の誌面と内容だ。

自民党総裁選(9月17日告示、29日投開票)に立候補を表明した高市早苗・前総務相(60)。

「選択的夫婦別姓」の反対論者として知られ、過去に「クタバレ『夫婦別姓』」と題した雑誌の鼎談企画に参加したことが、SNS上で改めて話題になっている。

高市氏は何を語っていたのか。そしてその考えに変化はあったのだろうか?

SNS上で拡散されているのは、雑誌『諸君!』(2002年3月号)の座談会特集「ネコ撫で声の『男女平等』に騙されるナ!クタバレ『夫婦別姓』」の誌面と内容だ。

高市氏は山谷えり子氏、西川京子氏ととも参加し、夫婦別姓について「『社会の秩序』や『家族の絆』を破壊する個人主義的政策に保守系の議員が協力するのは愚かなこと」と批判していた。

旧姓の通称利用を進めるべきとしながら、別姓制度に反対の理由として、以下のようなポイントをあげている。

  • 年賀状を出す前に確認が必要、行政関係データの変更などの混乱が起きる
  • 子どもの姓を事前に決める必要があると余計な波風が立ち、結婚をしない男女が増えるかもしれない
  • 成人前から家庭裁判所の許可で何度も姓を変えられることになると氏の安定性が損なわれ、「子の福祉」に悪影響が出る
  • 「〜家葬儀」「先祖代々の墓」、結婚式の「ご両家」の記載に影響する
  • 社会保障番号(現在のマイナンバー制度)が必要になる


野田聖子氏への言及も

当時の自民党内で「賛成」を表明していた男性議員については以下のように評した。

男の議員って、この夫婦別姓問題は、女性の問題だから「触らぬ神に祟りなし」で、単純に女性が望んでいるならそれでもいいかナっていう程度の意見しかもっていないでしょう。

男性議員もいい加減なんですよ。私も、最近はエレベーター内で、会う議員を説得しているんですが(…)女性だからと思うのか「勿論賛成だよ」っていうので、軽蔑した目で「サイテー!」って応えると、急に慌てて(…)前言を翻すんです。

賛成派である野田聖子氏の主張を受けて「男性議員の転向組が続出しているって本当ですか(笑)」という山谷えりこ氏の問いかけにも応じている。

彼女のフェロモンと福島瑞穂さんや田嶋陽子さんのラディカルとが共闘すると手ごわいんですよ(笑)

そのうえで、当時の自民党内で進んでいた夫婦別姓に関する議論などについては、「女性を被害者的に捉えて『何がなんでも男女平等』と唱えるのもナンセンス」と指摘。

男女共同参画社会のため、法改正に基づき夫婦別姓を取り入れることは「極論」であるとも主張している。

飛行機がハイジャックされると、犯人と交渉する時に「婦女子」を解放するよう真っ先に要求するでしょう。「男女共同参画」「男女平等」「子供の権利擁護」を声高に主張する人たちは、こういう時も「いや人間はみな平等なのだから、解放するのは男女同数にすべきだ。そして男女交互にすべきだ。子供も大人も同じ権利の持ち主なんだから区別するな」と極論するんでしょうかね。

戦争にしても、女性兵士をことさら実弾がビュンビュン飛んでくるような最前線に派遣しなくては「男女共同参画」にならないって、そこまで言いますか(笑)。民法を改正し、「男女共同参画」型社会実現のためにも夫婦別姓が絶対必要だと息巻くのは、そういった極論と「五十歩百歩」のような気がしますね。

一貫している「伝統的な家族観」

「伝統的な家族観」を重視する高市氏の姿勢は、以前から一貫している。

1997年の衆議院法務委員会では、当時の民主党が出した民法改正案に対し、「我が国の家族と社会に取り返しのつかない影響と混乱をもたらす」などと反対。

2010年にも与党だった民主党が提出した民法などの改正案について、戸籍制度にも影響があるとして、「不倫や離婚を助長して家族を解体していく様々な規定が盛り込まれています」などとブログで反対の意見を表明していた。

昨年から今年にかけて自民党内で進んでいた「氏制度の在り方に関するワーキングチーム」の議論でも、選択的夫婦別姓については強く反対の姿勢を打ち出した。

「家族が崩壊する」などとして、自民党有志とともに42の都道府県議会議長に反対を呼び掛ける書面を発送したことも注目を集めた。

最近では、『正論』(2021年6月号)の特集でも、「子の氏の安定性が損なわれる可能性がある」「世の中の制度に統一性がなくなり、第三者の苦労は大変なことになる」と述べており、主張に変化がないことがわかる。

また、「他国に誇れる極めて優れた(戸籍)制度だから、守り抜くべき」「(婚姻時に夫または妻の名前を選ぶ現行制度は)夫と妻の『機会平等』を保障しているから、決して『女性差別』ではない」などとも述べている。

出馬表明の会見でも…

9月8日の出馬会見でも、夫婦別姓に関する質問があがった。

高市氏はここで、自民党は免許証やマイナンバーカード、パスポートへの旧姓併記などの「通称使用の拡大」に取り組んだと強調。自らも総務相として届出などににおける改革を進めたとして、こうも述べた。

「婚姻によって氏を変更したことによって不便を感じる方が少なくなるよう、懸命の努力を続けてきたつもりでございます」

「同じ取り組みを、全部の府省庁やそれから地方公共団体、それから民間の団体もやっていただけると、ずいぶん変わってくると思います」

一方で、野党案の選択的夫婦別姓には「残念ながら反対」であると、以下のように理由を語った。

「氏を決めるときに、夫婦で取り合って、どっちにするか決まらないときに、家庭裁判所の審判で決めるということになっているので、せっかく子どもさんが生まれて幸せいっぱいのときに家庭裁判所で争うというのも、ちょっとこれは残念な気がします」

そのうえで、「総選挙が終わったらじっくり議論をしようという自民党の決定、ここに従いたいと思っております」と結んだ。

目標は「和製サッチャー」?

高市氏は男女間の格差是正に関して、「結果の平等」よりも「機会の平等」を重視する姿勢をとっている。

たとえば、別の『諸君!』(2006年2月号)の座談会「目標は和製サッチャーよ」では、山谷氏と稲田朋美氏と議論。

企業や議会の女性の比率を一定程度高めるための「クォーター制度」に、「経済活動もダメになる」「国会議員でも(…)結果的にそうなるならともかく、法律改正で女性定数を設けるようなことはやってはいけない」と反対した。

「女性」という枠組みが強調されることにも同じ理由から反発。「女性大臣」や「女性総理」について、このように言及している。

日本では、まだ「女性だから総理になれた」と言われかねない。でも近い将来「能力がある人がたまたま女性だった」というふうになると思いますよ。なんとなく女性総理の方が受けがいいだろうって人為的につくられたら、それは最悪の結果になりますね。
「女性枠」と言われると、女性にとってもバカにされている感じがしますよね。入閣するにしても「あなたは専門家だから」と言われたい。本当に力をつけていくためにも、結果平等的な処遇はされたくないですね。

立候補を表明した直後の今年8月の『正論』でもやはり、元イギリス首相・サッチャーの「私はまず政治家です。そして最後まで政治家です。たまたま女であったに過ぎない」という言葉に「大いに共感します」と述べている。