「お前は何を思っていたのか?」相模原事件で死刑判決、裁判員の葛藤

    戦後最大級の殺人事件となった相模原事件の裁判。植松被告には死刑が言い渡されたが、裁判員たちはどのような気持ちで裁判にのぞんだのか。

    知的障害者入所施設「津久井やまゆり園」で元職員の植松聖被告が入所者19人を刺殺し、26人に重軽傷を負わせた相模原事件。

    被告には死刑が言い渡された、この戦後最大級の殺人事件の裁判。裁判員たちはどのような気持ちで裁判にのぞんだのか。

    判決後に会見を開いたのは、60代と40代の男性2人。裁判の感想を問われ、60代の男性はこう語った。

    「被害者家族の意見陳述などを自分なりに噛み砕くと、まだまだこの世の中が障害者にとって生きやすい社会になっていない。障害者のかたと健常者のかたが、共生する社会になりきっていない裁判を経験して思っています」

    会見では「匿名審理」に関する質問も出た。今回の裁判では、ほとんどの被害者が「甲」「乙」という名前で審理された。差別や偏見を恐れ、匿名審理を望む人が多いからだ。

    60代の男性は「家族も積極的に匿名にしたかったわけではないはず」。40代の男性は「ひとりひとりが間違いなく一人の人間であるにもかかわらず、匿名を選ばざるを得ない状況は致し方ない一方で、寂しくも思いました」と語った。

    19歳で犠牲となった「美帆さん」の母親は、裁判に合わせて「娘は甲でも乙でもない」と下の名前を公表した。

    この点については40代の男性が「印象は変わらないが、こうした複雑な心情があるということに気づかされた」と答えた。男性は、こうも語った。

    「それぞれのご意見、お気持ちは胸に刺さるものだった。生前どんな方だったのか、どれだけ被害者から喜びをもらっていたかという親族の声を聞くにつれ、障害者であるかどうかは関係なく、自分の親族が命を奪われたことは、とても重たいことだと感じました」

    植松被告は変わらなかった

    また、植松被告への印象を問われると、60代の男性はこう答えた。

    「彼は公判の最初から最後まで、彼が犯した罪に対する反省、障害者に対する否定的な考えはまったく変わらなかったと思う。非常に残念であると思っています。彼は、身勝手な考えを持っており、他人の意見を聞き入れないという本質を感じました」

    一方の40代の男性も、同様の意見を口にした。

    「事件後は金髪姿、不適な笑みを浮かべているという記憶でしたが、法廷内で見たときはお調子者のような印象はなかった。髪色も落ち着いて反省しているのかなと思いましたが、公判を通じて彼の意見を聞いているうちに、何も考えが変わっていない、反省や謝罪の気持ちを持っているわけではないと感じました。最終的に『お前は何を思っていたの?』が聞き出せなかった」